June 29, 2015 / 7:42 AM / in 4 years

銀行休業の「毒薬」飲んだギリシャ、日本に円高・株安の波及

[東京 29日 ロイター] - 週明けの日本市場は、リスクオフが一気に広がった。ギリシャ支援問題が暗礁に乗り上げ、中国株は追加緩和後も乱高下が止まらない。ギリシャの銀行休業は「毒薬中の毒薬」の政策とされ、デフォルト(債務不履行)からユーロ離脱に至るシナリオが急浮上。

 6月29日、週明けの東京市場ではリスクオフが一気に拡大。ギリシャの銀行休業は「毒薬中の毒薬」の政策とされ、デフォルト(債務不履行)からユーロ離脱に至るシナリオが急浮上している。アテネのナショナル・バンクで撮影(2015年 ロイター/Yannis Behrakis)

ヘッジファンドなどによる資金巻き戻しの動きから、円高・株安・債券高の「質への逃避」が進んでいる。

<銀行休業は「毒薬中の毒薬」>  

銀行休業は「毒薬中の毒薬」の政策と言われる。金融システムがストップすることで経済がまひ。資金の流出を防ぐどころか、国民の不安をあおり、資金の流出に歯止めがかからなくなる恐れが強まるからだ。

ギリシャが求めていた金融支援の延長をユーロ圏の財務相が拒否したことを受け、ギリシャのチプラス首相は28日、国内銀行の休業と資本規制導入を発表した。銀行は7月7日に業務を再開を予定しているが、それまでの間、銀行ATMからの現金引き出しは1日当たり60ユーロに制限される。

「銀行が再開すれば、富裕層はギリシャから海外に資金を逃避させるだろう。銀行閉鎖が長引けば長びくほど、経済回復が遅れる。銀行閉鎖は毒薬中の毒薬だ」と、ニッセイ基礎研究所・チーフエコノミストの矢嶋康次氏は話す。

今後は、銀行が営業再開するまでに、国民が安心して銀行に預金を再び預けようという政策を打ち出せるかがポイントだ。1930年代の世界恐慌時、米国も4日間の銀行休業(バンク・ホリデー)を行ったが、緊急銀行救済法を成立させ、預金保護の姿勢を打ち出し、パニックを防いだ。

<懸念はデフォルトよりユーロ離脱>

5年にわたる財政危機問題で、海外の多くの民間投資家はギリシャ国債などから資金を引き揚げている。サブプライム商品が、どの証券化商品のなかに隠され、どこにリスクが存在するかわからなかったリーマン・ショックのときとは異なる。デフォルト自体による世界経済へのインパクトは、限定的との見方が多い。

日本の約3分の1の土地に約1100万人が暮らすギリシャ。実質国内総生産(GDP、2013年)は1610億ユーロ(約21兆円)と日本の約23分の1だ。ギリシャ経済が急減速しても、世界経済に与えるネガティブな影響は大きくはない。

市場が心配するのは、ギリシャのデフォルトよりもユーロ離脱だ。7月5日の国民投票で、ギリシャ国民が緊縮策を拒否すれば、1999年のユーロ成立以来、初の離脱が現実味を帯びる。他国が追随する可能性が市場で意識され、経済規模が小さいからといって影響は限定的とはいかない。ユーロという共通通貨圏の存続意義を問われることになるためだ。

JPモルガン・アセット・マネジメント、グローバル・マーケット・ストラテジストの重見吉徳氏は、ギリシャ国民、ユーロ側ともに望んでいない離脱の可能性は低いと予測する。しかし、離脱が現実になれば、世界的なリスクオフが起きかねないと警戒する。「ユーロやEUへの信頼がき損され、ユーロやEUの存立自体に不透明感が強まる」という。

さらに軍事的な要衝でもあるギリシャがユーロを離脱し、ロシアとの関係を強めれば、財政問題とは別の地政学リスクが浮上しかねない。

<アベノミクス相場も正念場>

日経平均.N225を前週、18年ぶり高値に押し上げたのは「ヘッジファンドなど足の速い資金が中心」(米系証券トレーダー)との見方がもっぱらだ。リスクオフモードになれば、日本株だけが例外というわけにはいかないだろう。日経平均終値は29日の市場で596円安と今年最大の下落となった。

株安の一方で金利は低下(債券価格は上昇)。週明けの米債先物が急上昇した流れを引き継ぎ、日本でも10年長期金利JP10YTN=JBTCが一時0.430%まで低下した。足元のマーケットの「モード」は、株安と債券安が同時に起きるグローバル金融相場の逆回転ではなく、「安全資産」に資金がシフトする典型的なリスクオフ相場だ。

円安を原動力とした企業業績拡大への期待は根強く、下値では押し目買いが入るとの見方は多い。1ドル120円程度をキープできれば、今期の2016年3月期は15─20%増益が期待できるとみられている。しかし、このままリスクオフモードが強まれば、円買いの勢いが一段と強まる可能性もある。

欧州を最大の輸出先とする中国では、株安が止まらない。中国人民銀行(中央銀行)は27日、追加緩和を発表したが、29日の上海総合指数.SSECは7%を超える下落となった。株安阻止の姿勢を打ち出したとの受け止めもあるが、経済がそれほど悪いのかと、ネガティブな見方が広がったためだ。

その中国を最大の輸出先とするのが日本だ。5月鉱工業生産は前月比2.2%低下。事前予測調査の0.8%を超える大幅なマイナスとなった。インバウンド消費で内需が堅調とはいえ、円安が止まり、輸出が伸びず、生産が停滞すれば、企業業績の先行きにも暗雲が立ち込める。

ギリシャの「毒薬」がめぐりめぐって日本にも回るのか。「アベノミクス相場」も正念場を迎えている。

(伊賀大記 編集:田巻一彦)

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