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コラム

コラム:欧州利上げで減速懸念、「火消し策」に効果はあるか

[ロンドン 21日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 欧州中央銀行(ECB)はユーロ圏経済の先行きに暗い影を投じると同時に、その結果生じる問題に対処しうる政策手段を創設した。ラガルド総裁は0.5%と予想より大幅な利上げを表明しつつ、投機筋の攻撃を受けている一部加盟国を守る新たな債券買い入れ措置の伝達保護措置(TPI)を設けた。踏み込んだ利上げがもたらす影響は誰の目にも明らかだが、TPIがどんな状況につながるかはまだ把握できない部分がある。

 7月21日、 欧州中央銀行(ECB)はユーロ圏経済の先行きに暗い影を投じると同時に、その結果生じる問題に対処しうる政策手段を創設した。写真は同日、フランクルフルトのECB本部で記者会見するラガルド総裁(2022年 ロイター/Wolfgang Rattay)

ECBは1カ月前の段階で、7月に0.25%の利上げを行うと表明していたが、2011年以来となった実際の利上げ幅はその2倍。これは理事会のタカ派メンバーらにTPI導入を同意してもらった対価だった。

TPI発動の条件は非常に緩く、どのユーロ圏加盟国にも適用できるだろう。ラガルド氏は、TPIの恩恵を受ける国に欧州安定メカニズム(ESM)による監視の下で特別な経済政策の実行を約束してもらおうとしていたECB内強硬派の考えを退けた。TPIの柔軟性に富み、何も要求しないという発動基準のおかげで、ラガルド氏ら理事会はいつ市場が加盟国に規律を課すのか、いつそうした市場の動きを押し返すのかを決める自由を得た。

TPIがどの程度効果を発揮するかは、迅速に発動ができるかどうかに左右されるだろう。この点はしばらくはっきりしないままとみられる。ECBは、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)の期間に導入した1兆7000億ユーロ規模の債券買い入れに基づき保有した債券の満期償還金を再投資した後で初めて、TPIの活用を考えることになるからだ。

今後投資家がECBの決意のほどを試そうとするのは間違いない。恐らく最初の標的はイタリアになるだろう。イタリアの10年国債利回りは年初時点の1.2%から足元で3.5%まで上昇している。ドラギ首相の辞任を受け、21日にはドイツの10年国債との利回り差は2.2ポイント強に拡大した。

ラガルド氏は、できればTPIを発動しないのが望ましいと発言した。しかしECBの利上げは、直ちに物価高騰を抑える効果が乏しい半面、景気減速の時期を早めてしまうかもしれない。そうした意味でECBは、一方で経済にとって危険な政策運営を行いながら、もう一方で「火消し」の道具を用意する自作自演の構図となっている。

●背景となるニュース

*欧州中央銀行(ECB)は21日、政策金利の中銀預金金利を0.50%引き上げてゼロにすることを決め、8年におよぶマイナス金利政策に終止符を打った。

*ラガルド総裁は、財政基盤の弱いユーロ圏加盟国の国債利回り上昇による「域内格差」を是正する新たな債券買い入れ措置の伝達保護措置(TPI)も発表した。「金融政策の伝達に重大な脅威をもたらす不当で無秩序な市場の動き」を避ける狙いがある。

*ECBはTPIについて、理事会が一連の経済政策に関する基準に照らしてケースバイケースで発動を決めると説明した。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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