January 21, 2020 / 2:36 AM / a month ago

アングル:ECB理事会を巡る5つの疑問、戦略見直しの内容は

[ロンドン 20日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)は23日に開く今年最初の理事会で、ラガルド総裁が先に表明していた金融政策戦略の見直しを正式に開始することになる。ほぼ間違いなく対象になりそうな項目の一つは、2013年以降ずっと達成できていない物価目標だろう。

欧州中央銀行(ECB)は23日に開く今年最初の理事会で、ラガルド総裁が先に表明していた金融政策戦略の見直しを正式に開始することになる。写真は2019年12月、フランクフルトで記者会見するECBのラガルド総裁(2020年 ロイター/Ralph Orlowski)

今回、見直しの範囲や規模が論じられる公算が大きい。その内容は実際の金融政策に幅広く影響するだけに、市場にとっても重要な材料だ。またユーロ圏の指標がやや明るくなっていることから、ECBによる最新の経済・物価情勢判断にも関心が集まるとみられる。

市場に浮上してきた今週の理事会を巡る主な5つの疑問は次の通り。

1.戦略見直しの内容がどこまで詳しく判明するか

2003年以来となる戦略の見直し作業が正式に立ち上がり、構成要素やスケジュール、課題、プロセスなどが1年がかりで話し合われそうだ。

ラガルド氏は、世界経済が変化している中で、物価上昇率を2%弱に維持するという今の目標がなお妥当かどうかを決めることが主眼になると話す。米連邦準備理事会(FRB)など、似たような物価目標を設定している他の中銀でも、その是非は議論になっている。

ABNアムロの金融市場調査責任者ニック・コウニス氏は「物価目標の枠組み全体が見直しの中心になる。そこにはどのように目標を定義するかを含め、さまざまな問題が存在する。場合によってはECBが今後目標とする物価指標を検討するつもりであり、利用可能な政策手段を論じるべきかの議論もされていることがある程度、示唆されるかもしれない」と述べた。

ECBの新任のシュナーベル専務理事も先週、より明確な物価目標を検討するべきだとの考えを明らかにしている。

2.ECBが経済見通しで言えることは

ECBは、ユーロ圏経済の最悪期が終わったとみるかどうか回答を迫られ、また短期的な政策運営に関するヒントを求められるだろう。

製造業とサービス業の景況感指数は、昨年12月にユーロ圏民間セクターの拡大が4カ月ぶりの高水準に達したことを示した。シティグループが算出する経済サプライズ指数は2年ぶりに近い高水準を記録。ロイターのエコノミスト調査では、80%近くが、ユーロ圏の経済活動は底を打ったと答えた。米中貿易協議の「第1段階」合意で、世界の金融市場を覆っていた不透明感も和らいだ。

しかしECBが考えを変えるのは時期尚早とアナリストはみている。ECBのメッセージ修正が性急すぎれば、これから出てくるデータがそれほど堅調でない場合、裏目に出かねないからだ。ECBが公表した昨年12月の理事会議事要旨でも、指標は安定しているとはいえまだ弱いと理事会メンバーが認識していることが分かった。

ジェフリーズの欧州金融エコノミスト、マルシェル・アレクサンドロビッチ氏は、サーベイ系の調査の動きをハードデータで確認するには時間がかかるので、ECBが将来の政策変更可能性という観点で何かこれまでと違う動きをするのでさえ、現実的には最低でも半年先になると指摘した。

3.物価は上向きつつあるが、これは朗報か

昨年12月のユーロ圏消費者物価指数(CPI)は前年比上昇率が跳ね上がり、物価情勢の先行きが改善してECBは9月に実施した大規模緩和の効果を見守る余裕ができたとの見方が強まった。

コアCPIが2カ月連続でしっかりしていたことを受け、ラガルド氏は、ECBが物価のさらなる上振れ余地があると認識しているかどうか質問されるかもしれない。

市場が見込む5年後からの5年間の物価上昇率も半年ぶりの高い伸びに近づき、かつての過去最低から持ち直しつつある。

ただし12月にECBが公表した見通しでは、物価上昇率は21年末になってもまだ目標に届かない。エコノミストの間でも、物価の基調が転換したと宣言するのは早過ぎるとの声が聞かれた。

ピクテ・ウェルス・マネジメントのストラテジスト、フレデリック・デュクロゼ氏は「自分のエコノミストとして最大の不満は、ラガルド氏自身が本当はどういう確信を持っているのかが聞けないことだ。われわれは彼女が物価見通しについて本当に考えていて、他の理事会メンバーにもそう伝えていることを知りたい」と述べた。

4.スウェーデンはマイナス金利から脱却した。ECBも追随できるか

スウェーデン中銀は昨年12月、5年にわたるマイナス金利政策に終止符を打ち、政策金利をゼロに引き上げるとともに、マイナス金利をあまりにも長く続けることのリスクに言及した。これによりECBが追随する可能性があるとの観測が広がっている。

同時にECBにとって追加緩和のハードルも上がり、短期市場では21年中の利上げを織り込み始めた。

実際、一部の政策担当者は、マイナス金利が銀行や保険会社、年金基金などにもたらす望ましくない副作用への懸念を強めつつある。ただ現時点でECBは、マイナス金利の効果が副作用を圧倒していると主張。ロイターのエコノミスト調査でも75%超が年内を通じてマイナス金利が維持されると予想した。

一方、銀行融資調査ではマイナス金利のプラス面が証明され、最近は債券利回りが上昇して保険会社が恩恵を受けている。ナティクシスの調査ソリューションズ責任者シリル・レグナット氏は「ECBがマイナス金利解除に動くインセンティブは弱まっている」と説明した。

5.中東情勢緊迫がECBの政策に与える影響は

貿易戦争と英国の欧州連合(EU)離脱を巡る不安は後退した半面、米国とイランの関係に緊張が高まり、今月に入って一時原油価格が高騰した。

ラガルド氏は、前任者らと同様に、地政学的な緊張はECBがコントロールできる範囲を超えていると強調するかもしれない。それでも緊張が一段と増大して経済が打撃を受けるか、あるいは原油が高止まりした際に、ECBがどのような政策対応をするか市場は手掛かりを得たがるだろう。

ECBは以前、原油価格が10%上がるとその初年の域内総生産(GDP)を0.1%ポイント押し下げると試算していた。精いっぱい控えめに見ても、地政学的緊張によってECBは緩和的な政策姿勢を維持する公算が大きい、というのがアナリストの見立てだ。

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