February 2, 2019 / 11:18 PM / 17 days ago

アングル:「デジタル麻薬」にはまる子どもたち、米国で問題化

[シンシナティ 27日 ロイター] - ダニー・レーガンさんは13歳のとき、通常は麻薬中毒に表れる症状を発症し始めた。精神的に不安定になり、友人から離れて閉鎖的になった。野球とボーイスカウトもやめた。宿題もせず、シャワーも浴びなくなった。

 1月27日、ダニー・レーガンさん(写真)は13歳のとき、通常は麻薬中毒に表れる症状を発症し始めた。しかしレーガンさんは麻薬をやっていなかった。ただ、ほかに何もできなくなるほど、ユーチューブやビデオゲームにはまっていた。米オハイオ州の治療センターで23日撮影(2019年 ロイター/Maddie McGarvey)

しかしレーガンさんは麻薬をやっていなかった。ただ、ほかに何もできなくなるほど、ユーチューブやビデオゲームにはまっていた。医師も認めたように、レーガンさんは電子機器中毒だった。

「自分のゲーム機をもつとすぐに恋に落ちてしまったような感じになった」と、現在16歳で米オハイオ州シンシナティの高校に通うレーガンさんは言う。「何もかもシャットアウトして、ただリラックスできるのが気に入った」

レーガンさんは、米国で通常見られる10代のネットユーザーとは異なっていた。精神科医によると、米国人の最大8%がネット中毒にかかっており、中毒者は世界中でますます増えている。中毒になると、ネットの使用をコントロールできなくなったり、その影響を気にしなくなったりするという。

「われわれ皆が軽い中毒にかかっている。われわれの行動を見れば、それは明らかだろう」と、精神科医のキンバリー・ヤング医師は指摘。同医師は1995年にインターネット依存センターを設立して以来、同分野の研究を率いている。「健康がこうした行動の影響を受けているため、これが公衆衛生における問題であることは明らかだ」

ネット依存を長年研究しているヤング医師のような精神科医は現在、さらに多くの事例を確認しており、全米各地で新たな治療プログラムを相次いで実施している。フロリダ、ニューハンプシャー、ペンシルベニアなど各州の精神衛生センターでは、入院してネット中毒を治療するサービスも提供している。

ネット中毒は、スマートフォン(スマホ)を手放したくない10代の若者が考え出した偽の症状だと懐疑的な見方をする人もいる。親戚にどう説明すればいいのか困っているとレーガンさんの親は言う。

心理学者で、ビデオゲーム依存の治療に関する臨床医向け手引書を執筆しているアンソニー・ビーン医師は、ゲームやネットの過度な使用には他の精神疾患が隠れている可能性もあり、単独の疾患とは定義すべきではないと指摘。「何が起きているのかちゃんと理解せずに、ある行動を病理として位置付けるようなものだ」と同医師は語った。

<再起動>

レーガンさんの両親は初め、彼をいくつかの病院に連れて行き、ネット使用を制限する誓約書にサインさせた。だが、シンシナティから北に約35キロに位置する同州メイソンにある草分け的な滞在型の治療センターを見つけるまでは、どの病院でも効果は見られなかった。

この治療センター「Lindner Center for Hope」が提供する「再起動」プログラムでは、オンラインゲームやギャンブル、ソーシャルメディア、ポルノや性的なメッセージや画像の送信など、中毒症状があるレーガンさんのような11─17歳の子どもを対象に入院治療を行う。こうした子どもたちは、うつや不安神経症といった精神疾患の症状から逃れようとして中毒になることが多い。

レーガンさんは5歳のときに注意欠陥多動性障害(ADHD)、また6歳のときに不安障害と診断された。医師によると、レーガンさんがネット中毒になったのは、こうした障害に対処するためだという。

「再起動」プログラムを受ける患者は、ベッドルーム16部屋と教室、ジム、食堂のある郊外の施設で28日間を過ごす。その中で、診断検査や心理療法を受け、ネット使用の加減方法を学ぶ。

プログラムの責任者を務めるクリス・トゥエル氏はレーガンさんを含むいくつかの症例を受け、昨年12月に同プログラムを開始した。こうした症例では、若者は「自分を治療」する手段として、麻薬やアルコールではなくネットを使用していた。

ネットの常習性は公式に認められていない。ただし麻薬やアルコールと同様に快楽を誘導する物質を放出する引き金を引いて脳の報酬系を乗っ取る上、若年齢の子どもの手の届くところにあると同氏は話す。

「脳はそれが何であれ気にしない。喉や鼻に入れても、見せても、または手で触ってもだ。脳の中で多くの同じ神経化学物質が作用している」

とはいえ、ネット中毒からの回復は、他の中毒からのそれとは異なるとトゥエル氏は指摘。「しらふになる」こととは違うと言う。学校や家庭、職場でネットは不可避かつ不可欠な存在となっている。

「いつもここにある」と、レーガンさんは自分のスマホを取り出して言った。「ポケットの中にある。でも無視できるようになってきた」

<病気なのか>

医療専門家はネット中毒をより真剣に捉えるようになっている。

世界保健機関(WHO)も米精神医学会(APA)もネット中毒を疾患と認めていない。しかしWHOは昨年、中国や韓国、台湾での長年に及ぶ調査を受け、より具体的な「ゲーム障害」を疾患として認めた。これら国々の医師はゲーム障害を公衆衛生上の危機だとしている。

オンラインゲームや機器を製造する一部メーカーは、利用者に対し、過度にプレイしないよう呼びかけている。ユーチューブは、親会社グーグルのスマホ中毒防止対策の一環として、利用者に休憩を促すため視聴時間を確認できる機能を追加した。

WHOの報道官は、ネット中毒が「徹底的な調査」の対象であり、疾患としての認定を今後検討すると明らかにした。APAはゲーム障害について「将来的な研究疾患」だとしている。

「認定の有無に関係なく、人々にこうした問題が見られる」とトゥエル氏は言う。

ある重症患者は、トイレに行きたいが電子機器から離れたくないあまり、その場で排泄したと同氏は振り返る。

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ゲームやネット使用を抑えられない10代の脳に起きている変化を示す証拠を精神科医が見いだす中、ネット中毒に関する調査の実証的な結果が近くまとまり、医学分類基準にも当てはまる可能性があると同氏は指摘する。

「選択の余地はない。これは実際にある障害であり疾患だ。疾患と認められるほど深刻ではないと冗談を言う人たちがいるが、僕は個人的に傷ついている」とレーガンさんは話した。

(翻訳:伊藤典子 編集:山口香子)

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