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コラム

コラム:ECB、新しい米金融政策方針から学ぶべき教訓は

[ロンドン 12日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は、他の中銀が陥った過ちから学ぶことができる。ECBは、物価目標をどういった形にするべきか、あるいはどの物価指標を政策判断に用いるかなどを含め、金融政策戦略を見直している途中だ。そこで同様の作業を先に行って新たな方針を表明した米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が、避けるべき落とし穴について有益な教訓を提示してくれている。

 欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は、他の中銀が陥った過ちから学ぶことができる。ECBは、物価目標をどういった形にするべきか、あるいはどの物価指標を政策判断に用いるかなどを含め、金融政策戦略を見直している途中だ。2月、仏ストラスブールで撮影(2020年 ロイター/Vincent Kessler)

パウエル氏は8月、FRBは物価上昇率が平均して確実に2%になることを目指すとともに、完全雇用をより積極的に追求していくと宣言した。つまり、前年比の物価上昇率が2%を下回る局面があった場合、埋め合わせのためにある程度の期間、2%を超える事態が容認される。これは従来の単純に2%を目標とする政策運営の枠組みに比べ、金融緩和の度合いを高める格好になる。

ユーロ圏の物価上昇率も、長年にわたってECBが目標とする2%弱を大きく割り込んでいる。ただECBには、FRBと異なるやり方があるかもしれない。ECBが11-12日に開いた年次フォーラムでは、例えば物価上昇率の目標を3%としてはどうかという代替案が出された。

これまでECBが達成できなかった以上の物価上昇率を目指すというのは、奇異に思われるだろう。それでも提案された背景には、景気に中立的とみなされる実質金利、いわゆる自然利子率が高齢化といった構造要因のために徐々に低下している事態がある。自然利子率がもっと高い時代なら、2%の物価目標は適切だったが、中銀がより頻繁にゼロ金利やマイナス金利にするのを免れたいなら、もはや間尺に合わない。

ユーロ圏各国の中銀当局者の一部は物価上昇率の目標が大幅に上がることに嫌悪感を示すだろうし、今なお到達していない目標のハードルを一段と高くすればECBの信認が損なわれるのではないかとの心配も他の中銀当局者から出てくるかもしれない。FRBの平均目標方式ならば、確かにそうした不安をある程度解消してくれる。しかし1つの欠点として、平均して2%とはどれぐらいの期間に基づくかを特定していないことが挙げられる。3年間の平均とか、あるいは8年間の平均といった条件なら、別の政策運営が妥当になるのではないか。

FRBは許容する物価の上振れ幅と上振れ期間をあいまいにすることで、そうした方針の解釈余地を広げられるが、同時に一般の人々や投資家にとっては不透明感が増大する。長期的な予想物価が安定したままだとしても、物価動向を巡る短期的な見通しは変動が激しくなる。物価の上振れにFRBがどう反応するか投資家が確信を持てないなら、資産価格は乱高下しかねない。

ラガルド氏がパウエル氏の教科書を手本にしようと決めたとすれば、少なくとも「明確性」を高めれば、より洗練されたアイデアに昇華させることが可能だ。

●背景となるニュース

*欧州中央銀行(ECB)は11-12日、中央銀行の問題に関する年次フォーラムを開催。今年のテーマは「変化する世界における中銀」だった。

*同ファーラムでは、ECBが進めている金融政策戦略見直しの根幹にかかわるトピック、例えば自然利子率の低さがもたらすさまざまな課題などが取り上げられた。主要中銀トップや学者、金融市場関係者などが顔をそろえ、中銀の物価安定目標や政策手段、市場および市民との対話なども議題となった。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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