March 19, 2020 / 10:43 PM / 12 days ago

コラム:08年より企業脆弱、「新ルート」で迫りくるコロナ危機

[ロンドン 17日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 新型コロナウイルスの感染拡大による危機は、2008年の世界金融危機の単なる再来ではなく、新たな経路から経済に打撃をもたらすだろう。西側諸国における渡航禁止、隔離、飲食店や店舗の休業といった措置により、リーマン・ショック当時のような信用収縮が訪れるとの恐れが浮上している。当時に比べて銀行が健全化しているのは救いだが、企業は当時より危うい状態で、各国政府の結束も当時ほど固くない。

3月17日、新型コロナウイルスの感染拡大による危機は、2008年の世界金融危機の単なる再来ではなく、新たな経路から経済に打撃をもたらすだろう。写真は1ドル紙幣の原版。ワシントンの造幣局で2014年11月撮影(2020年 ロイター/Gary Cameron)

金融市場には、リーマン・ショック当時のような不安心理が、水面下から顔を出しま始めている。投資家は景気後退を警戒してリスク性資産を処分し、「恐怖指数」の異名を持つシカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティー・インデックス(VIX指数)は08年秋以来の水準に跳ね上がった。

前週は世界で最も安全な資産と信じられている米国債の取引に支障が生じた。各国中央銀行は金利を引き下げ、債券購入を約束し、臨時のドル資金供給を発動した。前回金融危機時とそっくりだ。

企業の資金調達コストは急上昇しており、デフォルト(債務不履行)の連鎖という悪循環を招きかねない。投機級の企業のクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)を反映するiTraxx欧州クロスオーバー指数ITEX05Y=MGは、スプレッドが3倍以上に跳ね上がって600ベーシスポイント(bp)超と、リーマン・ブラザーズが破産法適用を申請した08年9月15日の水準に並んだ。UBSアナリストチームの予想では、新型コロナのパンデミック(世界的大流行)により今年の世界経済の成長率は、わずか0.8%に落ち込む見通しだ。

<類似点と相違点>

しかし、2008年との違いも際立っている。金融システムから始めよう。08年は金融機関が危機の中心にいた。資本水準が低く、足の速い資金に頼っており、リスクの高い債務に大量に投資していた。住宅サブプライムローンのバブルが弾けた途端、金融システム全体が崩壊した。

現在、金融機関は当時よりも健全だ。金融安定理事会(FSB)によると、中核的自己資本(Tier1)比率は当時の2倍以上になった。銀行は自己勘定取引を抑制しており、ヘッジファンドへの投資も縮小した。

つまり、銀行が貸し出しを抑える可能性は低くなっている。実際、当局は銀行の余剰資本を用いてショックを和らげようとしている。米連邦準備理事会(FRB)、イングランド銀行(BOE)、欧州中央銀行(ECB)はいずれも、銀行が既存の資本バッファーに手を付けるのを許す構えだ。

しかし、銀行が健全になった半面、企業の足腰は弱くなった。10年にわたる低金利と中銀による債券買い入れを背景に、多くの大手企業は借り入れを増やした。ソシエテ・ジェネラルのアナリストチームによると、投資適格級の米企業の債務比率は資産の40%前後と、景気後退時の09年や、インターネット・バブル崩壊後の02年より高い。バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチのアナリストチームによると、STOXX600株価指数を構成する欧州企業の8%は、営業利益で利息の支払いを賄えない状態だ。

<さらに悪いことに>

つまり企業は、新型コロナによる経済への衝撃を吸収できる態勢にない。経済活動が停止状態になると、脆弱な企業はコストを抑えざるを得なくなるだろう。銀行はある程度柔軟に貸し出しに応じられるが、資金調達を社債市場に頼っている企業は、それほど簡単に返済の再交渉を行えない。

金融市場の構造も変わった。08年に比べてレバレッジを利かせたファンドは減り、マネー・マーケット・ファンド(MMF)は当時ほどリスクの高いクレジット商品と結びついていない。

しかし、異なる種類の脆弱性が積み上がっている。社債に関連するリスクの大半は、回り回ってファンドが抱えており、投資家はそこから即座に資金を引き出せる。ファンドは投資家への資金返済に応じるため、より流動性の低い資産まで処分せざるを得なくなる。多くの上場投資信託(ETF)は、簿価を下回る価格で取引されている。これは市場がストレスを抱えている明確な兆候だ。

社債市場はまた、金融危機当時に比べて信用格付けに左右されやすくなっていると言えるだろう。クレジットサイツによると、米投資適格級社債の指数は、半分が「BBB」格付けの企業で占められている。怖いのは、これらの企業が「ジャンク」級に引き下げられ、こうした指数に追随しているファンドが売りを余儀なくされる事態だ。

金融市場のもう1つの新たな弱点は、未公開企業向けローン8200億ドル超が証券化されたローン担保証券(CLO)だ。あまりに多くの保有資産が格付けを引き下げられれば、ファンドは閉鎖を迫られかねない。

一方、中央銀行は金融危機時に比べて、打つ手が限られている。新型コロナ危機が始まった時点で、既に西側諸国の政策金利は非常に低いかマイナスだった。08年当時には「異端」扱いだった社債の買い入れなどに、中銀が前向きになったのは確かだ。だが、中銀は、ウイルスが引き起こした根本的な問題には対処できない。

そうなると政府が頼りだが、政府も問題を抱えている。各国政府は08年、銀行への資本注入や貸し出しファシリティーの設立に素早く動いた。その後、20カ国・地域(G20)当局は、協調して成長をてこ入れし、信用収縮を断ち切った。

現在、各国政府は困窮する企業と消費者への資金提供に奔走している。しかし、今のところ、当時ほど断固とした協調行動が実施されそうな様子はない。つまり2020年の危機は08年とは違い、もっと悪いものになる可能性があると言えるだろう。

●背景となるニュース

*リフィニティブのデータによると、投機級社債のCDSを反映するIHSマークイットの欧州クロスオーバー指数は16日、スプレッドが609bpと、08年9月15日の604bpを上回った。2月末には200bp前後で推移していた。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにロイターのコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

0 : 0
  • narrow-browser-and-phone
  • medium-browser-and-portrait-tablet
  • landscape-tablet
  • medium-wide-browser
  • wide-browser-and-larger
  • medium-browser-and-landscape-tablet
  • medium-wide-browser-and-larger
  • above-phone
  • portrait-tablet-and-above
  • above-portrait-tablet
  • landscape-tablet-and-above
  • landscape-tablet-and-medium-wide-browser
  • portrait-tablet-and-below
  • landscape-tablet-and-below