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コラム

コラム:「不在」でも世界を騒がせる金正恩氏、後継者問題に不安

[香港 29日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は、常に世界を不安に陥れている。自らが姿を現す場合はもちろん、逆に公の場で確認できないという事態でもそれは全く同じだ。正恩氏については、心臓の具合が悪いことによる病気説や、こん睡状態説、死亡説などが飛び交っている。実際に病気であっても、あるいは健康に問題がなくても、正恩氏は後継者を決めていないので、今後国内で権力闘争が勃発する可能性がある。

4月29日、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は、常に世界を不安に陥れている。写真は2019年2月、中国との国境にあるベトナムのドンダンの駅に到着した金正恩氏(2020年 ロイター/Athit Perawongmetha)

そうなればせっかく新型コロナウイルスによる最悪の痛手から立ち直りつつあるように見える北朝鮮にとって、重要な経済分野があっという間に崩壊しかねない。投資家としては、まずは正恩氏の健康を、次には改革志向の後継者が出てくるのを祈るばかりだ。

もしも正恩氏が死亡したか、永遠に職務を遂行できなくなったとしても、韓国や米国、中国の政府内から悲しむ声はほとんど聞こえてこないだろう。何しろ正恩氏は春節(旧正月)中にミサイル実験を行い、米シアトルを射程圏内に収めたと主張しただけでなく、さまざまな面でむやみに権力を振りかざしてきたからだ。敵対者や、その配偶者や子弟らを何人も処刑・殺害したり、収容所に送っている。

ただ正恩氏が、故金日成主席生誕108年を迎えた15日の「太陽節」を欠席したからといって、死亡したと信じる根拠にはほとんどならない。以前にも正恩氏はしばらく公式に姿を見せなかったケースが見られたし、中国の習近平国家主席にもそうした時期があった。あるいは腹部の脂肪除去手術や、ひどい二日酔いからの回復途上なのかもしれない。韓国政府は、北朝鮮との軍事境界線全体に異変は見当たらないと分析し、早急に結論を下すことに慎重な姿勢を示した。

それでも「金王朝」が後継者問題を抱えているのは間違いない。正恩氏が権力を掌握したのは20代で、現在まだ推定36歳だ。半面、同氏は健康状態が万全ではないことがうかがわれ、一番年上の子息は10歳とみられているため、血族で代わりが務まりそうなのは妹の金与正氏しかいない。女性が国家元首に就任すれば、家父長制の下で男性優位が続いてきた北朝鮮ではもちろん初めてで、その後は何が起きても前例が通用しなくなるだろう。

軍部や正恩氏の一族、さらに事態に便乗しようとする勢力の間で権力闘争が始まれば、北朝鮮内外で暴力的な動きが発生してもおかしくない。中国や米国、韓国がそれぞれ有利な立場を獲得しようとすることで、事態が複雑化するのも目に見えている。正恩氏体制下での暫定的な市場経済導入の動きも頓挫する恐れがある。

誰にとっても正恩氏を好きになるべき理由は見当たらないが、同氏が復帰した際には、世界の不安定化を防ぐためにスポーツジムの会員権をプレゼントするぐらいの人はいるかもしれない。

●背景となるニュース

*北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の健康不安説が浮上している。きっかけは故金日成主席生誕108年を迎えた15日の「太陽節」に姿を現さなかったことだった。

*韓国政府当局者は、北朝鮮に異変はないとみており、金正恩氏病気説や新型コロナウイルスへの懸念から隔離されているとの報道に懐疑的。

*中国は23日、医療専門家を含む使節団を北朝鮮に派遣した。ロイターが25日、複数の関係者の話として伝えた。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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