[パリ 29日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーのビルロワドガロー仏中銀総裁は29日、デジタルユーロと欧州決済システムを巡る計画を推進しなければ、欧州の通貨に対する主権がリスクにさらされると警告した。
ビルロワドガロー総裁はパリ・ユーロプレース会議で、新型コロナウイルス感染拡大を受け消費者の現金離れが進み、大手ハイテク企業が市場に参入する中、新たなインフラの整備に残された時間はあと1、2年しかないと指摘。「デジタル通貨と決済の双方で、欧州が迅速に対応しなければ、欧州の通貨の主権が損なわれるリスクがある。こうしたことは容認できない」と述べた。
世界の中央銀行の90%がデジタル通貨に関連する取り組みを進める中、中央銀行が発行するデジタル通貨(CBDC)が発行されれば、銀行に預金として預けられる資金が減少するとの懸念が台頭。米モルガン・スタンレーは今月、デジタルユーロの発行でユーロ圏の銀行預金が8%減少するとの試算を示した。
ビルロワドガロー総裁は、銀行は個人向け事業でCBDCを配布し、法人向け事業で簡易で安全な決済を提供できると指摘。「CBDCの発行で銀行の仲介機能が大幅に阻害されるというシナリオは、真面目な分析というよりは、むしろフィクションにすぎない」と述べた。
仏中銀は官民の金融機関と連携し、CBDCの実証実験をこれまでに5回実施。年内にあと4回実施する。
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