September 20, 2019 / 11:33 PM / in 25 days

アングル:暗号通貨、キューバ制裁包囲網に「風穴」開けるか

[ハバナ 12日 ロイター] - ハバナで携帯電話修理ショップを営むジェイソン・サンチェスさん(35)は、昨年からオンラインで修理用スペアパーツを調達できるようになった。共産主義体制下のキューバで、暗号通貨の取引が始まったおかげだ。

9月12日、ハバナで携帯電話修理ショップを営むジェイソン・サンチェスさんは、昨年からオンラインで修理用スペアパーツを調達できるようになった。写真は5日、ハバナでキューバ初の暗号通貨取引所」を自称する「フシオナ」のサイトを開くサンチェスさん(2019年 ロイター)

多くの点で依然としてアナログ時代を引きずっているキューバで、取引の安全性確保のために暗号化技術を用いるデジタル貨幣、つまり暗号通貨(暗号資産)がブームになるというのは、およそ考えにくい話かもしれない。

だが、1年近く前にモバイル機器によるインターネットが普及し始めたことにより、暗号通貨取引への道が開け、熱心な利用者が急激に増加した。暗号通貨を使えば、米国の対キューバ制裁による障壁を乗り越えやすくなるからだ。

数十年に及ぶ米国の対キューバ禁輸措置によって、キューバ国民は通常の国際決済システムと金融市場から締め出されている。彼らが国際的に利用できるクレジットカードやデビットカードを国内で入手することはできないし、海外でも難しい。

そこで、サンチェスさんのようなキューバ国民は、オンラインでの購入や投資、取引のためにデジタル通貨を購入するようになっている。ほとんど何の規制もないし、分権化され、匿名性が高い。

「暗号通貨のおかげで、まさに我々にとって新しい扉が開いた」とサンチェスさん。彼はキューバ国内で新品が入手できないパーツを中国系のオンラインショップで購入するのに、もっとも名の通った暗号通貨であるビットコインを利用している。

キューバの人々が暗号通貨に関する議論や取引を行っているメッセージングアプリ「テレグラム」上のチャンネル「キューバクリプト」の開設者アレックス・ソブリノ氏は、キューバ国内の暗号通貨利用者は約1万人と推定しているという。

「私たちは携帯電話の利用料チャージやオンラインでの購入のために暗号通貨を使っている。ホテルの予約に使う人さえいる」とソブリノ氏は言う。33歳の彼は、家族経営のパン製造業の傍ら、副業として暗号通貨の取引を行っているという。

もちろん、カリブ海に浮かぶ人口1120万人のキューバにおいて、近い将来デジタル通貨が主要な決済手段になる可能性は低いだろう。

暗号通貨の取引は、キューバの法律上、依然としてグレーな領域である。

またキューバ国民のほとんどはクレジットカードを保有していないため、多くは暗号通貨を最初に入手する際には海外で暮らす親戚に購入してもらうか、「キューバクリプト」のようなソーシャルメディア上のコミュニティ内で購入するしかない。「キューバクリプト」の会員数は400人以上だ。

多くの場合、こうした取引は双方の当事者が直接顔を合わせて行われる。購入側は現金を手渡し、売却側はその取引をノートパソコンや携帯電話上で決済する。

サンチェスさんは、ブラジルのスタートアップ企業を通じてビットコイン(現在1BTCは約1万ドルで取引されている)を、1単位のほんの数分の1購入した。この企業は、暗号通貨の購入をよりビジネスライクに行うことを目的として、1年前にキューバ出身者が設立したものだ。

<キューバ初の暗号通貨取引所>

「キューバ初の暗号通貨取引所」を自称する「フシオナ」は、キューバへの送金を望む海外在住者の外貨(ハードカレンシー)を預かり、もっと大規模な取引所を介して9つの主要暗号通貨のどれかに投資する。

