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訂正-アングル:実需主導の円安、投機や投資は限定的 介入効果は期待薄か

(本文10段落目の上野氏のコメント中の「ドル売り」を「ドル買い」に訂正します。)

 足元の円安は実需が主導している可能性が大きい。投機的な円売りや海外の株や債券への投資は今のところ限定的であり、原油などの輸入増に対応したドル買いが需給的な円安要因になっているとの見方が多い。写真は円紙幣。都内で2013年2月撮影(2022年 ロイター/Shohei Miyano)

[東京 13日 ロイター] - 足元の円安は実需が主導している可能性が大きい。投機的な円売りや海外の株や債券への投資は今のところ限定的であり、原油などの輸入増に対応したドル買いが需給的な円安要因になっているとの見方が多い。実需主導であれば、より安くドルを買いたい輸入筋と高いドルを売りたい輸出筋の売買のタイミング差がさらに円安を加速させる可能性があるほか、ドル売り・円買いの為替介入が行われたとしても効果は小さくなるおそれがある。

<4週連続で減少した円ショート>

米商品先物取引委員会(CFTC)が10日発表したIMM通貨先物の非商業(投機)部門の取組は、6月7日までの週で、円の対ドルのネットポジションは9万1646枚のショート。足元の円安進行にもかかわらず、投機筋の円売りネットポジションは4週連続で減少した。

円安が急激に進んだのは3月に入ってからだ。円ショートは3月1日までの週は6万8732枚だったが、4月12日までの週に11万1827枚まで増えた。3月中の円安は投機的な動きも入っていた可能性があるが、円安が再び進み始めた5月末以降はむしろ減っている。

CFTCに表れる投機筋の売買動向は、為替市場全体の一部とみられており、投機的な動きがないとは言い切れない。しかし、アベノミクス初期にみられたような、投機筋による大規模な円ショートポジション構築は、同データを見る限り出ていない。

「投資の円安」も限定的だ。日本の投資家が外国の株式や債券を買えば、外貨買い・円売りを通じて円安要因になる。だが、財務省が発表する指定報告機関ベースの対外証券投資を見ると、機関投資家は売り越し基調を続けている。

<過去最高水準の輸入額>

この間、増えているのは貿易赤字だ。3月は4141億円、4月は8391億円。ロイターがまとめた民間調査機関の予測によると、16日に発表される5月の予想中央値は2兆0226億円の赤字だ。原油や石炭などの輸入が大きく伸びているほか、円安の影響もある。

貿易赤字は1日あたり数百兆円もの取引がある為替市場においては、それほど大きな額ではないが、為替市場参加者は、貿易収支を重視する。経常収支が黒字なのは所得収支のおかげだが、所得収支は海外で再投資される可能性がある。その点、貿易収支に伴う為替売買は一方通行であり、為替市場にインパクトを与えるとみる市場関係者は多い。

また貿易赤字は輸出と輸入との差し引きだ。同じタイミングで為替の売買が出るわけではない。輸入業者にとっては、ドルに先高観があるのならば、支払いのためのドルを早く購入した方がいいことになる。一方、輸出業者にとっては、ドル高基調が続くならば、稼いだドルを売るのはもっと先にするほうが有利だ。

輸入額は過去最高水準に膨らんでおり、3月は8兆8741億円、4月は8兆9154億円。5月は9兆2900億円程度が予想されている。輸出も円安効果で伸びており、3月は8兆4600億円。4月は8兆0762億円とこちらも記録的な規模になっているが、輸入のドル買い・円売りのタイミングが輸出よりも早ければ、円安を加速させる。

「日銀の黒田東彦総裁発言にドル/円が神経質に反応するのを見る限り、投機筋も参加しているようだ。CFTCの円ショートが減っているのは利益確定もあるだろう。ただ、足元の円安の動きと比較して、投機筋のポジションは膨らんでおらず、輸入業者のドル買い(訂正)が足元の円安を主導している可能性はある」と、ニッセイ基礎研究所のシニアエコノミスト、上野剛志氏は指摘する。

<難しい為替介入のタイミング>

円安進行により、海外投資家は以前より日本株を安く買うことができるようになっている。日本株を買ってくれれば、円を調達する必要が生まれ、円高要因になるが、円安がさらに進めば、海外勢にとって購入した日本株は目減りしてしまう。

2012─13年頃の「アベノミクス相場」初期は、日本経済への期待感が強まる中、円安による日本株投資収益の目減りを防ぐため、円売りと日本株買いを組み合わせる「ダブルデッカー取引」を行う海外投資家が多かった。

海外勢の日本株投資は5月後半から、ようやく増えてきた。年初からの売り越しをカバーするほどの規模ではないが、今後、「ダブルデッカー取引」が増えるかはドル/円の先行きを見るうえでも注目されそうだ。

しかし、足元はウクライナ情勢など不透明感が強いほか、インフレ高進で米利上げ加速も懸念されている。円を調達通貨にして投資するキャリートレードが増えれば円安要因となるが、投資家は本格的なリスクオンに動きにくい。

バンク・オブ・アメリカの5月ファンドマネジャー調査によると、平均キャッシュ比率は2001年の同時多発テロ以降で最も高くなったほか、株式の配分も2020年5月以降で最大のアンダーウエートに落ち込んでいる。

CFTCにおける約9万枚の円ショートの規模は小さくはない。ただ、実需主導の円安であれば、為替介入の効果は薄くなる可能性がある。実需はポジションを巻き戻したりはしないからだ。日本当局がドル売り・円買いの為替介入をすれば、輸入業者や投機筋はドルを安く買える好機と受け取るかもしれず、介入を行うにしても、そのタイミングは難しい判断を迫られる。

(伊賀大記 編集:石田仁志)

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