[ワシントン 7日 ロイター] 米政府は7日、政府系住宅金融機関(GSE)の連邦住宅抵当金庫(ファニーメイ)FNM.Nと連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)FRE.Nを政府の管理下に置くと発表した。悪化する米住宅市場の支援と国際金融市場の混乱回避のため、かつてない規模の支援に乗り出す形となった。
ポールソン財務長官はこの日の記者会見で「米国の経済や市場は、住宅市場の調整が終わるまで回復することはできない」と指摘。
両社は米住宅ローン残高12兆ドルの半分近くを保有または保証しており、どちらかが破たんすれば、国内ばかりか世界中の金融市場に大きな混乱を引き起こすと述べた。
両社は政府管理下に置かれるが、株式は引き続き取引可能。ただ、普通株の株主はまず損失を被る下位の立場におかれることになる。
両社は、経営が安定し、財務内容が改善するまで連邦住宅金融局(FHFA)の管理下に置かれる。
ブッシュ米大統領は、両社の問題は金融システムと米経済にとって受け入れ難いリスクとなっており、今回の措置は必要だったとのコメントを発表した。
<政府が株主に>
救済計画では、財務省が両社の株式とモーゲージ担保証券(MBS)を購入、信用枠も拡大され、支援の総額は2000億ドルに達する見込み。
フレディーマックのリチャード・サイロン最高経営責任者(CEO)、ファニーメイのダニエル・マッドCEOは退任。それぞれ後任に元USバンコープUSB.N幹部のデビッド・モフェット氏、かつてメリルリンチMER.Nと年金基金のトップを務めたハーブ・アリソン氏が就任する。
財務省はすみやかに両社の株式それぞれ10億ドルを購入。これらは1000ドルまで購入拡大が可能な上位優先株で、既存の優先株と普通株に対して優先される。さらに普通株79.9%の株式購入権(ワラント)も引き受ける。
財務省は今月にも両社発行のMBSの購入を開始。2009年12月31日まで買い付ける権限を持つ。資金供給枠も2009年末まで継続される。
アナリストは、今回の措置は不安定な信用市場の信頼感回復につながり、不動産ローンコストの低下につながる可能性がある、とみている。
フロント・バーネット・アソシエーツのプリンシパル、ピーター・ゴールドマン氏は「政府は、不透明感払しょくのために何かしなければならなかった。信用市場の不透明感を取り除くものは何でも歓迎される」と述べた。
<納税者は困難な立場>
財務省によると、最終的な救済コストは両社の今後の業績次第。7月時点で議会の予算アナリストは、納税者は250億ドルの負担を強いられるとの試算を明らかにしている。
今回の措置について、民主党の大統領候補であるオバマ上院議員は、両社が真の意味で上場企業なのか、あるいは投資家がリスクがないと思って投資できる特別な団体なのかを明確にする必要が出てくるだろうと述べた。
また共和党大統領候補のジョン・マケイン上院議員は、両社は「クローニー・キャピタリズム(縁故資本主義)」の例であるとし、将来的には民営化されるべきとの考えを示した。
ただ両候補とも、今回の措置は経済を危機に陥れさせないために必要だった、としている。
ポールソン財務長官は、今回の措置に踏み切った背景について、過去4週間の両社の資本に関する情報を受け、公的支援措置が必要と判断したと述べた。財務省は8月5日、両社の資本状況に関してモルガン・スタンレーとアドバイザー契約を結んでいる。
FHFAのロックハート局長は、両社は多額の損失を抱えており、住宅市場支援のために十分な資本を有していないと述べた。
また米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長は、今回発表された一連の措置を強く支持するとし、「これらの必要な措置が米国の住宅市場を強化し、金融市場の安定を促すだろう」と述べた。
記事中の企業の関連情報は、各コードをダブルクリックしてご覧ください。
※原文参照番号[nN07479172](3000Xtraをご利用の場合、配信後24時間以上経過した記事でも380日以内であれば[ID:nN07479172]でご覧になれます。なお、契約の内容によっては、原文がご覧いただけない場合もあります)