May 22, 2020 / 10:54 PM / 11 days ago

コラム:コロナで加速するキャッシュレス化、中銀は対応急げ

[ミラノ 20日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 新型コロナウイルス感染症のパンデミック(大流行)が起きる前から、現金は既に非衛生的な存在だった。そしてコロナ問題が登場した今、現金は単に不快感を伴うだけでなく、多くの人にとって不要になってきている。

5月20日、新型コロナウイルス感染症のパンデミック(大流行)が起きる前から、現金は既に非衛生的な存在だった。そしてコロナ問題が登場した今、現金は単に不快感を伴うだけでなく、多くの人にとって不要になってきている。写真は4月、独ドュッセルドルフのスーパーで、キャッシュレス端末を利用前に消毒する買い物客(2020年 ロイター/Wolfgang Rattay)

感染予防のために自主隔離中の世界各地の消費者は、汚れた紙幣を捨て去り、より接触が少ない買い物手段に乗り換えているのだ。中央銀行としては、現金が決済の舞台から完全に退場する光景を目にしたくはないだろうが、中銀はデジタル通貨の検討を急ぐ格好になるのではないか。

消費者がいったん変えた習慣は、そのまま定着することが少なくない。ニールセンによると、中国の消費者の90%近くは、パンデミック収束後も必要な品物をネットで買い続けると話している。こうしたデジタル決済の普及は、現金をますます脇役へと追いやるだろう。

これはさまざまな面で意義がある。イタリアやインドなどの政府から見れば、脱税や金融犯罪への取り組み強化を迫られる紙幣というのは実に厄介だ。また現状では、民間企業がデジタル決済の主導権を握る恐れがある。人気上昇中のデジタルウォレットは、ペイパルやベンモ、あるいは中国のアントフィナンシャルが運営するアリペイ(支付宝)が提供しており、彼らは消費者の購入行動で貴重な情報を収集している。

ただこれらのサービスに使われる電子マネーは、公的な預金保険の対象にはならない傾向があり、業者が破綻した場合、利用者が損失を被る。さらに決済サービスには手数料がかかってしまう。半面、現金は国家による裏付けがあり、価値が安定し、プライバシー侵害と無縁である上に、いつでもどこでも交換できる。

そうした悩みを受け、多くの中銀が既に着手しているデジタル法定通貨の研究が加速する公算が大きい。デジタル法定通貨は、利用者が携帯端末やカードなどに保管し、毎日の買い物に使うことができる。世界の中銀の8割程度はこの研究を進めており、早ければ2023年にもキャッシュレス社会の実現を目指すスウェーデンでは、中銀が今年2月にデジタル法定通貨「eクローナ」の試験運用を開始した。中国は年内に世界初のデジタル法定通貨を発行する可能性がある。

消費者側も、デジタル法定通貨を受け入れる態勢ができているように見受けられる。エコノミスト・インテリジェンス・ユニットが4月に実施した調査では、約54%の人はデジタル法定通貨が発行されれば利用すると答えた。ビットコインやイーサリアムといった民間の仮想通貨に信頼感を示したのは25%だけだった。3月には、米議会が銀行口座を持っていない数百万人の国民に新型コロナの支援金を給付するため、デジタル法定通貨をモバイル端末に振り込む構想を提案した。

現金がすぐに姿を消すことはない。中銀は、デジタル技術の知識が乏しい人たちが取り残されないよう万全の措置を講じようとするだろう。その上、特に新興国では保管価値という面で現金が引き続き重視されている。それでも今回のパンデミックで、紙幣や硬貨がやがて旧時代の遺物と化す流れが、確固としたものになろうとしている。

●背景となるニュース

*国際決済銀行(BIS)が4月3日に公表した報告書によると、新型コロナのパンデミックに伴って、人々の間で現金を通じてウイルスに感染するのではないかとの懸念が高まっている。インターネットでは「現金」と「ウイルス」とで検索した事例が過去最多を記録した。

*アイルランド中央銀行のデータに基づくと、4月第1週の現金引き出し額は3月第1週に比べて57%減少した。フランスの通信会社オレンジは、同国がロックダウン(封鎖)に突入した3月に、モバイル決済額が前月比60%増加したと明らかにした。

*スウェーデン中銀は2月、デジタル法定通貨「eクローナ」の試験運用を開始したと発表した。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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