October 5, 2019 / 11:16 PM / in 5 days

アングル:コンゴ、新たなデジタル技術で挑む「紛争鉱物」問題

[ルバヤ(コンゴ民主共和国) 1日 ロイター] - コンゴ東部、起伏に富む緑豊かな丘陵を掘り起こした、ぬかるんだ掘削現場を見下ろす小さな小屋の中で、政府職員がバーコード付きのタグを袋に取り付けている。中身は、スマートフォンにも広く使われているレアメタル、タンタルを含む鉱石だ。

10月1日、コンゴ東部、起伏に富む緑豊かな丘陵を掘り起こした、ぬかるんだ掘削現場を見下ろす小さな小屋の中で、政府職員がバーコード付きのタグを袋に取り付けている。写真は8月、コンゴ東部ルバヤのSMB所有の鉱山で、コルタンの鉱石を採掘する作業員ら(2019年 ロイター/Baz Ratner)

担当者がクラウド上のサーバーに接続した携帯端末を使ってバーコードをスキャンすると、封印された袋の重量、タグを取り付けた日時と担当者名などのデータがアップロードされる。

これが、コンゴ民主共和国の東部で導入された最新システムである。その狙いは、グローバルなサプライチェーンに投入される鉱産資源が、児童労働に頼らない鉱山で生産され、軍閥や腐敗した兵士らの資金源になっていないと証明するシステムを改善することだ。

サプライチェーン監査を専門とする独ベルリンの企業、RCSグローバルが開発した新システムは、今年1月からルバヤに近いソシエテ・ミニエル・ド・ビスンズ(SMB)所有の鉱山で使われるようになった。SMBは、タンタルを豊富に含む鉱石「コルタン」を埋蔵するアフリカ大陸最大級の鉱床をいくつか保有している。

RCSのマネージング・ディレクター、フェルディナンド・モーブレー(Ferdinand Maubrey)氏は「このシステムによって、SMBの原材料の購入者は、それが本当にこの鉱山で生産されたもので、他の鉱山からサプライチェーンに不正に持ち込まれたものではないことを最大限確認できる」と語る。

タンタルやコバルトといった金属を追跡する新たなデジタル手法の成否に対しては、特にテスラ(TSLA.O)、ゼネラルモーターズ(GM.N)、フォード(F.N)といった自動車メーカーを中心とする企業から高い関心が寄せられている。

欧州でも米国でも、原材料のエンドユーザーに対して、サプライチェーンが「クリーン」であることを証明するよう求める監督当局からの圧力が高まっているからだ。

今のところ企業各社は、もっぱら紙ベースの認証制度に頼っている。だが、国連の専門家らは、鉱物の生産履歴証明に用いられるタグがコンゴ東部の別の場所で盗まれ、密輸業者に売却された事例を報告している。こうなれば、ブラックリストに載せられた鉱山からの鉱石が、責任ある生産地によるものとして通用してしまう。

モーブレー氏は、同社の新システムでは、新たな障壁を導入することにより、SMB製品への「汚れた」鉱石の混入を予防しやすくなると話している。たとえば密輸業者が盗んだタグを利用するには、スキャナーとそれを接続したノートパソコンも合わせて盗まなければならない。しかし、それでは簡単に盗難が露顕してしまうだろう。

とはいえ、モーブレー氏はこのシステムに限界があることも認めている。その1つが、鉱石のタグ付けがどこで行われたか、GPS座標によってリアルタイムで特定する既存のテクノロジーを採用していない点だ。主として関連するコストの抑制が、理由だとモーブレー氏は説明する。

さらにSMBのベン・ンワンガチュチュ(Ben Mwangachuchu)CEOによれば、デジタル方式のシステムでも、腐敗の可能性はある。袋にタグを付ける政府の担当者が密輸業者と共謀し、最初から不正確なデータを入力するような場合だ。

「もし、彼らが結託して自分たちの利益のために、都合のいい情報を流すということになれば、絶対にバレないだろう」

<タグの盗難>

自動車メーカーや、アップル(AAPL.O)、サムスン(005930.KS)、IBM(IBM.N)といったエレクトロニクス企業は、いずれもノートパソコンやゲーム機、電気自動車用バッテリーなどの製品に使用される金属が、責任ある形で調達されたことを証明するよう圧力を受けている。

米国は2010年、米国の上場企業に対し、自社製品が同地域産のタンタル、スズ、タングステン、金を含んでいるか否かを開示し、デューディリジェンスを遵守するよう義務づける法律を可決した。

これはコンゴや東アフリカの近隣諸国の産出する金属が、紛争の資金源として利用されている問題に対処するためだっだ。

2021年には同じような趣旨の欧州連合(EU)規則が施行され、ロンドン金属取引所では2025年までに責任ある調達方法を採らない金属サプライヤーは、排除される可能性がある。

米国地質調査所の推定によれば、昨年の世界全体でのタンタル生産量の39%は、コンゴ産だった。

コンゴ鉱山省のデータによれば、SMBは昨年、アジアの精錬企業2社に鉱石を供給しており、テスラ、GM、フォード、アップルは、公的な提出書類の中で当該2社が自社のサプライチェーンに含まれている(またはその可能性がある)と述べている。

