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コラム

コラム:ECB、「パニック利上げ」を回避すべき理由

[ロンドン 2日 ロイター BREAKINGVIEWS] - インフレとリセッション(景気後退)リスクの板挟みとなった欧州中央銀行(ECB)は、インフレ高騰に歯止めをかけるために利上げを進める道を選んだ。問題はそのスピードと幅だ。ユーロ圏が来年、深刻な景気減速に陥ると懸念される中、8日の理事会であまりに大幅な利上げを実施すれば、ECBはインフレ退治のためにパニックを起こしていると思われるかもしれない。

 インフレとリセッション(景気後退)リスクの板挟みとなった欧州中央銀行(ECB)は、インフレ高騰に歯止めをかけるために利上げを進める道を選んだ。フランクフルトのECB本部前で7月撮影(2022年 ロイター/Wolfgang Rattay)

ユーロ圏のインフレ率は足もとで年率9%に達しており、ECBが利上げすべきであることは論を待たない。同行は7月まで8年間にわたってマイナス金利政策を続け、利上げが遅れた。主要政策金利の中銀預金金利は利上げ後の今も0%だ。インフレの主因は変動の激しいエネルギーと食品価格の上昇だが、これらの要因を除くコアインフレ率も8月時点で年率4.3%と、ECBの目標値2%を大幅に上回っている。

シュナーベル専務理事は、リセッションの有無に関わらず、今は「強力に」インフレと闘うべき時だと述べ、タカ派姿勢を示した。ピクテのアナリストチームは、8日の理事会の利上げ幅が0.75%となり、7月の0.5%を上回ると予想している。リフィニティブのデータによると、短期金融市場は中銀預金金利が来年2.3%に達することを織り込んでいる。

米連邦準備理事会(FRB)が利上げペースを速めたことも、ECBが今回0.75%の利上げに踏み切るとの見方を強めることになった。FRBの大幅利上げを受けてユーロは対ドルで下落し、ECBを悩ませる輸入インフレを招く要因がまた1つ増えた格好だ。

しかしECBのレーン専務理事兼主任エコノミストは、最終的に政策金利をどの水準まで引き上げるにせよ、重要なのは徐々に利上げを進めることだと強調。小幅な利上げを定期的に実施すれば、景気減速がリセッションに転じた場合、政策を調整することが可能だと説明した。毎回の理事会で0.25%ないし0.5%幅の利上げを続ける方が、経済への影響は穏やかなものになるということだ。

ECBはユーロ圏がリセッションに陥るとの懸念を一蹴する可能性が高いため、政治家がリセッション回避のための努力を強化する必要があるだろう。しかし新型コロナウイルスのパンデミックからウクライナでの戦争に至る危機の3年間を経て、ユーロ圏の政府債務の対国内総生産(GDP)比率は2019年の84%から、昨年は96%まで拡大し、さらに増え続けている。そしてユーロ圏全域で資金調達コストは急上昇を続けている。現在の欧州にとって最も危険なのは、財政的な余裕を失った状態でリセッション入りすることだ。ECBが利上げを積極化し過ぎると、大慌てで引き返さざるを得なくなるリスクがある。

●背景となるニュース

*ECBは8日に開く理事会で主要政策金利の追加引き上げについて協議する。中銀預金金利は現在0%。

*シュナーベル専務理事は8月27日、米ジャクソンホール会議で講演し、たとえユーロ圏がリセッション入りするとしてもECBは「正常化路線を続けるほかに選択肢がない」と述べた。中銀は「インフレとの闘いを拙速に放棄」してはならない、とも強調した。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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