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株式相場急落で個人が始動、投資層のすそ野拡大も

水野 文也記者、江本 恵美記者

 10月17日、株式相場の急落を買いの好機ととらえる個人投資家が増えている。写真は株価ボードを見る男性。6月都内で撮影(2008年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

 [東京 17日 ロイター] 株式相場の急落を買いの好機ととらえる個人投資家が増えている。直近の1週間で対面、オンライン経由ともに証券会社の個人投資家による口座開設が急増し、日経平均が2万円に迫った2007年春以来のにぎわいをみせている。

 米金融危機を発端にした世界的な景気減速によって株価の急落の波が各国に押し寄せているが、東京市場では投資家のパイを広げるきっかけになっているとの見方が浮上している。

 「今週に入って、しばらく口座を使っていなかった投資家から口座の再稼動の問い合わせ電話が鳴り止まない」──。オンライン証券3位の楽天証券では、カスタマー・サービス・センターに電話が続々と入った。同社の経営企画部によると、口座の入金や預け入れの金額がゼロのまま、最後のログインから1年間株式の取引がない場合は口座にロックがかかるが、カスタマー・サービス・センターに電話をしてきた投資家の3割はロック解除を求め、久々に取引をしようと動いた。中でも「連休明けの14、15日に電話はひっきりなしの状態」だったという。

 10月10日に日経平均株価はザラ場で一時1000円超の大幅安となり、株価は2003年以来となる危機的な水準まで落ち込み、その後も安値波乱の商状が続いている。しかし、金融不安、景気後退への不安が頂点に達する中で、個人投資家は急落が逆にチャンスとばかり、株式投資に前向きな姿勢を見せ始めていた。

 眠っていた投資家が目覚めたばかりではない。マネックスグループ8698.Tの松本大社長は、マネックス証券の「口座開設の申し込みがものすごい勢いで増えている。10月10日から14日は口座開設の請求が通常の5倍くらいに増えた」と述べ、これまでオンラインで株式の売買をしたことのなかった新しい投資家が口座開設に動いていることを指摘する。

 松本社長は「相場がこれだけ下がったので、新しく投資を始めようとする人が関心を示している。テレビで株価や経済に関する報道が目に見えて増えるとアテンションも上がり(投資に)興味を持つ人が増えるのだと思う」と話す。

 オンライン証券最大手のSBI証券(旧SBIイートレード証券)でも、同11日から13日に口座開設の資料請求が約6000件に上った。その前の週末である4─5日に来た資料請求件数は約1350だったため、1日あたりの平均を比較しても、およそ3倍の投資家が口座開設に動いたことがわかる。

 個人が動き出しているのは、オンライン証券だけではなく、従来型の対面営業を主体とする証券会社でも同じだ。リテール部門をオンライン営業と対面営業の両方で展開する丸三証券では、ネット口座だけではなく、対面でも新規に口座を開設する顧客が目立つという。同証券の水野善四郎専務は「既存の顧客は損失で身動きが取れない様子だが、今まで市場に参加していなかった資産家などが、現在の株価水準なら買い場とばかりに動き出したようだ」と指摘する。

 岡地証券・投資情報室長の森裕恭氏も「既存の顧客の中で株式投資を休んでいた向きが積極的に買っている。株価が大きく下がると個人の動きが活発化するが、今回も過去の経験則通りになった」と語っていた。

 こうした状況は統計上でも明らかで、17日に東証が発表した10月第2週(6─10日)の3市場投資主体別売買動向で個人は、1316億7800万円の買い越しと、9月第4週から3週連続で買い越しとなっている。

 一方、個人投資家の始動は、証券会社にとって収益の下支えになるとの見方も出ていた。ある準大手証券の支店営業担当者は「今回の急落で皮肉にもひと息ついた証券会社が多いのではないか。リーマンショックが起きた9月まで厳しい状態にあった委託手数料収入は、10月に入って急速に回復した。過去最高とまではいかないが、かなりの水準に達している」と明かす。

 こうした状況について、丸三証券の水野氏は「法人部門がビジネスとして期待できないため、個人がここで動き出したことは、相場のみならず証券会社の経営を考える上でも意味が大きい。現在議論されている証券税制が緩和される方向となれば、さらに個人投資家の売買が活発化し、ビジネスチャンスも広がる」とコメントしていた。

 そうした動きを先取りするかのように、証券会社の株価は全体の中で好パフォーマンスを演じている。セクター別の株価指数をみると、証券セクターの株価指数は、10日につけた年初来安値から17日終値までの上昇率が13.2%と、TOPIXの8.6%をアウトパフォームしている。

 このところの急落で追証を抱えた個人投資家も多い上に、投資信託からの資金流失が続くなど、依然として厳しい話も少なくない。「ここからさらに株価が大幅に下落すれば、直近に買った投資家が塩漬け状態になり、再び個人の動きが鈍るリスクもある」(岡地証券の森氏)との声もある。

 とは言え、相場の値動きが大きく「株価水準もここまで下げると、さすがに格好の買い場とみる投資家が増えている」(大和証券)状況であることは確か。株価は市場の予想を上回る歴史的な水準まで下落したが、逆にそれが参戦する投資家のすそ野を広げ、証券会社にビジネスチャンスをもたらすだけではなく、相場底入れのきっかけになる可能性も出ている。

(ロイターニュース 水野 文也記者、江本 恵美記者;取材協力 伊賀 大記記者)

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