それから、暗号通貨への投資を望むキューバ在住者のペソを受け取り(投資の最低単位は150ドル相当)、預かった送金の支払いに充当する。このウェブサイトを利用する際の手数料は最大で10%、現時点でユーザー数は約1300人である。

「外国人にとって、暗号通貨は選択肢の1つでしかない」と創業者のエイドリアン・C・レオン氏は言う。レオン氏は31歳、リオデジャネイロで活動するキューバ出身のコンピューター科学者だ。

「しかしキューバ国民にとって暗号通貨は必要不可欠であり、グローバルな金融コミュニティから排除されていることの解決策になりうる」

たとえば、いくつかのクラウドファンディングサイトは、今年初めのハバナにおける竜巻被災者のためのアカウントを閉鎖した。寄付は合法的であるにもかかわらず、単に「キューバ」絡みだったためだ。

他国のサイトは、たとえ合法的であっても、キューバ関連の資金のやり取りには神経質になっている。米国は過去に、制裁破りを理由として金融機関に対して巨額の罰金を科しているからだ。

だが、「フシオナ」では独自のビットコイン寄付アカウントを設けており、そのような問題には直面していない。

<政府も暗号通貨に関心>

キューバ政府は7月、政府自身も、同じように米国の制裁下にあるベネズエラやイランなど他国の例に倣い、暗号通貨の可能性を探っていると表明した。

ウィルス対策ソフトで知られるマカフィーの創設者で暗号通貨のエバンジェリスト(伝道師)でもある米国の「逃亡者」ジョン・マカフィー氏は、キューバに立ち寄った際、キューバが暗号通貨に取り組むのであれば支援する気持ちはあると述べ、話題を呼んだ。

だがキューバはイランと同様、マネーロンダリングの懸念や共産主義の原理との矛盾を理由に既存の暗号通貨の取引を禁止する一方で、国家発行による実験的な暗号通貨を開発するという選択肢を採りかねない。

ソブリノ氏は、「政府が違法な資産形成だと言い出して、私たちを制約し、あれこれと禁止するのではないかと心配している」と言う。

同氏はさらに、誕生まもない暗号通貨コミュニティを政府が支援してくれるならば歓迎すると述べ、規制がないことに乗じる詐欺行為から投資希望者を保護する必要性を指摘した。

レオン氏は、キューバ本国で資金の受け取りや送金を行っている彼の代理人が、怪しい金融取引を行っていると疑われはしないか懸念しており、「フシオナ」に関して公的なお墨付きが得られないか、中央銀行当局者と協議を開始しているという。「フシオナ」の事業そのものはブラジルで登記されている。

国営のウェブサイト「キューバ・ディベート」は10日、キューバ中央銀行がデジタル通貨のメリットとリスクを検討していると伝えた。

暗号通貨に関する法規制については、ハバナ大学暗号学研究所のアレクシ・マッソ・ムオス教授の発言として、「近々整備される可能性はあるものの」今のところ何も存在しない、としている。

Slideshow (2 Images)

一方で、暗号通貨のブームは、ハバナの都会から遠く離れたキューバ東部の地域にも到達しつつある。

東部の静かな都市ラスタナスで暮らすルスラン・コンセプシオンさん(27)は、生計の足しにしようと暗号通貨に投資しており、「将来的には暗号通貨がすべてのキューバ国民にとって当たり前になってほしい」と話した。

(翻訳:エァクレーレン)

0 : 0
  • narrow-browser-and-phone
  • medium-browser-and-portrait-tablet
  • landscape-tablet
  • medium-wide-browser
  • wide-browser-and-larger
  • medium-browser-and-landscape-tablet
  • medium-wide-browser-and-larger
  • above-phone
  • portrait-tablet-and-above
  • above-portrait-tablet
  • landscape-tablet-and-above
  • landscape-tablet-and-medium-wide-browser
  • portrait-tablet-and-below
  • landscape-tablet-and-below