June 14, 2018 / 11:02 PM / 6 months ago

コラム:ECBが打ち出した現状精一杯の出口戦略

[ロンドン 14日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁にとって、ふらつきながらも何とか「出口」に到達するというのが、今のところ精一杯の政策対応だ。

 6月14日、欧州中央銀行のドラギ総裁にとって、ふらつきながらも何とか「出口」に到達するというのが、今のところ精一杯の政策対応だ。写真はフランクフルトのECB本部。2018年4月撮影(2018年 ロイター/Kai Pfaffenbach)

ECBは14日、債券買い入れプログラム(量的緩和=QE)の打ち切る方針だと表明した。しかしそれは条件付きであり、政策金利はしばらく現状を維持すると約束した。貿易戦争やユーロ圏経済の弱さからすると、ドラギ氏はさまざまな選択肢を確保し続ける以外、ほとんど手の打ちようがない。

2015年に始めたQEを今年末で終了すると正式に宣言したのは、ちょうど潮時のようにみえる。経済成長はしっかりしており、ECBは向こう2年の物価上昇率が平均1.7%と、目標近くで推移すると予想している。ユーロ圏の雇用者数は過去最高水準にある。

一方で現在はリスクを背負うには時期が良くない。足元の経済成長はユーロ圏の潜在成長率を上回っているとはいえ、今年全体では2.1%と、昨年の2.5%から減速する見込みだ。政治リスクも増大しつつある。米国は欧州に対して貿易戦争をちらつかせているし、イタリアの新政権は財政赤字を膨らませ、改革は撤回したい意向だ。

こうした状況がECBを難しい立場に置いている。QEを今後も続けていくと、イタリアの反欧州的な政府の肩を持っていると批判を浴びかねない。逆に急にQEを停止し、市場が利上げを見越して欧州の債券利回りが高騰する事態になれば、国内総生産(GDP)の132%相当の債務を抱えるイタリアの返済能力について、投資家の間に懸念が広がる恐れが出てくる。

その意味でECBが複雑な動きをするのも、納得がいくように思われる。ECBは12月にQEを打ち切る見通しだが、それは物価上昇率見通しの面で条件を満たした場合だとただし書きを付けた。政策金利は来年9月まで上げないと説明した上で、必要な限り保有債券の償還資金を再投資することも言明した。

ユーロは下落し、ドイツ国債利回りは低下した。市場全体としては比較的落ち着いた反応だったことは、ECBを出口に向かいやすくしてくれるだろう。それでも恐らく実際の作業は困難の度が増していく。財政規律を緩めろ、移民規制を強化しろというイタリア政府の要求は、市場や人々の信頼感を損ない、ユーロ解体の不安を高めてもおかしくない。世界的な貿易戦争が起きれば、特に経済規模が欧州最大のドイツが痛手を受けるだろう。

QEが終わろうとしているといっても、正常な金融政策が出てくるにはまだ相当な時間がかかる。

●背景となるニュース

*ECBは14日、債券買い入れ規模を10月から毎月150億ユーロに縮小し、年末までに買い入れを打ち切ることを「想定している」と述べた。そうした道筋をたどるのは「データで理事会の中期インフレ見通しが確認されることが条件になる」という。

*年末の買い入れ終了後も「長期間」にわたり、また「良好な流動性と十分に金融緩和的な環境を維持するために必要な限り」、保有債券の償還資金再投資は続ける方針。

*政策金利は「物価上昇率が現在予想されている持続的な調整経路に沿って確実に推移するのに必要な限り」、少なくとも2019年夏まで現状の水準を維持する。

*主要政策金利のリファイナンス金利と、中銀預金金利の現在の水準はそれぞれゼロとマイナス0.4%。

*ECBの声明発表後にドイツ2年債利回りは低下し、ユーロ/ドルは下落した。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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