August 22, 2018 / 6:13 AM / a month ago

コラム:側近の窮地はトランプ氏を追い詰めるか

[ロイター 21日] - トランプ陣営の元選対本部長が、起訴された18の罪のうち8つについて有罪評決を受けたことと、大統領の元個人弁護士が選挙法違反を認めたことは、2016年の米大統領選へのロシア介入疑惑を巡るモラー特別検察官の捜査が、いかに複雑なものかを示している。

ひょっとしたら、明確な結論が出ない捜査なのかもしれない。

同時に、21日に起きたこれら2件の出来事は、米国政治全体の不安定化も指し示している。

11月の中間選挙が近づくにつれ、トランプ大統領は、国家安全保障や情報機関、そして法執行の主流派に対する敵対姿勢を強めている。

同時にトランプ氏は、より巧みにワシントンの政治力学を操作するようになっている。選挙に向けて支持基盤の強化を図るトランプ氏は、今回の法廷での展開を、自身に有利となるように仕向けるだろう。

トランプ陣営の元選対本部長ポール・マナフォート被告は、海外の銀行口座について報告しなかった罪や、銀行詐欺や脱税に関する8つの罪について有罪評決を受けた。ただ、その他10の罪については評決に至らず、判事が審理無効を宣言した。

バージニア州連邦地裁が同被告に有罪評決を下すのと時を同じくして、マンハッタンの連邦地裁では、大統領の元個人弁護士マイケル・コーエン氏が故意に違法な企業献金に携わったとの訴因、および過度の選挙献金を行ったとの訴因を認めていた。

──関連記事:トランプ氏が口止め料指示と元弁護士、陣営元幹部には有罪評決

いずれの案件も、トランプ陣営とロシアに意図的な癒着があったことを示す直接証拠にはならないかもしれない。だが、大統領側近が、いかに詐欺や脱税などの経済犯罪の訴追に脆いかを明確に示している。

マナフォート被告とコーエン氏は、トランプ大統領が恩赦の方法を見つけない限り、実刑を免れないだろう。だが大きな政治リスクなしに恩赦を実現するのは難しい。

とりわけコーエン氏が罪を認めたことは、トランプ大統領自身が金銭面で違反行為に問われる可能性を高めたとみられる。

ニューヨークを拠点とし、長年トランプ氏最側近の1人だった弁護士のコーエン氏は、2016年の大統領候補者の指示で、選挙に影響を及ぼすために支払いを行ったと法廷で述べた。トランプ氏を名指しすることは避けたが、同氏の弁護士であるラニー・デービス氏は裁判後、同被告はトランプ大統領に言及していたことを確認した。

マナフォート被告に対する訴追は、選挙資金違反というよりは脱税に関するものだが、来月ワシントンの連邦裁判所において別の訴因で審理を受けることになっているだけでなく、今回評決に至らなかった罪状についてもバージニアで再審が行われる可能性がある。

少なくとも、当面これらの裁判案件からニュースが出続けることは確実だろう。こうしたニュースは、大統領の弾劾支持派には歓迎されるが、トランプ支持者にはおおむね無視されるだろう。

8月21日。トランプ陣営の元選対本部長が、起訴された18の罪のうち8つについて有罪評決を受けたことと、大統領の元個人弁護士が選挙法違反を認めたことは、2016年の米大統領選へのロシア介入疑惑を巡るモラー特別検察官の捜査が、いかに複雑なものかを示している。21日、ウエストバージニア州チャールストンで演説するトランプ米大統領(2018年 ロイター/Leah Millis)

大統領自身は、法的な窮地に立たされる可能性を明確に認識している。20日のロイターとのインタビューで、トランプ氏は、モラー特別検察官の聴取に応じれば、偽証罪に問われる結果になりかねないと述べて懸念を示した。

モラー氏の捜査全般、特にマナフォート被告の訴追に対するトランプ大統領の怒りが収まることはないだろう。ソーシャルメディアを通じたトランプ氏の「口撃」は、陪審員に圧力をかけようとする試みに危険なほど近づいてきたと、一部の司法コメンテーターは指摘する。

米中央情報局(CIA)のブレナン元長官から機密情報アクセス権限を剥奪したことをきっかけに、国防や情報機関コミュニティの最有力者との前例のない軋轢(あつれき)が一気に深まったことも、同じように重要だろう。

こうしたいさかいや、パウエル議長率いる米連邦準備理事会(FRB)の利上げ路線に対する大統領の批判、さらにはトルコのエルドアン大統領との対立やメディアへの復讐劇などは、モラー氏の捜査とは別件だ、と法の専門家は主張するかもしれない。

厳密に言えば、それは正しい。だがトランプ大統領は、これらを自身に対するエスタブリッシュメントの陰謀の一部として位置づけているのだ。選挙年において、それは強力な攻守の一手となる。トランプ氏がその利用をためらわないのは明らかだ。

ここにパラドックスがある。トランプ大統領は、体制がいかに自分を貶めようとしているかを激しく非難する一方で、その内部コントロールを広げつつあるのだ。

トランプ氏の就任1年目は、ティラーソン国務長官やマクマスター大統領補佐官(国家安全保障問題担当)を含む政権内の経験豊富な高官に制されることが多かった。

いまや、こうした高官のほとんどが政権を去った。メディアへのリークによれば、ケリー大統領首席補佐官もその地位が危ういことは明白だ。その一方でトランプ大統領は、ポンペオ国務長官やボルトン大統領補佐官など、考え方の似た人材をより有効に起用するようになっている。

大統領の在任期間が長くなればなるほど、より従順な人材を重要ポストに起用できるようになる。

米軍は今月、新たな幹部人事を公表したが、これには大統領の承認が必要になる。FRBの利上げに対するトランプ発言は、同中銀を現在動かしている幹部を動揺させることはないだろうが、将来中銀入りを望む候補者の考え方や発言に影響を与えることは避けられない。

またトランプ大統領は、退任する最高裁判事の後任に保守候補を指名し、自己の利益に沿うよう最高裁のバランスを変えつつある。さらに重要なのは、トランプ氏が司法省で、モラー氏の捜査に参加している職員の活動をあからさまに妨害しようとしたことだろう。

トランプ大統領にとって、これは、生の政治的な現実主義が、法的な精密さに勝る闘争のように見えているのかもしれない。彼は、弾劾で職を追われる可能性は低いことを知っている。仮に11月の中間選挙で民主党が下院の過半数を獲得し、弾劾手続きに着手したとしても、最終的に弾劾を決定する上院を動かす可能性はずっと低い。

そしてその状況が変わらない限り、大統領は、燃え盛る米国の政治的分断に、さらにつけ込もうとするだろう。かつての盟友が、服役する羽目に陥っても。

*筆者はロイターのコラムニスト。元ロイターの防衛担当記者で、現在はシンクタンク「Project for Study of the 21st Century(PS21)」を立ち上げ、理事を務める。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)

Slideshow (2 Images)

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにロイターのコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

0 : 0
  • narrow-browser-and-phone
  • medium-browser-and-portrait-tablet
  • landscape-tablet
  • medium-wide-browser
  • wide-browser-and-larger
  • medium-browser-and-landscape-tablet
  • medium-wide-browser-and-larger
  • above-phone
  • portrait-tablet-and-above
  • above-portrait-tablet
  • landscape-tablet-and-above
  • landscape-tablet-and-medium-wide-browser
  • portrait-tablet-and-below
  • landscape-tablet-and-below