March 15, 2019 / 5:47 AM / 5 days ago

アングル:苦境のドイツ銀、政府が合併協議を迫る理由

[フランクフルト 13日 ロイター] - ドイツ政府は金融大手ドイツ銀行(DBKGn.DE)に対し、国の支援を受けるコメルツ銀行(CBKG.DE) との合併協議に入るよう圧力をかけている。国内最大のドイツ銀の健全性に懸念が生じているためだと、状況に詳しい当局者は説明する。

3月13日、ドイツ政府は金融大手ドイツ銀行に対し、国の支援を受けるコメルツ銀行との合併協議に入るよう圧力をかけている。フランクフルトのドイツ銀行本店付近で1月撮影(2019年 ロイター/Kai Pfaffenbach)

独政府が今回、異例の動きに出た背景を整理した。

●政府がドイツ銀行に懸念を抱く理由

欧州随一の経済大国である同国で最大の規模を誇るドイツ銀は、金融危機を無傷で乗り切ったが、その後、足元が揺らいでいた。

2016年、国際通貨基金(IMF)はドイツ銀について、他行との関係の緊密さゆえに、世界の主要行の中でも、金融システムにとって最大の潜在的リスクになっていると評した。

独当局者は、たとえば景気が後退局面入りしたり、巨額の罰金を科されたりすることがあれば、同行の危なっかしい経営再建が迷走するのではないかと懸念している。

独政府は、自動車や工作機械で知られる輸出主導型のドイツ経済を支えるために、信頼性の高い国内主力銀行の存在を望んでいる。

ドイツ銀を筆頭とする欧州各国の銀行は金融危機からの回復に手間取り、より強力な米国のライバルに押され気味だ。

●なぜコメルツ銀行なのか

ドイツ国内の大手銀行といえば、相次ぐ合併によりドイツ銀以外ではコメルツ銀しか残っていない。ドイツ政府は金融危機の際に同行救済のために株式の15%を取得しており、経営に関して大きな発言権を有している。

コメルツ銀はドイツ銀と同様に経営再建が難航しており、独当局者によれば、外国からの買収攻勢にさらされやすいという。国際的なライバル行がコメルツ銀を買収すれば、ドイツ銀にとっては国内での競争も激化することになる。

また独政府は、ドイツ経済の屋台骨である中規模企業への融資というコメルツ銀の得意分野を自国資本のもとに維持しておきたいと考えている。

●合併後の姿は

合併後の銀行は、融資や投資などの資産が総額約1兆8000億ユーロ(約226兆円)、株式時価総額は約250億ユーロとなる。独国内のリテール銀行市場の約5分の1の規模だ。

ドイツ、コメルツ両行を合わせると国内に2500支店を抱え、世界全体で14万人を雇用することになる。両行の労働組合によれば、合併によって少なくとも1万人の人員が削減される可能性があるという。

●誰が合併に賛成し、誰が反対しているのか

合併推進派としては、独政府の他に、双方の銀行の株主である米投資会社サーベラスなどが挙げられる。反対しているのは、それ以外のドイツ銀株主の一部と双方の労働組合だ。

ドイツ銀のゼービング最高経営責任者(CEO)としては、合併に踏み出す前にもっと時間をかけて自行を安定させたいと望んでいると、関係者複数が話す。

●合併協議の現状は

ドイツ銀の経営委員会は、2月にゼービングCEOに対してコメルツ銀との予備協議入りにゴーサインを出したと、事情に詳しい関係者は明かす。この人物によれば、少数の経営幹部のあいだではすでに接触が持たれているが、合意に至らず協議が終る可能性はあるという。

合併に向けた協議の存在が明らかとなり、独政府が合併を後押ししている中で、両行は統合に必要な手順を見極め、その成否を判断するプレッシャーにさらされている。数週間以内に判断が下されるとみられている。

●合併のリスクは

最大のリスクの1つは、合併に伴って両行による投資の一部についてバリュエーションの調整が起きた場合、それによって生じる財務上の穴をどう埋めるかという問題だ。ある当局者はロイターに対し、その規模は「数十億ユーロ」に上ると話した。

たとえば、コメルツ銀はイタリア国債などの債券を約308億ユーロ保有しているが、現在の評価額は277億ユーロで、31億ユーロの評価損となっている。合併によってこの損失が確定する可能性がある。ドイツ銀は保有する債券を時価で計上している。

合併が実現すれば、独政府が国内最大の銀行の株主ということになるが、幹部らは政府の影響力を低減したいと考えるだろう。

また両行がさまざまな技術システムの統合などの再編作業に忙殺され、ライバルに後れをとる可能性もある。

●合併以外の選択肢はあるか

独当局者はドイツ銀とスイスの金融大手UBS(UBSG.S)の合併についての予備協議を行ったが、事情に詳しい人々によれば、UBS側はほとんど関心を示さなかったという。

独当局者らは、ドイツ銀が現在進めているコスト削減とハイリスク事業の縮小という方法では、経営状況を反転できる見込みはほとんどないと考えている。

政府からの圧力が続き、ドイツ銀が単独で経営を続けることは難しくなっている。当局者の考えでは、国家資本が入った金融機関との合併が安全な逃げ道だという。

だが、合併に向けた協議が頓挫すれば、ドイツ銀は、特に米国における投資銀行業務をもっと縮小するよう求める一部投資家からの圧力に対応できるだろう。

●ドイツ銀行に対する報道はなぜ批判的なものが多いのか

ドイツ銀は、以前から一般のドイツ国民からの評判が芳しくなかった。行き過ぎた資本主義の象徴と見る人が多かったためだ。

同行のイメージは、多くの訴訟や数十億ドルもの罰金によって傷ついている。

たとえば、金融市場での価格操作を狙った「陰謀疑惑」や、ロシアから海外への資金移転を可能にするモスクワとロンドン間の架空取引といった疑惑がある。

最新の財務諸表によれば、ドイツ銀は訴訟費用として約12億ユーロを計上している。これまでの年度に比べれば少ないが、それでも2018年の利益の3倍以上だ。

●ドイツ銀の取り組みで成果があったものは何か

ドイツ銀は金融危機以来多くの訴訟を解決してきており、財務状況も改善している。昨年は2014年以来となる利益を計上し、ゼービングCEOは「(同行グループは)正しい軌道に戻った」と宣言した。だが独当局者は納得しておらず、引き続きコメルツ銀との協議を後押ししている。ゼービングCEOも今やこのプレッシャーに屈した格好だ。

(翻訳:エァクレーレン)

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