Reuters logo
日米TPP合意なく市場は失望、「第3の矢」の期待感後退
2014年4月24日 / 07:47 / 4年後

日米TPP合意なく市場は失望、「第3の矢」の期待感後退

[東京 24日 ロイター] - 日米間の環太平洋連携協定(TPP)交渉は合意に至らず、マーケットには失望感が広がっている。貿易拡大という直接的な効果への期待感後退よりも、米大統領来日という千載一遇のチャンスでありながら、抵抗勢力の「岩盤」を打ち崩せなかったことで、「第3の矢」である成長戦略への期待感が後退したという。短期筋だけでなく、海外の長期投資家の日本株に対する姿勢にも、変化があるかもしれないと警戒されている。

 4月24日、日米間の環太平洋連携協定(TPP)交渉は合意に至らず、マーケットには失望感が広がっている。写真は昨年12月、都内証券会社前で撮影(2014年 ロイター/Yuya Shino)

  <成長戦略や構造改革の実行に不安>

  「意味ある開放以外は、受け入れられない」──。オバマ大統領が安倍晋三首相との首脳会談後、TPPをめぐる日米交渉について強い口調で語ると、24日午後の市場では株安・円高が一段と進行した。

日米はTPPについて閣僚級協議を継続することで一致したが、長い交渉を経ても大筋合意には至らずじまい。日経平均.N225は一時1万4400円を割り込み、ドル/円JPY=EBSは102円台前半に軟化した。

交渉難航と伝えられていたために、事前にそれほど高い期待があったわけではない。直接的には、日経平均は前日23日の引け際の短時間に150円高まで上昇しており、その反動が出ただけとみられている。「イベントドリブン型のヘッジファンドが日米首脳会談を前に買いを入れ、TPP合意に至らなかったことで売りを出した」(国内証券)との見方がもっぱらだ。

ただ、マーケットの失望感は、値動き以上に大きいものがあるようだ。TPPに関しては「すぐさま日本の成長率を引き上げるわけではないが、岩盤規制などに真剣に取り組むという安倍政権の姿勢を海外に強くアピールすることができる」(大和証券・投資戦略部チーフストラテジストの成瀬順也氏)と、市場の期待は大きかった。人口減少で消費市場が縮む日本から海外に活路を見出すためにも、TPP合意は不可欠との指摘はエコノミストの間でも多い。

しかし、国賓待遇の米大統領来日という機会を今回、生かすことはできなかった。日本株売りはまだ限定的だが、三菱UFJモルガン・スタンレー証券・投資情報部長の藤戸則弘氏は短期売買中心のヘッジファンドだけでなく、年金など海外の長期投資家にも失望が広がる可能性があると警戒する。「これから米国は選挙の季節に入る。交渉はさらに難しくなるだろう。岩盤規制を破れず、構造改革も進まないとしたら、海外長期投資家も態度を変えるかもしれない」という。

<株高・円安が逆回転すればアベノミクスは窮地>

昨年の株高・円安は、直接的には海外投資家がもたらしたことに異論はないだろう。昨年15兆円、日本株を買い越した海外勢がアベノミクスに失望し、株売り・円買いを始めてしまえば、再び株安・円高時代に逆戻りしてしまうおそれがある。

通常は、企業業績が上昇して、株価が上昇するという流れになるが、今回は逆だ。大胆な金融緩和などによって株高・円安が進み、それが資産効果による消費増大と円安による輸出企業の業績拡大をもたらしている。

日本企業の製品開発力や販売競争力が上向くには時間がかかっており、実際、円安にもかかわらず、輸出数量は小幅な伸びのままだ。株高・円安が逆回転を起こせば、アベノミクスは立ち行かなくなる。

現時点での日経平均の予想PER(株価収益率)は14倍台前半と割高感はない。企業業績もすでに終了した14年3月期までは好調だ。株価が下落しても割安感に着目した買いも期待できる。

しかし、足元の企業業績の好調さは、多分に株高と円安によるところが大きい。「この前提が崩れれば、割安と言ってられなくなる」(国内投信・運用担当者)と投資家は警戒する。

国内主要生損保の14年度の運用計画が明らかになったが、国債を中心とする安全運用姿勢は変わらず、株式や外債などリスク資産シフトはまだわずかだ。個人投資家を含め、国内勢は海外勢による日本株売りの受け皿としては期待しにくい。

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)、NISA(少額投資非課税制度)、法人税減税などについて、マーケット参加者に株高への期待をもたせる当局者の発言が随所でみられているが、いずれもまだ実現に至ったわけではない。

さらに日本には消費増税という景気後押し政策とは逆向きの政策がある。現時点では大きな影響はみられていないが、賃上げが十分でない中では、可処分所得は確実に減る。

だからこそ、短期の需給対策ではなく、株高・円安の後押しがなくとも企業業績が持続的に拡大できるような成長戦略の策定が求められている。

だが、TPPをめぐり日米合意に至らなかったことで、その期待も大きく後退しようとしている。市場では「岩盤規制の堅さを感じた」(国内証券)との嘆息も漏れる。

「第3の矢」に期待ができないとすると、プレッシャーがかかるのは日銀だ。ただ、あすの4月東京都区部消費者物価指数(CPI)で、物価が順調に上昇していることが示されれば、追加緩和の根拠が問われかねない。さらに強引に追加緩和を実施して円安が進んだとしても、輸入物価上昇により、家計の負担は一段と重くなる。

実質金利の低下など期待できる材料も出ているが、コストプッシュ型のデフレ脱却では、すべてがよい方向に転がり始めると言い切れない。期待を背景にした株高・円安に依存してきたアベノミクスは、正念場を迎えている。

(伊賀大記 編集:田巻一彦)

私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」
0 : 0
  • narrow-browser-and-phone
  • medium-browser-and-portrait-tablet
  • landscape-tablet
  • medium-wide-browser
  • wide-browser-and-larger
  • medium-browser-and-landscape-tablet
  • medium-wide-browser-and-larger
  • above-phone
  • portrait-tablet-and-above
  • above-portrait-tablet
  • landscape-tablet-and-above
  • landscape-tablet-and-medium-wide-browser
  • portrait-tablet-and-below
  • landscape-tablet-and-below