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コラム:新興市場に恩恵もたらすFRBのハト派色
2014年5月22日 / 07:28 / 4年後

コラム:新興市場に恩恵もたらすFRBのハト派色

[21日 ロイター] - 米国の金利はかなりの期間にわたって低水準にとどまりそうで、他の条件が等しければ、これは新興国市場を利する環境となるはずだ。

 5月21日、米国の金利はかなりの期間にわたって低水準にとどまりそうで、他の条件が等しければ、これは新興国市場を利する環境となるはずだ。写真は2012年4月、ワシントンのFRB(2014年 ロイター/Joshua Roberts)

米連邦準備理事会(FRB)による資産購入の縮小(テーパリング)をめぐる昨年の騒ぎを思い起こそう。テーパリングを見越して投資家が流動性を絞った結果、脆弱な新興各国は打撃を被った。しかしそれも過ぎたことだ。過去1週間というものは、FRBの内外から聞こえてくる声があらためてハト派的な景色を描き出しつつある。

これはあらゆる市場にとって重要なことだが、新興国、とりわけ資金獲得の必要に迫られ、それゆえ世界的な資金コストと調達の可能性に敏感な国々にとってはボーナス以外の何ものでもない。

テーパリングは現実のものとなったが、それでも欧米の景気の弱さを示す兆候を背景に市場金利は低下し、高リスク資産には概ね力強い需要が見られる。

ロシアによるウクライナへの介入から中国経済の減速まで、山積する問題を無視しようというのではない。しかし新興国市場の内部で起こるいかなる問題であれ、FRBがタカ派的態度を示せば一層悪化するだけだということを忘れてはならない。実際、歴史的に見て、FRBの金融引き締めは新興国市場内の問題を引き起こす重要な要因となり続けてきた。FRBの政策が支援的であることは、新興国市場が堅調に推移するための必要条件に近い。

<FRBに何が起こったのか>

そもそもFRBはなぜ1、2週間前に比べてハト派色を強めたのだろう。

一つには、今や1回当たり25万ドルもの報酬で夕食会に次々と顔を出し、講演を行っているバーナンキ前FRB議長が、われわれにそう告げているからだ。ジャーナリストが出席を許されない私的な夕食会での発言なので、報道されているのは二次情報に過ぎないが、金利が近く上昇することはないというメッセージが伝わってくる。

バーナンキ氏は、FRBがインフレ率の2%超えを看過する可能性があると示唆しただけではない。夕食会の出席者の一人によると、バーナンキ氏は、自らの存命中はフェデラルファンド(FF)金利が過去の平均水準である約4%を回復することはないと考えている様子だったという。

FRBの現職も、講演やインタビューで同様の見解をストレートに示している。ニューヨーク連銀のダドリー総裁は今週、物価目標の2%は上限であるとの考えに公然と反論し、2%に到達した後は、この水準を下回っていた期間と同じくらいの間、上回った状態が続くかもしれないと主張した。

ダドリー総裁は最初の利上げ時期について言質を与えず、利上げが始まったとしてもペースはかなり遅くなるとの見通しを示した。

米ウォールストリート・ジャーナル紙によるローゼングレン・ボストン地区連銀総裁へのインタビューも見てみよう。総裁は、FRBがテーパリング終了後も、バランスシート上に保有していた債券の償還資金を再投資し続けるのを望むかもしれないと指摘。FRBが金融安定を維持する上で、大規模なバランスシートは必要な手段になるかもしれないと述べた。

低金利の長期化、そして巨大なバランスシートを抱えてインフレ率の小幅な上振れを看過するFRBという組み合わせは、インド準備銀行(中央銀行)のラジャン総裁や南アフリカのゴーダン財務相の耳に心地よく響くに違いない。

<ボラティリティとフロー>

実際、新興国市場の資産がこの状況を織り込みつつある兆候は既に認められ、この状況が続くとの期待も生じている。MSCI新興国市場指数は年初来、過去1週間、過去1カ月間のどの期間で見ても、米S&P総合500種とユーロ・ストックス50をアウトパフォームしている。

特に興味深いのは、新興国市場のボラティリティ低下だ。CBOEの新興国市場ETFはボラティリティが3月半ば以来35%低下しており、米VIXボラティリティ指数の低下ペースを大きくしのいでいる。

バークレイズ・キャピタルのアナリストチームは、先進国に対する新興国市場の相対的ボラティリティは昨年来、急低下しているが、新興国ソブリン債利回りの先進国債に対する上乗せ幅は実質でかえって拡大していると指摘。これは新興国市場のリスクプレミアムに低下余地が残っていることの証左かもしれないとしている。

バークレイズのグローバル株式ストラテジスト、ホアオ・トニアート氏は顧客向けノートで「一番の問題は、現在の高水準のリスクプレミアムには妥当性があるかということだ。潜在的な株式のリスクプレミアムに着目したわれわれの分析では、答えは『ノー』であることが示唆された」と記した。

新興国の当局者らが、流動性が豊富な期間の長期化をどう活用するかに多くは掛かっている。過去と同様、これを改革先送りの言い訳にし、政治的には人気が高いがおそらく収益率の低い投資を行うのは簡単だろう。

とはいえ新興国市場にとっても同市場の投資家にとっても、FRBによって否応なく流動性を引き締められてしまうよりは、自らの手で選択できる方がましではある。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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