[23日 ロイター] - 米ケーブルテレビ最大手コムキャストCMCSA.Oは23日、メディア大手20世紀フォックスFOXA.Oの大半の事業を全額現金で買収するために準備を進めていると明らかにした。娯楽大手ウォルト・ディズニーが既に合意した買収額に上乗せした価格を提示する方針だという。
コムキャストは発表文で「最終決定はまだだが、現時点で、全額現金の提案に向けた資金調達と当局への届け出の準備がかなり進んでいる」と表明した。
発表を受けてフォックスの株価は上昇、終値は1.6%高となった。コムキャストは1.9%安、ディズニーは1.1%安で終了した。
ディズニーは12月、フォックスの映画・テレビ事業などを株式交換を通じ、524億ドルで買収すると発表。フォックスの抱える人気コンテンツを通じてネットフリックスNFLX.Oやアマゾン・ドット・コムAMZN.Oなど動画配信大手に攻勢をかける狙いがある。
コムキャストは対抗案に向けた計画を公表することで、フォックスの株主にディズニーの提案の承認を思いとどまるよう促すことを狙ったとみられる。フォックスは買収承認の是非を問う株主投票を今夏に予定しているが、詳しい日程はまだ決まっていない。
ただ、フォックスの筆頭株主であるメディア王ルパート・マードック氏はコムキャストの案に難色を示す可能性もある。税務の専門家がロイターに語ったところによると、コムキャストの全額現金の提案を受け入れた場合、フォックスの17%を保有するマードック一家は多額のキャピタルゲイン税を課されることになるという。
事情に詳しい関係筋は今月に入って、コムキャストがフォックスに対し最大600億ドルの全額現金による買収案を提示するため、つなぎ融資について銀行と交渉していると明かしていた。コムキャストがフォックスの事業買収計画を正式に認めたのは23日が初めて。
フォックスとディズニーはコメントを控えた。
関係筋が先に語ったところによると、コムキャストは、AT&T.NによるタイムワーナーTWX.N買収阻止を求めて司法省が起こした訴訟について米裁判所が来月示す判断を見極める方針という。
ピボタル・リサーチのアナリスト、ブライアン・ワイザー氏は「すべてはAT&Tとタイムワーナーの案件の行方次第だ。これが成立すれば、フォックスに対して2社以上から買収案が提示される可能性は高い」とした。
コムキャストは既に、フォックスが完全子会社化を目指す欧州有料放送大手スカイSKYB.Lの株式61%を220億ポンド(300億ドル)で取得する案を提示している。
4月に当局に提出された資料によると、コムキャストは、ディズニーがフォックスの事業買収で合意する前の昨年11月に、フォックスの大半の事業を全額株式交換で取得することを提案。その際の提示額は1株当たり34.41ドル、総額640億ドルだった。
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