June 22, 2019 / 10:52 PM / in 3 months

コラム:ドラギECB総裁、後任に託す「大きな宿題」

[シントラ(ポルトガル) 19日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 欧州中央銀行(ECB)がポルトガルのシントラで開いた年次会議のテーマはユーロ誕生20周年だったが、退任するドラギ総裁の送別会という色彩も濃かった。

 6月19日、欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は未定の後任総裁に、根強い低インフレの押し上げという未完の大仕事を残すことになるが、退任前にできる限りの手を打とうとしている。写真は6日、リトアニアの首都ビルニュスで会見する同総裁(2019年 ロイター/Ints Kalnins)

ドラギ氏は未定の後任総裁に、根強い低インフレの押し上げという未完の大仕事を残すことになるが、退任前にできる限りの手を打とうとしている。

10月末に任期を終えるドラギ氏は18日、インフレ率が加速しなければ再び金融緩和の必要が生じるかもしれないと述べた。ユーロの救世主と冠されるドラギ氏であれば、退任までの数カ月間を過去の栄光に甘んじて過ごすこともできただろう。年次会議に集まった中央銀行関係者やエコノミストらの多くは、ドラギ氏が単一通貨ユーロの始祖らと並んで歴史に名を刻まれると確信しているほどだ。

ドラギ氏の示唆は、ある意味で後任総裁の手足を縛ることになる。一方で、家計や企業、投資家に対し、同氏の退任後もECBは2%弱の物価目標達成に最大限の努力を払い続けるとの明確なメッセージが送られた。

この点は重要だ。次期総裁候補の一人であるドイツ連銀のワイトマン総裁は過去にECBの超金融緩和策を批判し、タカ派の最右翼と目されているからだ。しかし誰がドラギ氏の後任になるにせよ、インフレ率を押し上げるのは難しい仕事になるだろう。

ドラギ氏の総裁就任時に比べ、次期総裁は巨額の資産購入など、より多様な政策手段を受け継ぐことができる。とはいえ、新たな政策手段はまだインフレ率と長期的な予想物価上昇率の上昇に結びついていない。5月のユーロ圏のインフレ率は1.2%に減速し、予想物価上昇率の指標である5年先5年物フォワード・インフレスワップは1.2%を割り込んで過去最低水準に下がった。

ドラギ氏が最善を尽くしたにもかかわらず物価目標の達成に失敗した原因は幾つかある。1つは任期中の8年間、財政政策が金融政策と必ずしも足並みをそろえていなかったことだ。ユーロ圏債務危機の最中、各国政府は景気減速にもかかわらず財政支出を絞った。国債利回りが急騰して借り入れコストが急増し、物価目標よりも投資家の信頼回復を優先せざるを得なかった。

ドラギ総裁は年次会議で、財政政策がどうあれECBは自らの職務を遂行すると述べた。しかし総裁その他の登壇者は、ユーロ圏全般の財政政策がもっと緩和的であれば、物価は上昇圧力がもっと速く高まり、副作用も少なかったとの見方を明確に示した。この点に関しては、経済がショックに見舞われた時の緩衝剤となるよう、ユーロ圏19か国による大規模な共同基金を設立する案が、これまで浮かんでは消えてきた。

しかしドイツやオランダが抵抗しているため、予見可能な将来に十分な規模の基金が設立される可能性はほとんどない。

あからさまに政治圧力をかける米国と異なり、ユーロ圏各国の政府は財政政策の発動を渋るという形でECBに金融緩和を迫りそうだ。過去に利上げを巡って米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長を攻撃したトランプ米大統領は18日、ツイッターでドラギ氏までもやり玉に挙げ、貿易上の不公平な競争力を得るためにユーロを下落させていると批判した。

こうしたコメントはシントラの年次会議で概ね失笑を買い、パウエル氏への同情を喚起した。中央銀行がより大きな責任を負い、非伝統的な金融政策手段を活用すればするほど、こうした政治圧力に弱くなるのではないか、と懸念する者もいた。しかし景気減速がより深刻な事態へと発展した場合、防御の最前線に立つのは依然として中銀であることを、中銀関係者らは承知している。逆説的だが、そのおかげで各国政府はますます厳しい決断を回避しやすくなっている。金融緩和を示唆したドラギ氏の発言は、同氏とその後継者が他者の落ち度の尻拭いを続ける定めであることを物語っている。

●背景となるニュース

・ドラギECB総裁は18日、ECB年次会議で、インフレ率が加速しなければECBは再び金融政策が必要になるとの考えを示した。

・17─19日に開かれたECB年次会議のテーマは「欧州経済通貨同盟の20年間」。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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