June 26, 2018 / 2:55 AM / in 5 months

アングル:貿易摩擦で経済リスク、政府内に消費増税慎重論が浮上

[東京 26日 ロイター] - 米中や米欧間で生じつつある貿易摩擦が、日本の財政運営判断に大きな影響を与えそうな雲行きになってきた。貿易摩擦で中国経済に減速リスクが高まれば、日本経済に悪影響を及ぼしかねないとの声が浮上してきた。先に公表した「骨太方針」には来年10月に消費税率を10%に引き上げると明記したが、政府の一部からは貿易摩擦と消費税引き上げが重なる事態は、避けたいとの声が出てきた。

 6月26日、米中や米欧間で生じつつある貿易摩擦が、日本の財政運営判断に大きな影響を与えそうな雲行きになってきた。写真は都内で2016年9月撮影(2018年 ロイター/Toru Hanai)

<既にマインドに影響>

「首相は今のところ、来年の増税を実施するつもりでいるようだが、貿易摩擦と消費税引き上げで、日本経済は果たしてもつのか」──。

安倍晋三首相に近い政府関係者は、最近のトランプ米大統領の言動を見ながら懸念を強めている。別の政府高官も「貿易摩擦が激しくなると、消費税引き上げを控えている日本として、困ったことになる」と語る。

日本経済が昨年10─12月期まで8四半期連続でプラス成長となった原動力は、世界経済の拡大による輸出の増加だった。最近は中国経済の回復による寄与が目立っていた。17年以降、急激に生産が拡大している一般機械は、中国におけるIoT(モノのインターネット)拡大に伴う半導体や半導体製造装置の輸出の寄与が大きい。

しかし、6月ロイター短観では、輸出型製造業の景況感が悪化した。貿易摩擦への懸念が背景にあり、製造業全体でも景況感が年初から低下。加えて消費者心理に関連した各種の指標も悪化している。

ある経済官庁の幹部は「景気が腰折れするとはみていないが、従来のようにどんどん良くなっていく感じはない」と話す。「ようやく設備投資に勢いが出てきたところだが、貿易摩擦に伴い企業マインドが悪化して、設備投資に様子見姿勢が出てくることが心配だ」と不安を隠さない。

<中国経済6.5%成長割れも>

現在のところ、米国による日本への具体的な輸入制限措置は、鉄鋼・アルミ製品に対する高関税にとどまっている。

だが、冒頭の政府関係者は「むしろ影響が大きいのは、米中摩擦による波及だ。米国の中国製品に対する制裁関税の実施などへの警戒心はとても強い」と不安を隠さない。

トランプ大統領は、中国に対する500億ドルの制裁関税に加えて、その4倍の2000億ドルの追加関税も発表。中国も同額の報復措置を打ち出し、質と量で対抗する方針を示している。

SMBC日興証券・シニアエコノミスト、肖敏捷氏は「このままでは中国が6.5%という成長率目標を達成できなくなる可能性を排除できない。17年に実質成長率が6.9%と政府目標の6.5%を大幅に上回った背景には、純輸出の寄与度改善がある。言い換えれば、純輸出の寄与がなければ、固定資本形成と最終消費だけでは目標の達成が不可能だった」と分析。貿易摩擦で輸出が伸び悩めば、成長率低下は不可避とみている。

米国との貿易摩擦は、対欧州でも拡大している。欧州連合(EU)は22日、米国による鉄鋼・アルミニウムの輸入制限への対抗措置として、総額28億ユーロ規模の米製品に最大25%の追加関税を課す報復措置を発動した。

トランプ大統領も、EUから米国に輸出されるすべての自動車に20%の関税をかけるとツイッターに投稿し、再報復に出る構えを表明している。

<関税引き上げで世界貿易6%減少の試算>

経済官庁幹部の間では、国際機関が貿易摩擦の世界経済への打撃度をどのように試算しているかに関心が集まっている。

OECDは、米国・中国・欧州が全ての貿易相手国に対し関税を10%引き上げる措置を実行した場合、世界の貿易量が中期的に6%減少し、世界の国内総生産(GDP)は1.5%減少するとしている(2016年Economic outlook)。

ただ、こうした世界の高関税報復措置合戦が、日本に定量的にどの程度影響するかは「大変複雑で試算はできない」(経済官庁幹部)という。

というのも1つの製品でも、原材料調達から販売先まであらゆる国を経由し、正確な波及経路はつかめないとみられている。

しかも、米国が高関税を実施するまでに時間がかかるだけでなく、高関税をディールの材料とし別の利益獲得を米国が目指す可能性もあり、単純な数式を当てはめることはできない環境だ。

別の経済官庁幹部は「実際の影響よりも、企業や個人のマインドに影響が出てくることで、景気に影響する」と指摘。消費者心理や設備投資マインドも気にかけている。

11月の米中間選挙に向けて、現実に米国がどのような制裁関税や貿易制限措置を発動してくるのか。その程度によっては、世界経済そして中国経済の減速リスクが高まっているかもしれない。

安倍首相やその周辺が、日本経済のリスクを大きく見積もれば、消費増税の実施判断に影響が出る展開も予想される。

中川泉 編集:田巻一彦  

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