December 21, 2018 / 2:00 AM / a month ago

コラム:米利上げや安全資産需要、それでもドルが売られる理由

[ロンドン 20日 ロイター] - 世界経済の雲行きが急速に怪しくなり、米国の景気後退(リセッション)がちらつき始め、株価と長期金利が下がり、米国債の長短イールドカーブが今にも逆転しそうな状況では、ドルは堅調と考えるところだろう。

 12月20日、FRBが今年4回目の利上げに動き、来年も金利正常化を続ける意向を示したにもかかわらず、ドルは下がった。しかも急激に──。その理由は何か。5月撮影(2018年 ロイター/Dado Ruvic)

なぜなら投資家は安全な場所に避難しようとして、米国に資金が戻り、世界的にも安全資産と流動性の需要が一気に高まる。これらは全てドルの上昇につながる。

とりわけ米連邦準備理事会(FRB)が先進国で唯一、引き締め政策を実行している今の局面なら、なおさらだ。米国の長短金利が、どの先進国をも大幅に上回っているからであるのは言うまでもない。

だが現実は異なる。FRBが19日に今年4回目の利上げに動き、来年も金利正常化を続ける意向を示したにもかかわらず、ドルは下がった。しかも急激に。

20日のドルの下落率は今年を通じても屈指の大きさで、週間ベースでは今年2月の米国株急落直後以来の値下がりとなりそうだ。

どうしてそうなったのか明確な理由は見出せないが、いくつかのもっともらしい説明要素はある。

まずは、市場のポジション動向だ。投資家とトレーダーは膨大なドル買い持ちを積み上げてきたので、年末を迎えて持ち高を圧縮しようと考えるのは自然と言える。

バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチが今週公表した12月の調査によると、ファンドマネジャーの間で「ドル買い持ち」は最も集中的に行われた取引だった。

ヘッジファンドなどの投機筋は6月以降ドル買い持ちを続け、今月に入って一時、買い持ち規模は310億ドル強と約2年ぶりの高水準を記録。その後やや減ったものの、なお285億ドルと相当残っており、当面さらに縮小する余地がある。

これは来年のドルはやや値を消すだろうという、為替市場におけるより幅広いコンセンサスとも一致する。為替アナリスト60人余りを対象とした最新のロイター調査では、ドルは来年5%前後下げるとの見方が示された。

もちろん為替レートは相対的なので、米国の金融政策だけではドルを動かす要素の半分にしかならない。他の条件が全て等しい場合、FRBの利上げペースが想定よりも緩やかになってもドルが底堅さを維持できるのは、他の主要中央銀行も同じ程度ハト派的になるケースしかない。

しかしユーロ圏、英国、日本の金融政策は既にとてつもなく緩和的で、ユーロ圏と日本では政策金利はマイナスとなっており、さらなる緩和余地は限られる。

主要国の政策運営を比較して、FRBがよりハト派的になって、欧州中央銀行(ECB)と日銀、イングランド銀行(英中央銀行、BOE)がいずれも現状維持であるなら、ドルは足を引っ張られる。

さらにFRBは来年2回、2020年に1回の追加利上げを想定しているとはいえ、金利先物市場は2020年の利下げを織り込み始めた。

米国の金融政策サイクルが今どの位置にあるかに留意することも大きな意味を持つ。

スタンダード・バンクのスティーブ・バロー氏が指摘するように、引き締めサイクルの初期、あるいはそのサイクルが始まる前でさえも、サイクル終盤よりもずっと大きくドルを押し上げる傾向がある。

バロー氏は「市場がオーバーキル(過度の利上げによる景気失速)を心配するようなら、利上げがドルの弱気材料になり、現在はそういったケースだ」と語り、FRBがトランプ政権から利上げをやめるようかつてないほどの政治圧力を受けている点にも言及した。

そして最後に、ドルを圧迫してユーロを支える長期的、構造的な要因が存在する。これは日々の為替取引では考慮されていないかもしれないが、足元で再び脚光を浴びる形になった。

19日に発表された米国の第3・四半期経常赤字は1248億ドルと10年ぶりの高水準だった。前期を236億ドルも上回り、拡大幅は過去2番目の記録に並んだ。

一方20日に発表されたユーロ圏の10月の季節調整済み経常収支は230億ユーロの黒字で、1─10月では黒字額が2840億ユーロ。今年1年間でも、最高だった昨年の3534億ユーロ並みになると見込まれる。

これらの要素を総合して考えれば、いくら米金利上昇や世界経済と市場環境の悪化といったドルに追い風とみられる材料があっても、ドルの苦境はそれほど不思議でないかもしれない。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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