June 24, 2016 / 11:03 AM / 2 years ago

焦点:英EU離脱に市場大混乱、「リーマン」と異なる波及経路に警戒

[東京 24日 ロイター] - 英国の国民投票で、欧州連合(EU)離脱派が勝利し、市場は大きく動揺している。警戒されているのは「リーマン・ショック」とは異なる経路で金融危機に発展する可能性だ。

 6月24日、英国のEU離脱派が勝利し、市場は大きく動揺している。警戒されているのは「リーマン・ショック」とは異なる経路で金融危機に発展する可能性だ。都内の外為取引会社で撮影(2016年 ロイター/Issei Kato)

EU離脱の他国への波及や金融機関の信用不安など、どういった「連鎖ルート」をとるか読みにくいだけに、市場では安全志向のリスクオフの動きがしばらく続くとみられている。

<国民投票は「究極の不透明要因」に>

国民投票を予想する難しさを今回、市場関係者は改めて痛感することになった。23日に行われた英国のEU離脱に関する国民投票では離脱派が勝利。直前の世論調査やブックメーカーの賭け率とは異なる結果に、残留を織り込んでいた市場は大混乱に陥った。

日経平均.N225は一時1300円以上急落、ドル/円JPY=は一時99円ちょうどまで7円を超す円高となった。10年債利回りJP10YTN=JBTCはマイナス0.215%と過去最低を更新するなど「安全資産」への逃避が進んでいる。

この「究極の不透明要因」とも言える国民投票が今後、相次いで行われる可能性が高まっている。イタリアは10月に憲法改正案を国民投票で問う見通し。フィンランドやオランダでも行われるとの見方もある。英国のEU離脱派の勝利で、スコットランドでも再び独立に関する国民投票を求める動きが強まりかねない。

双日総合研究所チーフエコノミストの吉崎達彦氏は、政治家への信頼感が低くなっていることが国民投票が増える背景と指摘する。「米国でのトランプ旋風もそうだが、雇用や賃金への中低所得者層の不満が、国民投票を求める声に結び付いている」という。

国論が二分するような重要な判断でこそ、国民投票が行われるのだが、現状への不満が背景にある中では、今回の英国のように、現体制の否定につながるおそれが強まる。金融市場では「政治リスクがあるうちは、積極的な投資は難しい」(JPモルガン・アセット・マネジメントのストラテジスト、重見吉徳氏)との見方が台頭している。

<警戒すべきは「広がり」>

金融システムへの波及も、2008年に起きた「リーマン・ショック」とは異なるルートで起こる可能性がある。

「リーマン・ショック」の原因はサブプライム・ローンという特定の金融商品だった。今回は1つの国の問題であり、何か特定の金融商品がバブル崩壊的な値崩れを起こしたわけではない。企業や家計のバランスシートも当時と比べて、少なくとも表面上は健全だ。

しかし、グローバルマーケットの中心である英国の問題は1国の問題とかたずけられない。金融市場の「ハブ」を新たに探さなければならないということだけではなく、世界中のマネーの仲介役となっていた英国の銀行に懸念が及ぶためだ。

英国債が格下げされれば、英銀行の格付けも引き下げられる。英国の銀行格付け(S&P)は大手でAからBBBと大半が低い。英国の銀行が発行している債券は約70兆円と推計されているが、日本を含む世界中の投資家が投資しており、債券価格が下落すれば影響はグローバルに拡散する。

マネックス証券チーフ・アナリストの大槻奈那氏は、今回警戒すべきは、その「広がり」だという。「リーマン・ショックはサブプライムという1つの商品の問題の深化の過程で起きた。今回は、英銀行からグローバル市場に、EU離脱が英国から他国に、広がりかねないだけでなく、ギリシャ問題も再燃しかねない」と話す。

<期待薄の政策対応効果>

もちろん世界の政府や金融当局も手をこまねいているわけではない。主要7カ国(G7)は、市場の鎮静化に向けた緊急声明を出す方向だ。日銀など中央銀行も、中央銀行間のスワップ取り決めを活用し、流動性供給に万全を期する。

しかし、こうした従来の対応が効果を発揮できるかは不透明だ。サブプライム問題発生時にも、世界的な流動性供給が行われたが、金融危機は起きてしまった。当時は、中国の4兆元投資が救いになったが、同国は過剰設備という後遺症を今も引きずっている。

金融緩和や財政出動には期待できないとの声も多い。シティグループ証券チーフエコノミストの村嶋帰一氏は「景気減速を止める手段を日銀はもはや持ち合わせていない。財政出動の効果が出るにはタイムラグがある。金融市場が実体経済に与える影響次第では日本経済は大きく減速する可能性がある」と話す。

ある米大手ファンドの運用担当者は、英国民投票に向けて特にポジションを傾けていなかったと明かす。「影響がどう出るのかこれから見極めたうえで投資を行っていく」という。市場には「ブレグジット・ショック」とも言える衝撃が広がっているが、「何十年に1度」(村嶋氏)という影響の大きさを考えるならば、短期間で終息しない可能性は大きい。

(伊賀大記 編集:石田仁志)

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