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コラム:ECB、景気減速への斬新な政策対応は期待薄

[ロンドン 24日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は、新たな景気減速を迎えても使い古した政策手段で対応していくしかない。

 1月24日、欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁(写真)は、新たな景気減速を迎えても使い古した政策手段で対応していくしかない。フランクフルトで撮影(2019年 ロイター/Kai Pfaffenbach)

ECBは24日、ユーロ圏の経済成長が鈍化するかもしれないと表明しつつも、具体的な解決策を提示しなかった。ドラギ氏の手元に残されたツールは減る一方だ。銀行向けの低利資金供給が、同氏にとっては最も好ましい選択肢と言える。

資産買い入れプログラムを打ち切ってから1カ月もしないうちに、経済の低調さを示す材料が続いたことで、ドラギ氏にまた何か手を打つよう求める圧力は強まりつつある。24日にもユーロ圏の1月総合購買担当者景気指数(PMI)の悪化が発表された。このままの状況が続けば、ユーロ圏の今年の成長率はECBが予想する1.7%を達成できる公算は乏しい。まして2%弱という物価目標は一層遠のくだろう。

ドラギ氏が抱える最初の問題は、このところの景気減速を巡る不確実性のほとんどが、政治的な不透明感に由来することだ。こうした不透明感は、米中貿易摩擦が緩和され、英国が円滑に欧州連合(EU)を離脱できる流れとなれば、解消する。そしてこれらが一時的要因であるなら、何も急いでECBが政策を発動する理由はない。

第2の問題は、景気減速が持続した場合の対処法にある。資産買い入れの再開は論争を呼ぶだろう。欧州北部諸国は、紙幣の増発は財政支出を拡大しているイタリアに甘い顔をすることになるとみなしている。マイナス圏にある中銀預金金利をさらに下げれば、既に利益を稼ぎ出すのに四苦八苦する欧州の銀行にどうしても打撃を与えてしまう。

最も単純な解決策は、市場の頑張りに期待することかもしれない。投資家はECBが年内に利下げするとの見通しをもはや捨て去った。また利上げがあってもECBがその後長らく、保有債券の償還資金を再投資すると考え、長期金利を押し下げている。借り入れコストの低下は、ユーロ圏経済の援護射撃になる。

とはいえ市場の力だけでは不十分ではないだろうか。低金利と債券イールドカーブのフラット化がずっと続けば、銀行の利益が損なわれる。その上に銀行は、2016年にECBが提供した長期資金供給オペ(TLTRO)の返済も迫られ、実際に来年から順次期限が到来する。これに関する一番手っ取り早い対策は、銀行に追加で低利の長期資金を供給することだろう。ユーロ圏経済がさえないままなら、ECBは固定金利方式のほか銀行に有利な各種条件を付けた資金供給ができる。

そうした措置は景気後退を避ける一助にはなる可能性がある。ただし中央銀行として新たな政策のアイデアがないことも、強く印象付けられる結果になる。

●背景となるニュース

・ECBは24日の理事会で、金融政策の現状維持を決定した。ドラギ総裁は会見で、経済成長に関するリスクが「下方に傾いた」と述べ、これまでのリスクは上下均衡しているとの見解を修正。複数の理事会メンバーがさらに的を絞った長期金供給オペ(TLTRO)を実施する可能性を議論したが、まだ何も決定していないと付け加えた。

・ECBは声明で、2%弱という物価目標達成を確実にするため、政策金利を「少なくとも今年夏ごろまで、場合によって必要ならその分だけ」現状水準にとどめる意向を示唆した。

・IHSマークイットが発表した1月のユーロ圏総合購買担当者景気指数(PMI)速報値は50.7 と、2013年7月以来の低水準だった。節目の50はかろうじて上回ったが、エコノミスト予想の51.4を大きく下回った。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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