April 2, 2018 / 4:41 AM / 7 months ago

コラム:南シナ海で勝利を収めつつある中国

Peter Apps

 3月29日、3月初め、米原子力空母「カール・ビンソン」は、1975年のベトナム戦争終結以来、米国の航空母艦として最初のベトナム訪問を果たした。写真はカール・ビンソン。ベトナムのダナンで5日撮影(2018年 ロイター/Kham)

[29日 ロイター] - 3月初め、米原子力空母「カール・ビンソン」は、1975年のベトナム戦争終結以来、米国の航空母艦として最初のベトナム訪問を果たした。これと同時に、東南アジアおよびその周辺から過去最多となる23カ国が、2年に1回開催される東インド洋での合同海軍演習に参加することが報じられた。

このことは、南シナ海を囲む諸国が、勃興する中国に対抗する強力な同盟国の受け入れにいかに熱心かを強く思い起こさせる。

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だが、中国政府の地域的な影響力が引き続き強まるなかで、弱小国がこれに抵抗するのは、こうした同盟国の支援があっても難しくなるかもしれない。「カール・ビンソン」の訪問からわずか3週間後、ベトナム政府は中国の圧力に屈し、領有権を巡り対立する南シナ海における大規模な油井掘削プロジェクトを中止した。

これは、東南アジア地域における力関係が急速に変化しているという新たな兆候だ。過去10年間、米国とアジア地域の同盟諸国は、中国を押し戻すことを露骨に狙いつつ、東南アジア地域における軍事活動を大幅に強化してきた。だが中国政府の実力と優位性は、外交・経済・軍事的な影響力と合わせて、劇的に上昇し続けている。

先週にかけて、中国政府が実施した大規模な軍事演習では、台湾海峡を抜けて航空母艦を派遣し、日本の最南部に位置する諸島の間の空域にジェット戦闘機を飛ばすといった内容も含まれていたという。これらの演習は、最近の米国による軍事行動への対応であると同時に、圧力を維持するという中国側の大胆な意思表示でもある。

西側の軍事戦略担当者は、いずれ中国は、東南アジア地域における米国およびその同盟国の活動を阻止できるようになるのではないかと憂慮している。すでに衛星写真からは、新規埋め立てによって生まれた国際法の上では存在すべきでない人工島一帯に、中国が高度な兵器を配備している様子がうかがわれる。

ひとたび戦争が起きれば、こうした兵器や中国が新たに獲得しつつあるその他の兵器により、米国海軍およびその他中国にとっての仮想敵国が、この領域で作戦行動を行うことはほとんど不可能になってしまう可能性がある。

問題の根底にある中国による領有権主張は、2016年、常設仲裁裁判所によりあっさりと否定された。だがそれでも、この地域における地位をより確実なものにしようという中国政府の行動を止めるには至らなかった。

中国は南シナ海における支配権を主張することにますます自信を強めており、近隣諸国は明らかに警戒を強めている。特にフィリピン、ベトナム、マレーシア、インドネシア、ブルネイは、いずれも中国が領有権を主張する水域に関して領有権を主張している。

だが中国の姿勢は、同時に、米国に対する本格的かつ非常に意図的な挑戦にもなっている。米国は上記の諸国すべての同盟国であり、この問題では実質的に米国自身の信頼性が問われているからだ。

ここ数年、この近辺の水域を米海軍の艦艇が航行する例が頻繁に見られる。中国が一方的に宣言した当該空域・水域の「識別圏」(米国とその同盟国は承認していない)の飛行には許可を求める中国側の要請を露骨に拒否する形である。

こうした「航行の自由」作戦、海軍用語では「FONOP」と称する航海が行われた最新の例は23日、駆逐艦「マスティン」が、中国・フィリピン両国が領有権を主張しているスプラトリー(南沙)諸島内のミスチーフ礁から12カイリ以内を通過したとされる。

ミスチーフ礁近海でのFONOPは、この地域において米国および同盟国が広範囲に展開し、ますます積極性を強めている海軍行動パターンに合致している。米国は3月初め、垂直離着陸機能を持つ最先端の統合打撃闘機F-35B(同種のなかでは圧倒的に高度な機種)を、この地域の強襲揚陸艦に初めて配備すると発表した。

この種の軍事的な挑発合戦はエスカレートしつつあるように見える。中国は現在、南シナ海での軍事演習を、これまでより実質的な増加となる月1回にすることを計画していると明らかにしている。

これに対して、米国とその同盟国の行動も強化される可能性が高い。英国海軍の艦艇も独自のFONOPを近日中に行う予定であり、米国はオーストラリアに対してもこの作戦に参加するよう迫っている(参加の是非を巡っては、オーストラリア国内で今後もかなりの議論があるだろう)。

だがこうした動きも、中国の人工島構築戦略によって同地域に生じた巨大な変化には対処できていない。過去5年間、領有権を巡って対立する環礁・岩礁上に中国が構築する軍用・産業用の拠点はますます本格的になっており、ほんの少し海面上に顔を出している頼りなげな岩礁を巨大なコンクリート構造物に変貌させている例もある。

かつては支柱に支えられた小さな漁業基地にすぎなかったミスチーフ礁は、いまや完全武装の中国軍基地だ。中国人設計者が「魔法のような人工島建設機械」と誇る巨大な新型浚渫(しゅんせつ)船の力を借りて、中国による人工島建設の取り組みは続いている。フィリピン当局者によれば、フィリピンの主要な人口密集地や軍事基地に対しても攻撃可能な距離にあるスカボロー礁においても、中国政府が同様の動きに出るのは時間の問題という。

もしそのような事態になった場合、フィリピンは米国とともに、どう対応するのが最善か、難しい決断を迫られることになろう。争いの対象になっているのはエネルギー資源だけではない。もちろん、南シナ海には石油110億バレル、天然ガス200兆立方フィートが埋蔵されていると推定されており、紛争の要因になっているのは確かである。

だが、さらに視野を広げれば、中国はこの対立を、自らの意志をさらに広い地域に押しつけることが可能かどうかを占うテストケースだと考えている。そしてこれまでのところ、中国は勝利を収めつつある(少なくとも、この紛争水域で外国のエネルギー企業が試掘を行うことは考えられない。中国の圧力を受けてベトナムが予定されていた探査を中止したことで、スペインのレプソルは最大2億ドルの損失を被ったといわれている)。

米国は依然として世界随一の軍事超大国であり、世界のどこか別の場所で戦えば、中国に勝てることは間違いない。しかし中国政府は、自分の庭ともいえる南シナ海において主導権を握るのは自国であることを明確にしつつある。今のところ、そうした前提に本気で挑戦しようという意欲を持つ者は、米国政府にも、あるいは他のどの国の政府にもほとんど見当たらない。

 3月29日、3月初め、米原子力空母「カール・ビンソン」は、1975年のベトナム戦争終結以来、米国の航空母艦として最初のベトナム訪問を果たした。写真は、中国の南シナ海での活動に抗議するフィリピン人。マニラで2月撮影(2018年 ロイター/Erik De Castro)

*筆者はロイターのコラムニスト。元ロイターの防衛担当記者で、現在はシンクタンク「Project for Study of the 21st Century(PS21)」を立ち上げ、理事を務める。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)

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