November 4, 2014 / 10:08 AM / 6 years ago

「黒田バズーカ」でマネーフローに変化、海外勢が日本株に回帰

[東京 4日 ロイター] - 日銀の追加金融緩和によって、マネーフローが変化し始めている。日本株には海外勢の買いが戻り、7年ぶりの高値に上昇した。一方、円債金利が低下するなか、国内機関投資家は海外債券に興味を示している。

 11月4日、日銀の追加金融緩和によって、マネーフローが変化し始めている。日本株には海外勢の買いが戻り、7年ぶりの高値に上昇した。一方、円債金利が低下するなか、国内機関投資家は海外債券に興味を示している。写真は、黒田日銀総裁、2013年撮影(2014年 ロイター/Toru Hanai)

ただ、実体経済が急に変化したわけではない。経済と金融市場のかい離が進めば、将来の反動も大きくなる。

<アベノミクス相場全盛期の活況>

野村証券が日銀追加緩和を受けて31日の夜に実施したグローバルコール(電話会議)では、急きょの開催にもかかわらず、海外投資家など約200名の参加があった。「久しぶりに日本への強い関心を感じた」と野村証券シニア・ストラテジストの松浦寿雄氏は話す。

日銀追加緩和の「余韻」は連休明けの東京市場でも続いており、4日の日経平均.N225は一時、約7年ぶりに1万7000円台を回復。東証1部売買代金は31日が4兆1982億円、4日は5兆4304億円と過去2番目の規模に達した。日本株市場は3─4兆円の売買が連日続いた昨年4─5月のアベノミクス相場全盛期のような活況を呈している。

買い主体はやはり海外投資家が中心のようだ。「海外勢は10月に、それまでパフォーマンスの悪かった日本株を大幅に売っており、ニュートラルもしくはアンダーウエートだったようだ。サプライズの日銀追加緩和で、とにかく買えということになった」(外資系証券トレーダー)という。

海外投資家は今年に入っては前週までトータルで2兆4000億円を売り越している。8月中旬以降は、2兆5000億円を買い越したが、10月の下落相場での売り越し額はその買い越し額を上回り約3兆円に達した。ヘッジファンドなど短期筋の日本株ポジションが軽かったことが、2日間で日経平均が1200円高となる急騰につながったとみられている。

<伴わない実体経済の改善>

問題はこの先だ。サプライズ緩和の衝撃に驚いた海外投資家がいったん日本株に買いを入れたが、「アベノミクス相場」を再現しようとすれば、昨年のように約15兆6500億円も買い越してくれることが必要だ。生損保など国内機関投資家は依然として日本株には慎重な姿勢を崩していない。

急ピッチの上昇となった日本株だが、それほど割高感が出ているわけではないとの指摘もある。日本企業の企業業績は円安効果もあって、ひとまず増加傾向にあり、日経平均で1万7500円程度まで上昇しても、割高感は強まらないという。

「現在、日経平均で1080円程度の一株利益予想は期末には1150円程度になるだろう。PER15倍として1万7250円。追加緩和でPERも上がるだろうから1万7500円程度までなら正当化できる」とニッセイ基礎研究所・金融研究部主任研究員の井出真吾氏はみる。

さらに、黒田東彦日銀総裁が2年で2%の物価目標を堅持したことで、市場では新たな追加緩和への期待が早くも高まってきている。「原油価格の上昇がなければ2%のインフレは難しい。黒田総裁の31日の会見では物価へのこだわりが印象的だった。物価下振れが明らかになれば、追加緩和の可能性が高まる」(外資系証券エコノミスト)という。

しかし、物価が上昇しても経済が一向に回復しなければ賃金は上がらず、国内消費者にとっては重い負担となる。その「間」を埋めるはずの成長戦略はいまだ力不足だ。2012年11月からのアベノミクス相場は株価が倍化して資産効果をもたらしたが、現在の株価水準からの倍化は容易ではない。

日本株市場では海外勢の買いが目立っているが、「普段、ショートをしないような海外投資家が新規にショートを入れてきている。株価は行き過ぎとみているようだ」(大手証券株式トレーダー)との指摘もあった。

「日銀が2%の物価目標に固執するなら、追加緩和の可能性は高くなる。ただ、構造改革などが進まず、金融政策だけが異次元の領域で突出すればバランスの悪い経済政策になるだろう」とりそな銀行チーフ・エコノミストの黒瀬浩一氏は警告している。

<海外に資金流出の懸念>

海外からの資金流入が強まる一方、国内から資金流出の懸念も出てきている。低金利が一段と進んだことで、運用先に困る国内バイサイドが増えてきているからだ。

10年債は0.44%まで低下。20年債は1.2%を下回り、30年債も一時1.4%を割り込んだ。「財政ファイナンスへの懸念は強まっているが、現実的には日銀の大量国債購入による需給タイト化にマーケットが逆らえなくなっている」(国内銀行)という。

ある国内生保の資金運用担当者は「20年債で1.1%台は運用対象としては、苦しい。さらに買おうとしても日銀が大量の国債購入で『玉』がない状態だ。今年はなんとかなるとしても来年はヘッジ付きの外債などを増やしていかなければならなくなるだろう」と漏らす。リスクウエートの計算上、国内債と為替ヘッジ付き外債は同じだ。

国債を支えるマネーが海外に流出しても、日銀が買い支えてくれることで、問題が表面化しない可能性もある。国内金利が上昇すれば、国内バイサイドも日本国債に回帰するとの楽観的な見方もある。しかし、いったん流出したマネーが短期間に戻るのはそう簡単ではない。国内金融機関が最も困るのは、対処が難しい急激な金利上昇だ。

日銀の追加緩和は、マーケットにおいて今のところ「バズーカ」の異名にふさわしいインパクトをみせているが、その分、歪みや反動が大きくなるおそれもあるため、市場には慎重ムードも漂っている。

(伊賀大記 編集:北松克朗)

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