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〔アングル〕ドル/円はEU首脳会議後に最安値更新リスク、市場では介入と追加緩和で歯止めとの見方も

 [東京 26日 ロイター] ドル/円は、今晩の欧州連合(EU)首脳会議を前に再び史上最安値をうかがう動きとなっている。前日のニューヨーク市場でドルは過去最安値の75.73円まで下落したが、依然として反発力は弱い。市場では、首脳会議が抜本的なギリシャ支援策を打ち出せず、株安やユーロ/円の下落を通じてドル/円が安値を更新するリスクが指摘されている。

 一方で介入警戒感も強く、ドルが75円半ば付近まで下がれば介入が入るとみる声が多い。日銀が明日の金融政策決定会合で追加緩和に動き、介入とセットで円高加速に歯止めをかけるとの見方も出ている。

 市場関係者の見方は以下の通り。

 ●マクロ政策と並行し、円売り介入の可能性高まる

 <野村証券チーフ為替ストラテジスト、池田雄之輔氏>

 政府・日銀がドル買い/円売り介入を実施する可能性が高まっている。きょうのEU首脳会議の結果を受けて、金融市場に失望感と同様が広がれば、ドル/円の下値リスクが増幅されるだろう。ドル/円が現行水準から大幅に下落した後に介入を実施しても、現在輸出勢がドル売り目標とする77円後半から78円台までドルを押し戻せない確率が高まる。

 本邦企業が目標とする水準でドルの売り場を提供するという観点から、きょうにも介入を実施する可能性は排除できない。また、過去3回の円売り介入が金融緩和というマクロポリシーと並行して実施されたことから判断しても、27日の日銀金融政策決定会合にタイミングを合わせ、その前後に円売り介入を実施する選択肢があるとみている。

 ●EU首脳会議後の株価次第でドル/円が安値更新も

 <JPモルガン・チェース銀行 チーフFXストラテジスト 棚瀬順哉氏>

 きょうのEU首脳会議後の株価動向に注目している。10月に入ってからの株価上昇が欧州債務問題解決の向けての期待感を反映したものでなかったとすれば、合意内容に特にサプライズがなかったとしても、株価は10月入り後の堅調地合いを維持する公算が高い。この場合、金融市場はリスクオンとなり、ドルキャリー取引が広がり、ドル/円の安値更新もありうるだろう。ドルと円は共にゼロ金利だが、よりファンダメンタルズが弱く、上昇リスクが低いドルの方がファンディング・カレンシー(調達通貨)として選択されやすい。

 他方、株価の堅調地合いがきょうのEU首脳会議に対する期待によるところが大きかったとすれば、結果がそれなりに前向きなものであったとしても、「噂で買って、事実で売る」という典型的な流れとなり、世界の株価が前日に続いて下落する可能性もある。この場合は、リスクオフとなり、ドル買い、円買い、クロス円安が起こるが、ドル/円相場の下落が加速することはないだろう。

 ●ユーロ圏のハードランディング・シナリオは現実味乏しい

 <みずほ証券リサーチ&コンサルティング 投資調査部副部長 小原 篤次氏>

 EU首脳会議の合意については、ある程度金融市場に織り込まれているため、ユーロについても買い戻しの動きが主流になるとみている。

 EU首脳会議の議論は、民間金融機関のヘアカットをどの程度にするか、ヘアカットを受けて、民間金融機関の資本増強はどの程度必要か、欧州金融安定ファシリティー(EFSF)の機能拡充はどの程度可能か、という3点に収れんしている。問題の所在が明らかであることに加え、ユーロ圏17カ国のメルトダウンの可能性は極めて小さいため、ユーロ圏がハードランディングするとのシナリオは現実味が乏しいとの認識は、機関投資家の間でも広く共有されている。

 今後の市場の関心は、より実体経済面に注がれ、米国、ユーロ圏、日本に加え新興国の景気がどのよう軌道をたどっていくのかがより注目されるだろう。 

 ●ドル/円最安値の背景、欧州問題より米QE3観測

 <住友信託銀行マーケット・ストラテジスト 瀬良礼子氏>

 EU首脳会議では、来週の20カ国・地域(G20)首脳会議への説明責任もあり、ある程度の結果は出すだろう。しかし、ユーロ/ドルは期待先行で買われ過ぎており、首脳会議後は失望売りが優勢になりそうだ。とはいえ、下値は1.35ドル前後までとみており、ユーロ/円も100円をトライするようなことにはならないだろう。ドル/円に対しては中立材料とみている。

 ドル/円の過去最安値更新の背景は、むしろ米国の量的緩和第3弾(QE3)観測だ。さらにQE3を示唆する当局者の発言などがあれば、ドル/円は最安値を更新する可能性もある。来週の米連邦公開市場委員会(FOMC)が注目される。ただ、彼らの発言は、アナウンスメント効果のカードを今切ってしまうことでもあり、その必要があったのか理解しにくい部分もある。

 介入は、1ドル=75円半ばくらいまで一気に円高が進むようなら可能性が出てくる。ただ、今のように緩やかな動きであれば、介入のタイミングを計るのが難しくなりそうだ。

 ●ドル75円半ば前後まで下落なら、介入や追加緩和も

 <クレディ・スイス証 券チーフ通貨ストラテジスト 深谷幸司氏>

 EU首脳会議で踏み込んだ内容が出なければ、ユーロは対ドル、対円とも失望売りの可能性が高いとみている。ユーロ/円主導で、ドル/円も最安値更新の可能性が出てくる。

 ドル/円は75.75円付近から下にはストップロスが多く、つければ75円前半まで円高が加速する可能性もある。ただ、介入警戒感もあり、75.70─75.80円付近の水準ではもみあいそうだ。

 介入が入るとすれば、75円半ばくらいの水準だろう。この場合は、日銀も明日の金融政策決定会合で追加緩和に動くとみており、セットで円高加速に歯止めをかける形を取るだろう。日銀は緩和カードを温存したいところだろうが、市場の期待感は非常に高まっている。

 (ロイターマーケットチーム)

※( ロイターメッセージング:yoko.matsudaira.reuters.com@reuters.net 

E-mail:yoko.matsudaira@thomsonreuters.com; 03-6441-1795)

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