August 15, 2014 / 7:52 AM / 5 years ago

アングル:民間の物価見通しが日銀にすり寄る、「追加緩和は後退」の声

[東京 15日 ロイター] - 2014年4─6月期国内総生産(GDP)を受けて、民間調査機関では14年度成長見通しを下方改訂する動きが相次いでいる。

8月15日、2014年4─6月期国内総生産(GDP)を受けて、民間調査機関では14年度成長見通しを下方改訂する動きが相次いでいる。写真は日銀本店で昨年2月撮影(2014年 ロイター/Yuya Shino)

その一方、物価見通しは据え置き、ないし上方修正の動きが浮上。結果として、日銀による14年度消費者物価指数(CPI)見通しに民間が徐々にすり寄った形になっている。市場では、日銀による追加緩和決断の理由が乏しくなってきたとの声が広がっている。

<成長率大幅下方改訂、物価見通しに影響せず>

4─6月期GDP発表後に経済見通しを見直した第一生命経済研究所では、14年度の成長率を6月の0.8%成長から0.4%成長に下方改訂した。だが、コアCPI(増税を除くベース)見通しは1.2%で据え置いた。

日本総研も、成長率は0.4%に下げながらCPIは1.3%で据え置き。三菱総研はCPIを増税込みで5月の3.0%から今回3.3%にむしろ上方修正している。

日銀が公表している14年度の物価見通しは1.3%、増税込みで3.3%であり、3社ともほぼこれに見合った見通しとなっている。

民間調査機関40社以上の見通しをまとめたフォーキャスト調査では、このところ毎月のように物価見通しが上方修正されており、8月調査では平均で14年度1.14%まで上昇している。

年初から一貫して上方修正が続いており、民間見通しが日銀見通しの1.3%にかなり接近するのは時間の問題と言えそうだ。

<人手不足や賃金上昇で、成長率低下と物価上昇が両立>

こうした民間見通しには、成長率の低下と物価の上昇は両立しうるという認識が映し出されていると言えそうだ。

通常であれば、GDPが下方改訂されれば需給ギャップがマイナス方向に拡大し、物価に下押し圧力がかかるはず。

だが、今回そうした見方はさほど広がっていない。年度の成長率見通しを下げた調査機関が多いが、その大きな要因は4─6月の悪化で14年度の発射台が低くなったことだ。7─9月以降の各四半期成長率はプラス1%台を超え、ゼロ%台半ばの潜在成長率を大幅に上回ると予想されている。

潜在成長率を上回る成長が継続すれば、需給ギャップは改善傾向をたどり、物価上昇方向に働くという「論法」だ。

さらに、日本総研では「成長率は下がっても、人手不足という構造的な状況は変わらない。特に非製造業では賃金上昇は変わらず、そのために物価上昇基調も続く」(下出裕介・副主任研究員)との見通しを打ち出している。

実際、リクルートによる「アルバイト・パート募集平均時給調査」を見ると、3大都市圏では足元で賃金上昇に拍車がかかっている。5月は前年より1%、6月も0.8%と、アベノミクスが始まって以来例を見ない上昇幅を記録しているほか、あらゆる職種で時給上昇の現象が起きている。

一方で、増税に伴う物価上昇の大きさに所得増が追い付かないとの見方が根強い。だが、内閣府は足元での実質所得の目減りが今は大きいとしても、夏のボーナスや公務員の人事勧告の実現など、今後徐々に増加方向にトレンドが転換することに自信を示している。アルバイト・パート賃金の上昇傾向が強まっていることも、そうした自信を裏付ける1つの材料となり得るだろう。

民間でも、三菱総研が「消費税の3%分の世帯当たり負担額は平均で6.7万円。春闘の結果から試算した収入増加額は年間5.3万円、就業者の増加で世帯当たり2.6万円分に相当する分を加味すると、マクロ全体では消費増税分を吸収できる計算」(チーフエコノミスト・武田洋子氏)と指摘する。政府や日銀の強気な見方をサポートする分析と言える。

<14年度の日銀物価見通し実現へ、追加緩和なしか>

もともと日銀では、14年度の物価見通しを立てる際に、昨年の円安や原材料高の転嫁が1年のタイムラグを経て、今年本格化するとみていた。

加えて失業率が3%台半ばまで下がると賃金上昇は避けられない、との見通しも持っていた。いずれも、その見立て通りの展開となってきたと言えるだろう。

マーケットではつい数カ月前まで、エネルギー価格のプラス寄与縮小によりCPIコアの上昇率が鈍化し、CPI上昇率は1%を割れるとの見方が主流だった。しかし、今やそうした見方は少数派だ。

第一生命経済研究所では「上昇率が最も低下するとみられる14年秋でも、消費税要因を除くベースでプラス1%を下回らない」と予想。むしろ「14年後半にはエネルギー価格の上昇に頼らない形での物価上昇が実現することになり、物価上昇の質は改善するだろう」(主席エコノミスト・新家義貴氏)としている。

それでも市場の一部では、4─6月の景気が悪化すれば、追加緩和の可能性が高まるとの見方も残っている。

ただ、多くの民間調査機関は、成長率が悪化しても物価上昇見通しに影響はないとの見立てを打ち出しており、少なくとも14年度については日銀見通しの実現の可能性も否定できなくなっている。

「10月の展望リポートで成長率見通しを下方修正しても、物価が見通しに沿っている限り、追加緩和するとは思えない」(SMBCフレンド証券・チーフマーケットエコノミスト、岩下真理氏)といったBOJウォッチャーらの見立てが、今後の市場で一段と浸透してもおかしくなさそうだ。

中川泉 編集:田巻一彦

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