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〔富裕層マネーを追う〕30─40代は金融危機下でもヘッジファンドに積極投資=アブラハム・高岡社長

 [東京 21日 ロイター] 富裕層限定の交流サイトなどを運営するアブラハム・グループ・ホールディングスの高岡壮一郎社長によると、国内の30─40代の富裕層は、金融危機下でもリスク性商品に対し積極的な投資を続けている。同社長は20日に行ったロイターとのインタビューで、若手の富裕層は「今は投資のチャンスとの発想」で、年明け以降にヘッジファンドや海外株式への投資を増やしていると述べた。

 米リーマンショック後の金融市場の混乱で、昨年のヘッジファンド運用は総じて不振だったが、高岡社長によると、例外的に好調だったCTA(商品投資顧問)への注目度が年明けから高まっている。海外株については「ここ2カ月程で相場が回復してきた米国株や中国などの新興国株に資金が戻っている」という。

 アブラハムは、純金融資産1億円以上を保有する富裕層会員向けソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)「YUCASEE(ゆかし)」を通じて金融商品からアートまで様々な投資情報などを無料で提供しているほか、投資助言子会社のアブラハム・プライベートバンクを通じて富裕層向け資産運用サポートを提供している。

 ゆかし会員の約7割は30─40代で企業経営者や医者が中心。年明け以降に投資情報を求めて入会する富裕層が増え、会員の純金融資産合計は1月の6400億円から直近で8000億円強に拡大した。また富裕層の投資拡大を反映し、投資助言子会社の4月の新規助言残高はリーマンショック前後の昨年9月に比べ約6倍に増えたという。

 インタビューの詳細は以下のとおり。

 ──リーマンショック後に富裕層の投資姿勢はどう変化したか。

 「30─40代の富裕層はリーマンショック後もリスクを取って積極的に投資している。昨年10月後半にゆかし会員149人を対象に行ったインターネット調査でも、リーマンショック後の投資マインドが『積極的になった』と回答した割合が44%に達した。今は投資のチャンスとの発想だ」

 「企業経営者などは自社株を含めた株式保有率が高く、株安による資産価値の目減りはあったものの、ヘッジファンドの保有率も高く、損失を相殺したケースもある。成績が好調なヘッジファンドを保有していて資産残高を増やしたケースもある」

 ──大手金融機関は昨秋以降に富裕層のリスク回避姿勢が強まったと指摘する。

 「60代以上の富裕層のことではないか。国内富裕層の9割は60代以上で、大手金融機関の富裕層顧客とゆかし会員とでは年代や投資姿勢が異なる可能性がある。若手の富裕層は、投資助言を受けながら自分の頭で考えて世界の中からいい物に投資していきたいという人が多い」

 ──若手の富裕層はどんな商品に投資しているのか。

 「昨年の金融危機下でも成績が好調だったCTAなどのヘッジファンド。相場動向に追随して売買するトレンドフォロー型のCTAなら、相場の動きが止まらない限り収益を上げる機会があり、安心感を持って投資できると捉えているようだ。ただ若手とは言え、為替リスクをヘッジした円建て商品を好む傾向もあり、ヘッジファンド投資の約3割は円建て商品が占めている」

 「ここ2カ月程で相場が回復してきた米国株や中国などの新興国株に資金が戻っている。日本株については関心はあるが、自社株を含めポートフォリオに占める株式比率が高いこともあり、まだ投資対象として捉えていないようだ。リーマンショック前は過剰流動性を背景にアートも注目されたが、ショック後は関心が薄れた」

 ──金融危機でヘッジファンドをめぐる流動性の問題がクローズアップされた。

 「金融危機以前から富裕層はヘッジファンドの流動性を意識しており、投資姿勢に変わりはない。米マドフ巨額詐欺事件の影響で機関投資家がヘッジファンド投資に消極的になっていることもあり、海外のヘッジファンドが日本の富裕層へのアクセスを求めてアブラハム・プライベートバンクに訪問や問い合わをしてくるケースが増えている」

 ──金融危機を通じてビジネス戦略に変更は。

 「特に変更はない。今年に入って富裕層向け雑誌が廃刊したこともあり、投資情報を求めてゆかしに入会する富裕層が増えた。投資助言子会社を通じて、有望なヘッジファンドで円建て商品がない場合は円建て商品を作ってもらったり、流動性が高まりそうな新興国の不動産に関する情報を充実させたりして富裕層のニーズに応えていきたい」

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 (ロイター日本語ニュース 大林優香記者;編集 吉瀬邦彦)

 ※(yuka.obayashi@thomsonreuters.com; 03-6441-1798; ロイターメッセージング: yuka.obayashi.reuters.com@reuters.net)

 ※これまでに配信した〔富裕層マネーを追う〕の記事は以下のとおり。記事本文は文末の[ ]内をダブルクリックしてご覧ください。

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