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アングル:仮想通貨、リスク許容度低下でさらなる乱高下は必至

[ニューヨーク 11日 ロイター] - 投資家は、ビットコインなど暗号資産(仮想通貨)の価格変動がより激しくなる局面に備えている。背景には、米連邦準備理事会(FRB)のタカ派的姿勢が金融市場全体のリスク許容度を低下させてしまうのではないかとの懸念がある。

2月11日、 投資家は、ビットコインなど暗号資産(仮想通貨)の価格変動がより激しくなる局面に備えている。写真は仮想通貨のイメージ。2021年10月撮影(2022年 ロイター/Edgar Su)

本来的に価格が乱高下しやすい仮想通貨だが、最近は不安定の度合いが顕著だ。取引額が仮想通貨で最も大きいビットコインは、1月24日以降で約33%上昇して足元は4万3850ドルで推移しているものの、その前に昨年11月の過去最高値から価格が半分に急降下する場面があった。もう1つの主要仮想通貨であるイーサも、11月の最高値4868ドルから56%近く値下がりした後、1月24日以降に45%上がって3200ドル前後で取引されている。

こうした荒っぽい値動きは、FRBの引き締め積極化をにらんだ投資家の持ち高調整により、市場全体が下げる中で起こった。FRBはインフレを抑えるため年内に最大で7回利上げするとの見方が広がり、S&P総合500種は年初来で5.5%、ナスダック総合は9.3%下がった。

FRBの前のめりの利上げがリスク資産の足を引っ張るとの懸念から、一部のトレーダーはビットコインなど仮想通貨に対する強気見通しを維持しづらくなっている。

OANDAのシニアアナリスト、エド・モヤ氏は、ビットコインは「究極のモメンタム取引対象となっており、いきなり40%の値下がりを誘発するようなリスクがたくさんある」と指摘した。

ビットコインの振れがこれほど大きくなってもなお、適正価格や重要な節目となる価格を見定めようとする市場関係者もいる。

JPモルガンは、インフレや経済の不確実性をヘッジするために利用される金とのボラティリティ比較に基づき、ビットコインの現在の適正価格は3万8000ドル前後だと推定する。これは足元の水準より15%程度低い。

一方、バンダ・リサーチは最近のノートで、ビットコインの一段安で収益を得ようとする売り持ちポジションのほとんどが4万7000ドル付近で構築されたので、実際の価格がこの水準を突破し、個人投資家が仮想通貨取引に戻ってくれば、大規模なショートスクイーズ(売り持ちの買い戻し)が起きる可能性があるとの見方を示した。

BofAグローバル・リサーチのデータによると、ビットコインとS&P総合500種の相関性は1月31日にこれまでで最も高くなった。つまり、株価の不安定な動きから運用資産を守るためにビットコインが使えると期待していた市場参加者は、当てが外れた格好だ。

一方、投資家の間では、ブロックチェーン技術が持つ長期的な価値、供給量に制約があるビットコインの構造、ビットコインが生み出すネットワーク効果に賭けることで、ビットコインのボラティリティ・リスクを乗り切ろうとする動きも出ている。

フィデリティのグローバル・マクロ担当ディレクター、ジュリアン・ティマー氏は、仮想通貨を巡る現在の投機を、20年余り前のハイテクバブル時代に重ねた上で、当時はバブルがはじけた後に比較的少数の企業だけが生き残ったと説明。「アマゾンやアップルは今も存在し、しかもかつてないほど巨大化している。ビットコインにも同じ考えが適用できる。ただ、投機や市場心理の波に影響を受けないわけではない」と述べた。

ティマー氏によると、同氏の需給モデルに照らせばビットコインは早ければ来年には10万ドルの大台に乗る可能性があるという。

ビットコインやイーサのような成熟した仮想通貨は、創出されてからこれまでに記録してきた目を見張るような大幅な値上がりはもう実現しそうにないとの声も聞かれる。そうした見方をする市場参加者は、メタバースやNFTなど、仮想空間に流れ込む資金を取り込むために生み出された新たな仮想通貨に目を向けつつある。

ムーディーズ・アナリティクスの計量調査戦略ディレクター、リリー・フランカス氏は、これらの新仮想通貨や脱集権化金融に関連するリスクを理解することが、投資家にとって今年の主要課題の1つになると主張。仮想通貨は「今後も非常に振れが大きいままだろうが、機関投資家と個人の双方で相当数の市場参加者が存在し、しかも増え続けている以上、引き続き関心も高まっていく」という。

(John McCrank記者)

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