March 24, 2019 / 12:23 AM / in 7 months

コラム:独コメルツ銀、買い手は他にいないのか

[ロンドン 19日 ロイター BREAKINGVIEWS] - ドイツ政府は、ドイツ銀行(DBKGn.DE)とコメルツ銀行(CBKG.DE)の合併協議について、国家を代表するような巨大銀行が誕生することを歓迎する意向を表明した。

 3月19日、ドイツ政府は、ドイツ銀行とコメルツ銀行の合併協議について、国家を代表するような巨大銀行が誕生することを歓迎する意向を表明した。2016年、フランクフルトで撮影(2019年 ロイター/Kai Pfaffenbach)

従来のケースを踏まえれば、政府の承認を得ているこの案件は、既に話がまとまったも同然と言える。しかしこうした一種の国家資本主義的論理こそがまさに、欧州企業がより世界的な競争力をつけることを阻んでいる。

ショルツ財務相が国内の民間大手2行を一体化させたいと願うのは、バーテンダーが2人の酔っ払いにさらに酒を注ぎながら互いの身体を支えるようお願いする行為に等しい。この議論を細かく検討している規制当局者が心底から分かっている通り、問題を抱えた2つの銀行が合併したからといって、必ずしも健全な巨大銀行が出来るとは限らない。より良い選択肢は、コメルツ銀株を15%持つドイツ政府が、同行への買収提案を競わせる方向に持っていくことだろう。

コメルツ銀は十分な株主資本利益率(ROE)の達成に苦労しているとはいえ、欧州の同業者にとってさまざまな買収のメリットを提供している。これらの同業者の一部は資本基盤がより強固で、経営の効率性も高い。

具体的にはING(INGA.AS)やウニクレディト(CRDI.MI)、バンコ・サンタンデール(SAN.MC)、BNPパリバ(BNPP.PA)らが候補に上がる。もう一方のドイツ銀も、例えばUBS(UBSG.S)のようなもっと体力があるライバルの傘下に入った方が、うまくやっていけるかもしれない。UBSは既にバランスシートの大きい投資銀行事業の縮小を通じて、自らのビジネスモデルが直面する課題に取り組んでいる。

ドイツ政府は国内での統合を支持しているため、ドイツ銀とコメルツ銀が合併した方が、難しい意思決定に対して政治的庇護を受けられる可能性は確かにある。例えば統合に伴い3万人前後をレイオフするような事態に際してだ。そうだとしても、ドイツの銀行業界はもうこれ以上の国家資本主義を必要としていない。今回のような「上からの命令」によるディールは悪しき例になるし、コメルツ銀行の株主からもっと条件の良いディールを求める機会を奪いかねない。

コメルツ銀が新たな買い手候補にアピールできる点を考えてみたい。同行は1000の店舗を展開し、資産額は約5000億ユーロに上る。ドイツ産業界の屋台骨となっている中小企業とのしっかりした取引基盤も持ち、7万の法人顧客を抱えるほか、ドイツの貿易金融の3分の1を担っている。

さらには、個々の買い手候補ごとに特別なメリットもある。例えばオランダ最大手INGは主にオンライン事業を通じて既にドイツの銀行トップ10の一角を占め、預金量は1500億ユーロ近いため、コメルツ銀と統合すれば相当なコスト削減ができる。

その上、INGが本社をアムステルダムからフランクフルトに移せば、欧州連合(EU)で最も厳しい幹部報酬規制の適用を逃れられるだろう。オランダの法律では、金融機関幹部の賞与は固定給の20%までと定められている。ところがドイツを本社とすれば、理論的には経営陣に対して最大でEUの法令が認める固定給の200%の賞与を支給することが可能になる。同じ理屈は、INGのライバルであるABMアムロ(ABNd.AS)にも当てはまる。

ドイツ銀を別にすれば、コメルツ銀を手に入れることで最も得をするのはウニクレディトかもしれない。ウニクレディトは、ドイツ第5位の銀行で資産およそ3000億ユーロのヒポ・フェラインスを子会社としている。もしウニクレディトとコメルツ銀が統合によって、コメルツ銀の昨年の営業経費の15%前後に相当する10億ユーロを年間で節約できるなら、最大で70億ユーロの純現在価値を生み出せる。そうなるとウニクレディトは、コメルツ銀の株主に大幅なプレミアムを乗せた買収価格を提示する余地が生じる。

またウニクレディトが本社をドイツに移転した場合、今のところまだ定量的な把握はできないものの、別のメリットを享受してもおかしくない。資金調達コストの低下だ。イタリアの銀行は、国内企業全ての借り入れコストの基準となる同国国債が投資家から敬遠されていることで痛手を受けている。イタリアとドイツの10年国債利回りスプレッドは260ベーシスポイント(bp)前後もある。

ウニクレディトが本社を移してもすぐにドイツで借り入れ、イタリアで融資ができるわけではない。現段階で規制当局は同行が資本や流動性を国境をまたいで移動させるのを阻止しているからだ。それでもこうした規制はそのうち緩和される可能性がある。

サンタンデールもドイツで借り入れができれば得をするだろうが、スペインとドイツの10年国債利回りスプレッドは100bp前後とイタリアよりも小さい。

BNPパリバもディールを検討することがあり得る。同行の時価総額は560億ユーロとドイツ銀の3倍。また株価純資産倍率(PBR)は0.5倍にとどまるものの、コメルツ銀の2倍だ。このためPBRが0.25倍しかないドイツ銀よりも、コメルツ銀の買収妙味は大きくなる。BNPパリバが「ユーロ圏のリーディングバンクの1つ」と常々宣伝している点からすると、域内最大の経済規模を誇るドイツで強固な事業基盤を持たないというのは「看板倒れ」の感もぬぐえない。

もちろんリスクを伴わない合併など存在しない。ある場合には、企業文化の衝突が起きるかもしれないし、約束した経費節減の成果を国境をまたぐ形で生かすのは難しいだろう。何といってもドイツ銀の今の苦境自体、米投資銀行勢と張り合う努力を20年間続け、失敗したことに原因があるのだ。

それなのに政策担当者はしばしば、米国勢やアジア勢と競争できる全欧州規模の巨大企業の創設を口にしている。域内の弱い企業に有利な再編に固執する限り、そんな企業は決して出現しない。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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