August 22, 2018 / 9:13 AM / a month ago

コラム:トランプ政権「孤立主義」が脅かすドルの覇権

[ロンドン 21日 ロイター] - トランプ米大統領の就任以来、世界の中央銀行の外貨準備におけるドルの比率が縮小している。主因は為替レートの変化だが、米国の孤立主義がその縮小を加速させる可能性がある。

 8月21日、トランプ米大統領の就任以来、世界の中央銀行の外貨準備におけるドルの比率が縮小している。2017年6月撮影(2018年 ロイター/Thomas White)

トランプ政権は貿易戦争と通貨戦争の両面で「米国第一」主義をますます強めている。地政学的な亀裂が深まって実際の戦争に発展しかねない情勢であり、各国中銀はドルの保有を減らそうと考えるかもしれない。

イラン、ロシア、トルコといった国々は既にドルへの依存を減らす方法を探っている。外貨準備の使用制限という形で、米国から制裁を科されるのをかわすのが1つの狙いだ。

ありていに言うなら、一部の国々は米国がドルの準備通貨としての立場を利用して自国を鞭打つのを恐れているのだ。

準備通貨になるには規模、安定性、安全性、流動性という4つの条件を満たす必要がある。4つすべての条件をほぼ満たせるという点で、ドルに肉薄できる通貨はほかにない。だからドルは50年間にわたって世界の準備通貨に選ばれ続けた。

国際決済銀行(BIS)によると、外為取引の88%をドルとその他通貨の取引が占めている。石油、金属、貴金属など国際商品の貿易はドル建てで行われている。アナリストの推計では、石油貿易の80%超がドル建てだ。

しかしその全能ぶりが永続するわけではない。

外貨準備の権威として知られるカリフォルニア大バークレー校の経済学教授、バリー・アイケングリーン氏は、準備通貨としてのドルの凋落が加速するシナリオを描いている。

きっかけは米国とその同盟国との外交・軍事上の絆が弱まることだ。ドルの「安全保障プレミアム」が失われれば、米国に依存する国々の外貨準備におけるドルの比率は30%ポイント低下しかねないと教授は試算する。

つまり米国が孤立化の道を進み続けるなら、7500億ドル以上のドル建て資産が売りに出される可能性がある。しかもこれは同盟国だけの数字であり、米国と敵対する国々は言うに及ばずだ。

国際通貨基金(IMF)のデータによると、世界の外貨準備高は3月末時点で11兆5900億ドル。トランプ氏が米大統領選に勝利した直後の2016年12月に比べて8%増え、14年に記録した過去最高の11兆9800億ドルに迫っている。

その中でドルの比率は62.48%と、16年12月の65.34%から縮小し、過去4年で最も低い。通貨アナリストの推計では、ドル相場がこの間12%下落したことが、シェア縮小の大部分の要因だ。

米財務省の先週のデータによると、米国債の保有額は、世界第2位の日本が6月時点で1兆0300億ドルと、2011年以来の低水準だった。

日本は米国と敵対しているわけではない。しかし米国との関係が危うく、ちゅうちょなくドル建て資産を手放しそうな国はほかにいくらでもある。

例えばイランは何年も前から、石油輸出の一部をドル以外の通貨で決済している。ロシアや中国も米国との関係が悪化している。

トルコも同じだ。そして同国経済は、最近のリラ安によって間違いなく打撃を被る。

最大の対米債権国である中国は1月、人民元建ての石油先物を導入した。ゆくゆくは北海ブレントや米WTIと並ぶ世界の石油価格指標となる可能性がある。

とはいえ、それは中国が資本を自由化することが前提条件だ。従って、各国中銀の外貨準備がすぐに大きく変化することはないだろう。ただ、外貨準備としてのドルの座が、過去数十年間で最も危うくなっていると考える根拠は十分にある。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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 8月21日、トランプ米大統領の就任以来、世界の中央銀行の外貨準備におけるドルの比率が縮小している。2017年6月撮影(2018年 ロイター/Thomas White)

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