[東京 20日 ロイター] - 7月ロイター企業調査では、米国と中国や欧州などとの貿易摩擦が中長期的に事業に打撃を与えるとの見通しが企業の間で広がっていることが明らかになった。
製造・非製造業を問わず4割超の企業が売り上げや受注が減少する可能性があるとみている。今年度の設備投資計画についても、4社に1社が様子見となる可能性があると回答。対外投資も、製造業では3割前後が様子見あるいは減少方向との見通しを示している。
この調査は7月2日から13日にかけて実施。資本金10億円以上の中堅・大企業483社に調査票を送付。回答社数は250社程度。
<中長期的に影響、中国では卸売業・北米では自動車に打撃>
調査によると、売り上げ・受注について「減少する」との見通しは短期的には19%だが、中長期には42%に上った。製造業で44%、非製造業でも40%と、あらゆる業種に先行きへの懸念が広がっている。
「輸出減少により稼働率の低下が懸念される」(化学)などの直接的な影響にとどまらず、「米中で自国内生産を求める動きが強まれば、生産拠点の見直しも検討せざるを得ない」(ゴム)、「世界経済に対する楽観ムードが消え、製造各社が設備投資に消極的になると業績に影響が出てくる」(電機)など、事業戦略そのものへの影響も視野に入っている。
国内向け事業においても「企業業績が低迷し、景況感が悪化すれば、法人利用の減少が懸念される」(サービス業)、「各国の景気減退により訪日旅行客の消費意欲が低下する」(運輸)などと、インバウンド需要への影響も懸念されている。
地域的には中国と北米での売り上げ減少を見通す企業が、それぞれ全体の4分の1程度に上った。
中国での売り上げ減少見通しが多かったのが「卸売」で50%。「繊維・紙パルプ」が45%、「化学」が43%、「電機」も38%に上った。北米では「輸送用機器」が群を抜いて多く、60%が売り上げの減少を見通している。
「メキシコ自動車産業の減速」(電機)、「アジアでの半導体設備投資等の減少が考えられる」(電機)、「北米向け輸出の減少を懸念」(輸送用機器)といった声が寄せられており、米国の制裁対象・品目に関連する地域での販売減が懸念されている。
一方、「中国による米国製品購入の減少により、販売は増加すると期待している」(輸送用機器)などと、逆に需要が増えると見込むコメントも少ないながらもあった。
<4社に1社が設備投資は様子見、海外投資の見直しも>
今年度の事業計画の実施を「様子見」する可能性があるとして、慎重になっている企業が出てきていることも明らかになった。
設備投資計画への影響の可能性について「様子見」との回答は24%に上る。4社に1社が計画を延期ないし凍結する可能性がある。特にその割合が高かったのが「繊維・紙パルプ」、「鉄鋼・非鉄」で5割近くに上り、「電機」と「情報通信」も4割弱となった。
「設備投資には特に慎重であることが重要」(化学)、「需要減少に対する準備が必要」(鉄鋼)といった声がある。
対外投資計画については18%が「様子見」の可能性があると回答。製造業では26%に上り、「減少方向」と合わせると29%が消極姿勢となっている。特に「輸送用機器」や「鉄鋼・非鉄」などで3割超を占めた。
企業からは「対外投資は慎重にならざるを得ない」(輸送用機器)、「中南米への設備投資を増強する可能性」(金属製品・一般機械)などのコメントが寄せられ、事業戦略に大きな影響が出る企業も少なくないとみられる。一方、「新規に拠点を設立したい」(運輸)といった声もあり、摩擦回避への新たな投資計画も出てきそうだ。
収益計画については、減益修正の可能性が全体では11%、「鉄鋼・非鉄」と「輸送用機器」では4割近くにのぼった。
「状況を見ながら海外子会社を含めた資金計画の見直しを柔軟に行う」(紙・パルプ)など、計画見直しを迫られる企業がありそうだ。また非製造業でも、「今後は厳しい計画を策定する方向になる」(サービス)、「景気悪化など間接的な影響を懸念している」(建設・不動産)など、減収方向での修正を見通す企業も出てきている。
中川泉 編集:石田仁志
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