[ダボス(スイス) 17日 ロイター] - 欧州連合(EU)欧州委員会のフォンデアライエン委員長は17日、世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(ダボス会議)で、EUとして公的助成や政府系ファンドを活用し、気候変動対策と社会のクリーンエネルギー移行を促進する方針を明らかにした。米国がインフレ抑制法(IRA)に盛り込んだクリーンエネルギー推進支援措置に対抗する狙いだ。
フォンデアライエン氏はこの動きについて、欧州をクリーンエネルギー技術発展の中心的な地位に置く包括的な計画の一環だと説明。「目的はサプライチェーン(供給網)全体にまたがる戦略的プロジェクトに投資を集中することになる。われわれは特に、新しいクリーン技術の生産拠点をいかに簡潔かつ素早く認可できるかに目を向けていく」と語った。
その上で「欧州の産業を魅力的にし続けるには、現在EU域外で利用可能な各種の政策的な取り組みやインセンティブとの競争力を持つ必要がある」と述べた。
これに先立ち、国際エネルギー機関(IEA)は、米国のIRAがクリーンエネルギーへの投資を加速させると予想し、2015年のパリ協定以降で最も意味のある気候変動対策だと評価。米資産運用大手ブラックロックのラリー・フィンク最高経営責任者(CEO)も、米政府がIRAを通じて国内のクリーンエネルギー移行を資金面で支援する行動は「ゲームチェンジャー」と言えるとの見方を示した。
ケリー米大統領特使(気候変動問題担当)は、気候変動に起因する破滅的な被害を避けるには各国政府と企業が多額の投資をするしかないと訴えた。
一方、欧州諸国の間では、米国がクリーンエネルギー移行を新たに約束した事態を歓迎しつつも、それが域内企業を不利な立場に追いやるのではないかと懸念する声が出ている。
チェコのシケラ産業・貿易相は「米国の視点に立てばIRAの重要性は理解できるが、他方で私は欧州の利益も考えなければならない」と語り、欧州の家計と産業は世界的なエネルギー危機において最も大きな代償を支払っているのに、IRAによって投資家を奪われ、政府は「危険な」補助金競争を強いられかねないと警戒感を示した。
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