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再送-〔焦点〕-金融庁、3メガ銀人事に異例の注文 旧行バランスの廃止求める

(この記事は5日午後6時22分に配信しました)

[東京 5日 ロイター] - 金融庁が、大手銀行に役員人事の改革を求めて動き出した。1990年代以降の金融危機を合併を重ねて乗り越えて大手銀行だが、10年以上経つ現在も旧行のバランス人事を続けているのが実態だ。金融に限らず、ガバナンス(企業統治)の要の1つは適材適所の人事。金融庁は水面下で、各行にバランス人事を是正し、透明性を高める取り組みを進めるように要請し始めた。

<金融庁幹部の発言に、背筋凍らせるメガ役員>

5月13日、東京・大手町の東京銀行協会ビルヂング3階の会議室。午後零時時半から始まった金融庁幹部と三菱UFJフィナンシャル・グループ など3メガ銀行を含む主要銀行の企画担当役員との意見交換会は、終盤に差し掛かっていた。

銀行側の出席者に激震が走ったのは、その時だ。「3メガバンクには、いまだに旧行のバランス人事がみられる。金融界の常識かもしれないが、社外のステークホルダーにとって常識なのか」――。

発言者は、金融庁の森信親検査局長。各行に共通する課題を検証する「水平レビュー」検査を踏まえてのコメントだった。

関係者によると、続けて森局長は、各銀行の中で各部門の同じポストを、同じ旧行出身者が引き継ぐ合併行の人事を指摘。その上で、適材適所の人事を行うべきだとの見解を示したという。

本音の議論ができるようにと、事務方の入室も認めていない会議だが、金融庁幹部から人事に関して発言が出るのは極めて異例だ。旧行バランス人事は、3メガに限らず合併行は似たり寄ったりの事情だけに、ある銀行の役員は「ウチのことを言われているのだと思い、背筋が凍った」と打ち明ける。

<メガの雄、三菱UFJも>

経営破たんした銀行の中には、経営トップの独断専行を許し、チェック機能が働いていなかった組織が少なくないというのが、金融庁の問題意識だ。

昨年発覚したみずほフィナンシャルグループ の暴力団向け融資問題も、旧行の縦割り人事や意識が原因の1つだとの見方もある。

「行員の行動基準が企業価値の最大化ではなく、合併前の出身行にあるとしたら問題。将来の経営問題に発展しかねない」と、同庁幹部は話す。海外業務が拡大の一途を辿り、行員の国籍も多様化。顧客や株主だけでなく、海外の規制当局の視線も厳しさを増す。「内向き論理だけで人事を回して大丈夫か」。こんな懸念が根底にある。

3メガ銀行グループが5月中旬までに決めた新しい役員体制は、一部で旧行のバランスに配慮したとうかがわせる布陣となった。

例えば、三菱UFJは、退任するグループ持ち株会社の沖原隆宗会長の後任に、同じ旧UFJ銀行出身の園潔副頭取が就任する人事を決定。「持ち株会社社長は旧三菱、会長は旧UFJが就くという不文律を踏襲しただけ」と、あるグループ幹部は言い切る。

三井住友フィナンシャルグループ も、傘下銀行の頭取は旧住友、持ち株会社社長は旧さくら出身者が就く「役割分担」体制が2代続いている。

当のメガバンクには「旧行のバランスを保つことで、逆に不要な人事抗争を抑えることができる」と、その効用を強調する声があるのも事実だ。

<金融庁は指名委員会の活動に注目>

暴力団融資問題をきっかけに、メガバンク初の委員会設置会社に踏み出すみずほ。ガバナンス改革の柱の1つは、人事の透明性・公平性の確保だ。役員人事を決める指名委員会は、委員長以下4人のメンバーすべてを社外取締役が占める。「指名委員会がCEO(社長)の解任権も持ち、緊張感のある内容」(佐藤康博社長)という。

ただ、形式は整うものの、どのような運用をしていくのかが課題となる。金融庁も「形式よりも、中身のある運用が大切」との認識を持つ。

実際、新生銀行 は2010年に委員会設置会社から監査役設置会社に戻した。人事を司る指名報酬員会メンバーだった大株主のJCフラワーズ氏がし意的に運営したため、金融庁からもガバナンスの不備を指摘されていた、と当時の同行首脳陣が会見でその理由を明らかにしている。

監査役会設置会社である三菱UFJと三井住友も、それぞれ役員の人選を決める「指名」などの専門委員会を設けている。三菱UFJは6人の委員のうち、平野信行社長を除く5人が社外取締役。三井住友は、社外取締役3人と、持ち株会社の奥正之会長、宮田孝一社長、國部毅頭取がメンバーだ。

金融庁幹部は「役員人事を決める委員会が、委員会設置会社の法定委員会である必要はない。しかし、どのようなサクセッションプラン(後継者育成計画)を持っているかが重要だ」と語る。

取締役候補者を事前にプールし、各々の業務の実績や能力などの判断材料を、社外取締役も含めた各委員に適切に提供できているか。どのような選考システムを持っているのか。公平で客観性のある選考システムの構築は一筋縄ではいかない。

金融庁は今後、指名委員会などが役員決定について、どこまでの権限を持ち、どのような運用を行っているのかなどの検証を進めるとみられる。

ただ、人事の決定方式も含めて、ガバナンス強化策には「決まった正解」がない。同庁検査局は、ガバナンスの専門チームを作ったが、事業会社なども研究して知見を高めている最中だ。金融庁は「どのような方法が最良なのか。今後、銀行との対話を進めていく必要がある」(幹部)としている。 (布施太郎 編集:田巻一彦)

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