ロイターがコメントを求めたところ、テスラからは回答がなく、アップルは回答を拒否している。GMとフォードは、米国証券取引委員会への提出書類の中で、精錬企業に対する監査支援など責任ある調達に向けた措置を説明している、と答えている。

専門家によれば、2010年以降に採用された措置はサプライチェーンの不正防止を前進させたものの、まだ、課題は残っているという。

ベルギーの国際平和情報サービス(International Peace Information Service、IPIS)とデンマーク国際研究所(Danish Institute for International Studies)が4月に発表した報告書によれば、2016─18年に視察した711カ所の鉱山のうち、28%でコンゴ軍または武装勢力の介入が見られたという。

その中には、コンゴにおける主要な「責任ある調達」スキームであるITSCIの監視対象である20カ所も含まれていた。

この報告書によれば、「鉱山への介入」とは、軍部隊または武装勢力による直接的な支配を意味する場合もあれば、非公式な課税や所有関係を通じた間接的な影響の場合もある。

コンゴ東部のノースキブ(North Kivu)州で鉱山省の代表を務めるレネ・マスンブコ(Rene Masumbuko)氏は、鉱山に対する軍・武装勢力の介入はまれであるとしつつ、反政府勢力の支配下にある一部地域には、政府職員が立ち入れないことを認めた。

国際スズ協会による取り組みであるITSCIを指揮するケイ・ニンモ(Kay Nimmo)氏は、不正の事例があることを認めている。彼女は、タグ保管の安全性向上に取り組んでおり、報告ではシステムは大きな前進を示していると述べている。

SMBは昨年12月にITSCIを離脱した後、「ベター・マイニング」プログラムと呼ばれる新たなトレーサビリティ(追跡可能性、生産履歴管理)スキームに加わった。

<GPSテクノロジーの活用>

ルバヤに近いSMBの採掘現場では、緑と青のゴム長靴を履いた採掘労働者らが、流れの速い小川で鉱石を洗い、数百メートル離れたタグ付け拠点まで運んでいく。監視を容易にするため、タグ付けは以前よりも採掘現場の近くで行われるようになっている。

このスキームを実施しているRCS社員は、政府担当者によるタグ付け、スキャン、データのアップロードを見守っている。サンプル採取・値付けを行う近隣の保管拠点である倉庫に運ぶ時、また、ゴーマ(Goma)経由でインド洋の海岸からアジア向けに出荷する時にも、この手順が繰り返される。

モーブレー氏によれば、RCSのドイツ国内チームは全てのデータをリアルタイムで検証することができ、生産量の不自然な急増などの異常を特定し、買い手企業にリスクを報告することが可能だという。

コンゴ東部以外で行われている他のプロジェクトでは、さらに先進的なテクノロジーを使って、複雑なサプライチェーン全体にわたって鉱物を追跡できるようにしている。

コンゴ南部では、RCSがフォードやIBMなどの企業と提携し、リチウムイオン電池の材料となるコバルトの追跡を行っている。このシステムでは、ビットコインを支えるテクノロジーであるブロックチェーンを使い、改ざん不可能な記録を作成している。

ロンドンを拠点とするスタートアップ企業・サーキュラーも今年、ジーリー(吉利汽車)(0175.HK)傘下のボルボ・カーズのために、ブロックチェーンを利用して中国国内におけるリサイクルによって再生できるコバルトの分布把握を支援している。

また、サーキュラーは、鉱石がどこでタグ付けされたかを正確に特定するGPS機能や採掘労働者の身元確認のための顔認識ソフトウェアを搭載したスマートフォンを使って、ルワンダにおける鉱山の監視を行っている。

これらのプロジェクトは、紛争地域から離れた比較的リスクの低い鉱山を対象としているが、サーキュラーのダグラス・ジョンソンポーンスゲン(Douglas Johnson-Poensgen)CEOは、こうしたイノベーションはコンゴ東部でも応用できる可能性があると話している。

ITSCIはデジタル方式を近いうちにブルンジ、ルワンダ、ウガンダでも導入する計画であり、RCSもルワンダの鉱山2カ所でバーコードシステムを運用している。

だが、双方とも貧弱なインフラと高コストのため、コンゴ全域で同じ方式を展開するのは難しいだろうと述べている。

認証スキームの運営関係者は、資金的な制約の存在を指摘する。彼らの資金調達先は、もっぱら採鉱事業者、トレーダー、精錬企業を中心とする会員企業であり、最終的にコンゴ産の鉱物資源を利用する富裕国の多国籍企業ではないからだ。

「下流の企業や業界団体は、鉱山の労働条件改善につながる支援策に金を出したがらない」とRCSのモーブレー氏は言う。

ジョンソンポーンスゲン氏は、サーキュラーのプロジェクトに要するコストについては明らかにしていないが、誰よりも責任ある調達を実証する必要があるサプライチェーン最下流の製造企業に、有利な価格設定になっていると述べている。

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ロイターは、コンゴ産鉱物資源を利用する大手企業に対し、さらに優秀で先進的かつ安全なトレーサビリティ・スキームのためにもっと資金を拠出する用意があるかを問い合わせたが、回答は得られなかった。

また、2011年以降はITSCIが市場を支配しているため、新たな採掘スキームが、コンゴ東部や近隣諸国に進出するのは困難になっている。

(翻訳:エァクレレーン)

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