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分岐点迎えた「安倍トレード」、海外勢の円売り・日本株買い急減

[東京 8日 ロイター] - 海外勢の円売り・日本株買いポジションが急減している。今年分の日本株は売り越しに転じ、円ショートももうわずか。いわゆる「安倍トレード」は分岐点を迎えている。世界的なリスクオフが強まるなか、新たなステージに入るのか、それとも巻き戻しが入るのか。

 9月8日、海外勢の円売り・日本株買いポジションが急減している。今年分の日本株は売り越しに転じ、円ショートももうわずか。いわゆる「安倍トレード」は分岐点を迎えている。写真は東証。8月撮影(2015年 ロイター/Yuya Shino)

市場には、安倍政権による新たな政策対応への期待感も広がり出した。

<来年の円高予想が浮上>  

ヘッジファンドが得意としてきた「ダブル・デッカー(2階建て)」と呼ばれる取引手法がある。日本株(特に日経平均)ロングと円ショートの組み合わせで、2012年11月半ば以降の円安・日本株高、いわゆる「アベノミクス相場」をけん引してきた。

全盛期は2013年ごろだったが、その後も円安・株高のパターンは続き、今年6月までに、日経平均.N225を8660円から2万0950円(2.4倍)に、ドル/円JPY=EBSを80円から125円(56%上昇)まで押し上げた。円安で企業業績が回復、株価も上昇するという見立てに基づくこの取引手法は、大成功したといって良いだろう。

だが、ある外資系証券エコノミストによると、来年、円高相場への転換を予想する海外投資家が増えてきているという。最近の世界的なリスクオフ傾向に加え、日本の貿易収支が黒字に転じるなど円安材料が減少。経済界や政界から、これ以上の円安に批判的な声が増えていることも「潮目」の変化を感じさせると話す。

投機筋のポジションの一部を表す、米商品先物取引委員会(CFTC)のIMM通貨先物の非商業(投機)部門の取組では、9月1日までの対ドルでの円ショートポジションは1万5555枚に減少。今年4月に一度5493枚まで縮小したことがあるが、「アベノミクス相場」で円買い越し(ロング)になったことはない。

大和証券・チーフ為替アナリストの亀岡裕次氏は、世界景気減速が強まれば、投機筋の円ロングポジションが定着する可能性があると指摘する。「リスクオフの円買い手法は、廃れていない。向こう1年でみれば、ドルは115円を割り込み、110円に近づく場面もありそうだ」という。

<13年の15兆円に手を付けるか>

「1ドル110円程度の円高にとどまるなら、日本企業や日本経済への影響は限定的」とHSBC(香港)の日本担当エコノミスト、デバリエいづみ氏はみる。ただ、110円を割り込むような円高が進めば、輸出企業を中心に業績を圧迫、設備投資などが伸びなくなり、日本経済にも悪影響を与えかないという。

今のところ海外勢の日本株売りは、グローバルなリスクオフの一環だ。日本株売りの一方で、「安全資産」とされる円債買いの構図が鮮明となっている。海外勢の8月の対内株式投資は2011年8月以来となる1兆4203億円の売り越しだったが、対外債券(中長期債)投資は、14年9月以来となる1兆4078億円の大幅買い越しとなった。

しかし、円高が大きく進むような場合は、日本株自体のウエートを引き下げる動きが強まりかねない。海外投資家は8月の2─4週で現物株と先物を合わせて計3兆6850億円を売り越し、年初からのトータルで売り越しに転じた。2014年は6967円の買い越し、13年は15.6兆円を買い越しており、今後はこれに「手を付ける」かが焦点になる。

13年の15兆円の買いは、海外勢がそれまでの日本株のアンダーウエートを修正したものとみられている。そこに手を付けるというのは、グローバル投資家の株式全体のリスク量が13年よりも減ってきたことを示している可能性もあるが、アベノミクスに対する見方が、ネガティブに変わった(再びアンダーウエート)ことを意味するかもしれない。

<高まる政策期待>

一方、海外勢の日本株売りも「そろそろ8合目」(国内証券)との見方もある。11日のメジャーSQ(特別清算指数)算出を機に一巡する可能性が大きいという。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券・投資情報部の藤戸則弘氏は「安倍晋三首相は自民党総裁選で無投票再選を果たした。株高を旗印にしてきた安倍内閣にとって、これ以上の株安は看過できないだろう。財政、金融の両政策で株安・円高を阻止する可能性がある」とみる

安倍首相は8日、自民党総裁選への立候補にあたって、今後も「経済最優先」で取り組むことをあらためて示したが、景気の現状は弱々しい。

4─6月期国内総生産(GDP)2次速報は上方修正されたが、在庫増加が主因で中身はむしろ悪化。8月景気ウォッチャー調査では、現状判断DIが横ばいを示す50の水準を7カ月ぶりに下回った。日経平均は8日に1万7427円まで下落、年初来マイナス圏に落ち込んだ。

これまでと同じような政策の繰り返しで日本経済を立て直すことができるかはともかく、市場の政策期待は徐々に高まってきている。

(伊賀大記 編集:田巻一彦)

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