January 30, 2018 / 8:05 AM / in 10 months

コラム:ダボス会議の「眉唾」コンセンサス

[ロンドン/ミラノ 29日 ロイター BREAKINGVIEWS] - ダボスのバブルは、疑わしい結論を吐き出す傾向にある。このスイスの山岳リゾート地に毎年1月参集する政治家やビジネス界の有力者、金融関係者など大勢の人々は、エリートによる思考の一端を垣間見せてくれる。

1月29日、ダボスのバブルは、疑わしい結論を吐き出す傾向にある。写真はダボスで24日撮影(2018年 ロイター/Denis Balibouse)

だが、この「ダボスのコンセンサス」は、しばしば大きく的を外す。

世界経済フォーラムの年次会合(ダボス会議)の出席者はこれまでも、金融危機の発生や、ドナルド・トランプ氏の米大統領選出を予見することに失敗している。

1年前の同会議では、トランプ大統領がプラグマティックな指導者となり、中国はグローバリゼーションの擁護者となりつつあり、そして欧州経済は国家主義的な政治状況によってマヒ状態に陥る、との見方で参加者がおおむね一致していた。だが、そうはならなかった。

この惨憺たる実績を踏まえれば、今年のダボス参加者から出てきそうな集団思考をいくつか点検してみることは有益だろう。

●世界経済は軌道から外れない

パネル討論会や参加者の間で非公式に交わされた議論は、世界経済の同時成長に対する楽観論でほぼ一致していた。

中国の成長ペースは安定し、ユーロ圏経済は回復し、米国では税制改革法案が成立して減税という追い風が吹いている。国際通貨基金(IMF)は、2018年と2019年の世界国内総生産(GDP)の成長率予測をそれぞれ3.9%に引き上げた。

より高い成長を目指す国もある。ビジネス界の大物を集めたダボスの非公開会合で、トランプ大統領は、米国のGDPはなぜ中国やインドほど成長できないのかと質問し、「成長率7%でもおかしくないのに」と冗談を飛ばしたと、複数の出席者がBREAKINGVIEWSに明らかにした。

こうした絶好調な発言は、楽観的な参加者が金融システムの脆弱性を認識できていなかった2007年1月の会議との比較を招く。

当時の金融危機の傷痕がまだ残る銀行家はより慎重な見方で、インフレや金利の急上昇や、保護主義の台頭に対して懸念を表明していた。米国のテクノロジー大手決算が思わしくない結果となれば、株式市場で調整が起きかねないと考える人たちもいた。

より根本的には、会議参加者は、先の金融危機で表面化した政治的な分断が失業率の低下で癒されることを期待しているようにみえた。だが、ある元中銀当局者が指摘したように、「われわれは以前、格差を是正しようとしたが、うまく行かなかった」

●イタリア総選挙でサプライズは起きない

「予測」の中で最初に試されるのは、2013年以来となるイタリア総選挙で、欧州連合(EU)への政治的支持を揺るがすようなサプライズは起きないという見方だ。ジェンティローニ伊首相のダボス会議演説からわずか1カ月後となる3月4日、総選挙が行われる。

ダボスに集まったイタリアの有力者や銀行家の間では、単一通貨からの離脱をちらつかせている反体制派政党「五つ星運動」は、下院で政権を取るために十分な議席を獲得できないとの見方が大勢だった。

そうなれば、レンツィ前首相率いる中道左派の与党民主党と、中道右派のベルルスコーニ元首相率いる最大野党フォルツァ・イタリアが結託し、右派「北部同盟」も合流して大連立政権を樹立。ジェンティローニ氏が再び首相の座に就くというシナリオだ。

連立合意の一環で、ベルルスコーニ氏と北部同盟は新たな政府の経済関連人事に大きな影響力を持ち、元欧州中央銀行(ECB)専務理事で、現在は仏大手銀ソシエテ・ジェネラル(SOGN.PA)会長のビーニスマギ氏のような人物を財務相に据える可能性がある。

伊紙レプブリカの委託による世論調査会社デモスの最新世論調査の結果をみれば、このシナリオは十分に可能性がある。最も支持を集めた五つ星でも支持率はわずか28%であるのに対し、他の3党の支持率は合計で51.6%に達している。

だが、仮に第2次世界大戦後の欧州政治で1つだけ不変なものがああるとしたら、それは、イタリアが現状をひっくり返す可能性だ。

デモスの調査によると、驚くべきことに47%の調査対象者が投票先は未定と回答している。「イタリア・サプライズ」が現実のものになる可能性は十分にある。

●仮想通貨は世界を変える

ダボスでの注目度が将来のトレンドの正確な前兆だと言えるなら、ビットコインなどの仮想通貨は、これから米ドルやユーロ、円などを追い落とすことになる。

ダボスの目抜き通りで開かれた「クリプトHQ」などのフォーラムでは、起業家やベンチャーキャピタリストが出席し、さまざまな種類の仮想通貨のメリットなどを熱心に議論していた。

銀行家は、異なる理由から仮想通貨を議論していた。犯罪者が仮想通貨を使ってマネーロンダリング(資金洗浄)を行い、当局の規制下にある銀行に預金として送り込むリスクが、規制当局幹部らが出席した非公開会議で取り上げられた主な懸案だった。

「われわれは、侵入ポイントを最小限に抑えなければならない」と、ある大手銀行の最高経営責任者(CEO)は宣言した。

だがより可能性が高いのは、仮想通貨を巡る投機的熱狂が今後も冷め続け、手早く稼ぎたい投資家が別の投資先に移る事態だ。

通貨当局はいずれブロックチェーン技術を一部吸収するかもしれないが、そうであったとしても、ビットコインを巡る様々な主張は、良しにつけ悪しきにつけ誇大されているようにみえる。

●サウジアラビアの改革は良い方向に向かう

サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子が断行した経済・社会改革は、ダボスでほぼ満場の支持を受けた。

サウジの王室関係者やビジネスマンの多くは出席しなかったが、西側銀行家やビジネスマンは、皇太子の改革を誉めそやしていた。中でも、国営石油会社サウジアラムコIPO-ARAM.SEが今年予定する株式新規公開(IPO)の引受団となった銀行の代表者は、サウジアラムコ幹部が共催した夕食会で、皇太子の改革を称賛した。サウジアラムコの上場は、1000億ドル(約10兆9000億円)規模になるとみられている。

サウジ王家の王子やビジネスマンが汚職容疑で逮捕されたことについても、賛同の声が上がった。世界最大の産油国であるサウジの政治安定性に関する疑念は、断固として背後に押しやられた。皇太子への反発が起きるとは予期していない人が多数だった。

●ダボス会議は間違いだらけ

会議の開催中に、「ダボスのコンセンサス」に疑問を感じる参加者は増えていったようだ。実際のところ、ダボスの常識は誤っていることが多いという考え自体が、一般理解として広まる可能性もある。

こうしたメタ合意は、複雑な問題を単純に説明したがるダボス会議の傾向に抵抗する助けになるかもしれない。

あるいは、そもそも同会議に出席すべき理由があるのか、参加者に自問を促すかもしれない。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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