Reuters logo
日本企業「最高益」の裏側、四半世紀伸びない売上高
May 28, 2015 / 3:22 AM / 3 years ago

日本企業「最高益」の裏側、四半世紀伸びない売上高

[東京 28日 ロイター] - 日本株高の背景に、国内企業の業績改善があるのは間違いない。上場企業の利益は過去最高を更新した。しかし、売上高の伸び率は上場企業数の増加ペース並み。1社あたりの売上高は1989年のバブル時とほぼ変わらない。

 5月28日、株高の背景には国内企業の業績改善があるが、売上高の伸び率は上場企業数の増加ペース並み。1社あたりの売上高は1989年のバブル時とほぼ変わらない。都内のビジネス街で3月撮影(2015年 ロイター/Yuya Shino)

利益を3倍近くに押し上げたのは、コスト低減や金利低下、税負担の軽減など。日本企業は「筋肉質」になってはきたが、本来の利益の源泉であるキャッシュを稼ぐ力がついたのか、断定できない要因が数多くある。

<最終利益に近づくほど高まる増加率>

株高を裏付ける「利益」は、確かに増えている。みずほ証券リサーチ&コンサルティングが集計した東証1部上場企業の純利益は、1989年度の10.1兆円から2014年度の30.5兆円に3倍化し、過去最高益を更新した。

上場企業の数も1160社から1882社に62%増加しているが、利益の増加ペースはそれ以上だ。発行株が32%しか増えなかったこともあって、東証1部上場企業の1株当たり利益は実績ベースで88円と当時(40円)の2倍以上となっている。

こうしたデータを根拠にすれば、今の株高に何ら問題はないと言い切ることが出来そうだ。だが、その利益の中身を吟味すると、小首を傾げたくなる。

利益の源泉であるべき売上高。東証1部企業全体の売上高は、89年度の419.8兆円から702.2兆円と67%の増加。銘柄数の増加率とほぼパラレルだ。1社あたりにすれば3615億円から3731億円で25年間で3.1%の増加にすぎない。

一方、利益面は急増している。営業利益(金融機関を除く)は17.6兆円から39.2兆円と2.2倍。経常利益は21.8兆円から50.6兆円と2.3倍、純利益は3倍化と最終利益に近づくに従い、増加率が高くなっているのが特徴だ。1社あたりの純利益をみても、87.5億円から162.4億円と倍化した。

<1社あたりの売上高は減少>

利益率の高い製品やサービスにシフトし、利益率が高まっているのであれば評価もできる。しかし、法人企業統計などを見る限り、この利益を生み出しているのは、本業の収益力とは別な要因の寄与度が大きい。

法人企業統計で、2013年度までのデータから、資本金10億円以上の企業(金融・保険除く、以下同じ)を抽出すると、1989年度で3414社、2013年度で5156社と、東証1部企業に比べ多いが、売上や利益の傾向はほぼ同じだ。

1989年度に比べ、2013年度は資本金10億円以上の企業が51%増加したが、売上高は17.2%しか増えなかった。1社あたりの平均売上高は1398億円から1085億円と減少している。伸びない売上高という傾向は、ここでも変わらない。

一方、純利益は2.78倍と同じく急増。利益を膨らませたのは何か──。

<本業上回る営業外損益の寄与度>

極めて大きい影響をもたらしているのが、営業外損益だ。1989年度に比べて経常利益は約16.6兆円増加したが、そのうち営業利益の寄与度は7.3兆円。営業外損益では、利益が計9.2兆円増加し本業の改善度を上回った。

営業外損益を分解してみると、営業外利益は2.9兆円(1989年度比29.3%増)の増加。海外展開を進めたことで海外子会社からの配当が増加しているとみられる。日本企業のM&A(合併・買収)をみると、昨年は海外の比率が国内を抑えて50%を超えている。財務省の国際収支統計によると、海外現地法人からの配当・利子など直接投資収益は14年に6.5兆円と過去最高を記録した。

営業外費用は6.3兆円(同52%減)減少と営業外利益の2倍超の規模で利益増に貢献している。

借入金は136兆円から170兆円に増加(1社あたりは399万円から331万円に減少)したものの、利子率は5.6%から2.2%低下したおかげで、支払利息等は10兆円から4.7兆円と半分以下になった。日銀の低金利政策が効いているといえる。

さらに法人税など税金が1.3%減少している。税引き前当期利益が90.5%増えているにもかかわらずだ。各種減税措置のほか、赤字を出した場合、その赤字を9年間にわたって繰り越し、利益と相殺することができる制度も影響しているとみられる。

また、第一生命経済研究所・首席エコノミストの熊野英生氏は「海外子会社からの配当が増加しており、営業外利益が増えている。海外子会社からの配当には税金もかからないので、税負担が軽くなっているのではないか」と指摘している。

<生産性の伸びはわずか>

本業はどうか。労働生産性は従業員1人当たりの付加価値額によって表される。付加価値額は人件費、支払利息等、動産・不動産賃借料、租税公課、営業純益の合計だ。法人企業統計でみると、1989年度は1126万円。2013年度は1231万円とやや改善しているが、伸び率は24年間で9.3%。2007年度に付けたピーク1363万円にも達していない。売上高営業利益率は4.27%から4.96%と改善はわずかだ。

1社あたりの従業員数は、1858人から1437人に減少。平均人件費も131億円から98億円に減り、1人あたりの人件費は705万円から685万円と縮小した。人員削減などコストを低減したうえでの利益上積みだったことがわかる。

コスト低減と営業外損益の改善、そして税金負担の軽減がメーンの増益理由では、日本企業が真の収益力をつけたとはえいないだろう。さらに足元では円安要因も大きい。2012年11月14日に80円だったドル/円JPY=EBSは120円を突破し、50%以上円安が進んだ。大和証券の試算(3月時点)によると、対ドルで1円、円安が進めば主要企業の経常増益率を約0.6ポイント押し上げる。

「企業業績が今、伸びているのは円安による効果が大きい。円安が止まってしまっては増益ペースが鈍るおそれもある」(ニッセイ基礎研究所・チーフ株式ストラテジストの井出真吾氏)という。

東証1部の時価総額が1989年のバブル時を超えて過去最高となったのは、上場企業数が6割も増えたことが大きいが、その背景には資本金10億円以上の会社も6割増えたことがある。日本企業のスケール感がアップしたことは素直に評価していいだろう。

しかし、個別企業はともかく、マクロ的にみて、日本の製品がどんどん売れたり、内需が拡大することによって、利益が伸びているという構図とは異なる。すべてをひっくるめて「稼ぐ力」がついたと評価することもできるが、楽観は禁物だ。

(伊賀大記 編集:田巻一彦)

*見出しを修正しました。

0 : 0
  • narrow-browser-and-phone
  • medium-browser-and-portrait-tablet
  • landscape-tablet
  • medium-wide-browser
  • wide-browser-and-larger
  • medium-browser-and-landscape-tablet
  • medium-wide-browser-and-larger
  • above-phone
  • portrait-tablet-and-above
  • above-portrait-tablet
  • landscape-tablet-and-above
  • landscape-tablet-and-medium-wide-browser
  • portrait-tablet-and-below
  • landscape-tablet-and-below