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焦点:クレディ・スイスの経営再建、株価・社債下落で逆風強まる

[チューリヒ/ニューヨーク 4日 ロイター] - スイスの金融大手クレディ・スイスは、一連の不祥事や多額の損失計上を受けて、経営再建計画の策定を急いでいるが、市場の乱高下やソーシャルメディア上の憶測などを受けて、一段と厳しい状況に追い込まれている。

 10月4日、スイスの金融大手クレディ・スイスは、一連の不祥事や多額の損失計上を受けて、経営再建計画の策定を急いでいるが、市場の乱高下やソーシャルメディア上の憶測などを受けて、一段と厳しい状況に追い込まれている。スイス・ベルンで9月26日撮影(2022年 ロイター/Arnd Wiegmann)

関係筋によると、ウエルスマネジメント部門では一部の顧客が再建の行方を懸念しており、資金を移す動きも出ている。同部門は経営再建計画の目玉になる見通しだ。

クレディ・スイスの広報担当は「引き続き顧客に寄り添いながら戦略の見直しを進めている」とコメントした。

一方、同行が撤退を望む事業については、市場の混乱を背景に、潜在的な売却先から良い条件を引き出すことが難しくなっているとアナリストは指摘する。

市場ではここ数週間、経営再建の原資を確保するため、投資家から資金調達が必要になるとの懸念が浮上。株価は安値を更新した。

ソーシャルメディアでは、同社の健全性を巡り、先週末にかけて根拠のない観測が飛び交った。これを受けて、3日の市場では同行の社債が下落。クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の保証料率は数十年ぶりの水準に急上昇した。

モーニングスターの株式アナリスト、ヨハン・ショルツ氏は「厳しい事業再編となることは間違いないが、事態は一段と厳しさを増している。資金調達コストが劇的に上がっており、すでに圧迫されていた収益率がさらに圧迫されている」と述べた。

同行は2021年に投資会社アルケゴスの破綻を受け50億ドルの損失を計上。幹部の内偵問題で規制当局の批判を浴びたほか、破綻した英金融会社グリーンシル・キャピタルへの関与で評判に傷がついた。

7月にウルリッヒ・ケルナー氏が最高経営責任者(CEO)に就任し、収益率とイメージの回復を図っている。

経営再建では、持続可能な利益を下支えするため、投資銀行部門を合理化し、資本の必要額が相対的に少ないウエルスマネジメント部門を拡大する意向。証券化商品事業の売却も検討している。保有資産を高値で売却できれば、投資家から調達する資金は少なくて済む。

関係筋によると、同行は追加の資本を調達するため、あらゆる選択肢を探っており、必ずしも追加の株式を売却する必要はない。資産売却だけで資金を確保できる余地があるという。また投資銀行部門は残すものの、縮小する可能性が高いとも指摘した。

経営再建計画は今月27日に発表する予定。

<資産売却に苦戦との見方も>

ジェフリーズのアナリストは、クレディ・スイスが資産の処分売りを迫られ、売却価格が低迷する可能性があると指摘。「資産を売却すれば、資本を調達できるが、将来の利益創出力が低下する。全体としては、資産売却だけで潜在的な資本不足の問題を解決できない可能性が高い」との見方を示した。

シティグループのアナリストは、プライベートバンキング部門からさらに資金が流出する可能性があると指摘している。

関係筋によると、スイス連邦金融市場監督機構(FINMA)と、クレディ・スイスが主要拠点を置く英国のイングランド銀行(中央銀行)は状況を注視しており、緊密に連携している。

一方、複数のライバル行の関係者は、クレディ・スイスの資本と流動性の水準に問題はないとの見方を示す。

ある関係者は、クレディ・スイスのさまざまな資本指標について「資産売却に伴う損失を吸収する上で十分な水準」にあるようだと指摘。別の関係者も「クレディ・スイスの資本と流動性の水準は依然として健全だ」と述べた。

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