June 10, 2015 / 9:03 AM / 4 years ago

米運輸株が「分岐点」接近、金融相場の本格調整に警戒も

[東京 10日 ロイター] - 米国の運輸株指数.DJTが、本格調整入りを示唆する10%下落水準に接近してきた。米株の先行指標として知られており、市場では警戒感が強まっている。ドイツDAX.DAXは直近高値から11%下落し、日経平均.N225も3%調整。米利上げ観測が強まる中、グローバル金融相場が本格的に変調をきたすのか。市場関係者の緊張感も次第に高まってきた。

 6月10日、米国の運輸株指数が、本格調整入りを示唆する10%下落水準に接近してきた。ニューヨーク証券取引所で撮影(2015年 ロイター/Brendan McDermid)

<先行性はいまだ健在>

ダウ・ジョーンズ運輸株指数は、フェデックス(FDX.N)やサウスウエスト航空(LUV.N)など陸運や空運20社の平均株価。ダウ理論では、工業株など主要指数が最高値を付けた場合、その上昇は輸送株の同様の上昇により確認されなければならない。運輸株が伸び悩めば、相場変調の兆しとされる。

しかし、運輸株指数は昨年12月29日に終値ベースで過去最高値(ザラバでは同年11月28日)を付けてから下げ始め、前日までの下落率は9.87%。テクニカル的には下落率が10%を超えると本格的な調整入りとされる。

「分岐点であり、強気相場継続であれば10%ギリギリで反発することもあるが、割り込めば、弱気局面入りを示唆することになるひとつの攻防ライン」(みずほ証券・エクイティ調査部シニアテクニカルアナリストの三浦豊氏)という。

ダウ理論が構築された19世紀後半と比べ、米国の経済構造もサービス型に変わり、運輸株の先行性が低下していることは否めない。だが、ダウ平均株価の開発者でもあるチャールズ・ヘンリー・ダウ氏が唱えた理論を、過去の経験則を重視する市場参加者が依然として意識していることは確かだ。

実際、米ダウは5月19日に過去最高値を付けたが、昨年12月29日からの変化率でみればマイナス1.5%(9日時点)。直近高値からは約3.1%下落しており、運輸株の先行性は今のところ今回も維持されている。このため、市場では「米運輸株が10%を超えて下落すれば、米株全体も本格的な調整に入る可能性がある」(米国在住の大手証券ストラテジスト)との警戒感も大きい。

<業績相場への移行期間>

運輸株に先行性があるのは、荷動きや人の移動が景気に先行するためとみられている。ただ、今回に関しては、米運輸株の下落が米景気の変調を示唆しているかは、慎重に見る必要がありそうだ。

米航空会社はこれまで輸送能力の削減を進め、利益率の向上を優先してきたが、ここ数週間に、デルタやサウスウエスト、アメリカンなどが相次いで、保有機数拡大や座席数の増加計画を発表している。運輸株のうち、航空関連株は業界内の悪材料が株価下落を促している可能性もある。

さらに、世界的な貿易自体が鈍化している可能性もある。グローバル企業は消費地での現地生産化を進めており、貿易量の鈍化が景気の鈍化とは必ずしもイコールではなくなってきている。中国など新興国経済の減速は懸念要因だが、世界経済はリセッションを警戒させるほど悪いわけではない。

市場予想を上回る改善をみせた5月米雇用統計によって、米利上げ観測が市場で広がったように、米連邦準備理事会(FRB)が利上げ時期を探るのも景気が良くなってきたからだ。金融相場の変調は業績相場への移行期間とみることもできる。

「統計的には流動性相場もその巻き戻しも、それほど長続きはしない。米国の景気が順調に拡大していくなら、荒れる展開がしばらく続くとしても、株高と金利上昇が同時に進む業績相場にいずれ移行するだろう」とJPモルガン・アセット・マネジメントのグローバル・マーケット・ストラテジスト、重見吉徳氏は指摘する。

<本格調整なら日本株に影響も>

一方、日経平均も10日の市場で一時2万0016円まで下落し、大台割れに迫った。ただ、5月28日に付けた15年ぶり高値2万0655円33銭からは約3%の下落にとどまっている。10%下落なら1万8590円となるが、まだかなり余裕がある。

日経平均は4月下旬にも一度、調整したが、約1000円の下落で終わった。今回、同じだけ下げたとしても1万9650円水準。「押し目を買いたい海外ロング勢は少なくない」(大手証券トレーダー)とされ、本格的な押し目形成とはならない見方もある。

T&Dアセットマネジメント運用統括部長の山中清氏は「調整は一時的とみている。足元の為替水準なら国内企業の競争優位性が維持され、堅調な企業業績が日本株を支える」と話す。

しかし、海外市場が本格調整に入れば、日本株も影響を受けざるをえないだろう。これまで日本株の買い主体は圧倒的に海外投資家だ。5月第3・4週だけで約1兆7000億円を買い越している。日本株の魅力が落ちないとしても、海外株が下落すれば、これまでもウエート調整の売りが日本株にも波及してきた。

ドイツのクセトラDAX.DAXは4月10日に付けた過去最高値から、前日まですでに11.2%下落。金融相場をリードしてきた一部の株式は、本格調整入りのめどとなる10%を超えている。

東南アジアなど新興国の株式市場ではインドネシア.JKSEが4月の過去最高値から前日まで11%下落。フィリピン.PSIが同じく4月の過去最高値から9.9%下落となっている。

「米利上げで一番影響を受けるのは、新興国市場だろう。過去何度かのシミュレーションを経てきたとはいえ、経常赤字などファンダメンタルズの弱い国からの資金流出の懸念は残る」とHSBC証券東京支店・グローバル・マーケッツ債券営業本部マクロ経済戦略部長の城田修司氏は話している。

(伊賀大記 編集:田巻一彦)

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