January 22, 2019 / 6:26 AM / 6 months ago

コラム:ダボス会議、ポピュリスト政治家にはマイナスか

[ダボス 21日 ロイター BREAKINGVIEWS] - トランプ米大統領、カナダのトルドー首相、マクロン仏大統領、インドのモディ首相、そしてメイ英首相──。これら5人の首脳に共通するものは何か。

それは、スイスのダボスで今週開催される世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)を欠席することだ。昨年は5人全員が同会議に出席し、グローバル化についてそれぞれの見方を表明したり、自国が投資に最適の環境だと訴えたりしていた。

だがその後、ダボスは政治的にマイナスだとみなされてしまったようだ。

日本の安倍晋三首相やドイツのメルケル首相など、長期政権を担う首脳は今回出席するが、欧州連合(EU)離脱を決めた2016年の英国民投票や同年の米大統領選後に政権を握った政治家は特に、国内で難局に直面している人が多い。

不公平にも思えるが、大局の問題解決を図るとの触れ込みで、このアルプスのリゾート地で他国のエリートと交流の場を持つことは、自国の問題を悪化させるだけだ、という懸念がある。

欠席予定の首脳が、突然サプライズ出席する可能性は常にある。とはいえ、有力な指導者の多くが欠席しても、同会議の価値は必ずしも損なわれない。出席する首脳は、トランプ氏やマクロン氏の発言にばかり注目していたかもしれないビジネスエリートや資本家、金融関係者に対して、自国をアピールするより多くの機会を得るだろう。

これは、良いことですらあるかもしれない。

メイン会場の檀上を独占する先進国指導者の不在によって、新しく就任したエチオピアのアビー首相は、人口8100万人の同国の良さをより強く訴えることができるだろう。エチオピアの1人当たり国内総生産(GDP)は、隣国ケニアの半分程度にとどまっている。

インタラクティブ:ダボス会議の「勢力図」を読む

 ダボス会議の主催者によると、合計で世界GDPの約4分の1を占める国々の首脳、そして同8割近くを担う国々の政府代表が出席する。

実業界のリーダーや、非政府や非営利組織(NPO)の代表も、例年通り大挙して押し寄せる。会場で供されるオードブルのカナッペを適当な方角に投げれば、半々の確立で独保険大手アリアンツ(ALVG.DE)のオリバー・ベーテ最高経営責任者(CEO)のような経済界の重鎮か、日本の特定非営利活動法人「ゼロ・ウェイストアカデミー」の坂野晶理事長のようなNPOの代表に当たるだろう。

著名政治家やその取り巻きで占拠されないことで、ダボス会議は、自らの行動指針の一部により忠実になれるかもしれない。クラウス・シュワブ会長が創設した同フォーラムは、「最高のガバナンス水準を維持しつつ、世界的な公共の利益に資する起業家精神を示すことに注力する」ことを、趣旨の1つに掲げている。

昨年出席した首脳の中には、他人に講義する資格があるのか疑わしい人もいた。

昨年会議のフィナーレで自身の「米国第一主義」政策を明確に主張したトランプ大統領だが、自らのメキシコ国境の壁建設予算要求を巡る議会対立で、米政府機関の一部閉鎖に追い込まれ、その期間は史上最長の5週目に入ろうとしている。

ダボス会議の目的が「壁」ではなく「橋」を築くことであることを別にしても、現在の米国が抱えるガバナンス機能不全は、同会議の趣旨にふさわしいものではない。

いずれにしても、連邦航空局の職員2万4000人を含む約80万人の政府職員が給料を受け取れない事態を尻目に、(スイスに向かう)大統領専用機(エアフォース・ワン)に給油する図は、国内で反発を呼んだことだろう。

トランプ大統領は17日、民主党のペロシ下院議長のアフガニスタン訪問を阻止したことに続き、ムニューシン財務長官を含む閣僚代表団の派遣を取りやめた。米財務長官は、数十年にわたり同会議に出席するのが恒例になっていた。

トランプ大統領とトルドー首相は政治面で似た所はないが、似たような「見え方」の問題に直面している。

トルドー首相が昨年のダボス会議で、2015年の当選以来2度目のスピーチを行った際には、67万8000カナダドル(約5700万円)を超える高額な出張費用が国内で批判された。

「ダボスは、超有力者同士が集まる象徴的存在であり、一般人にはこれといった恩恵がない」と、野党の政治家は4月、カナダ紙グローブ・アンド・メールに語っている。こうした批判は、今年後半に選挙を控えたトルドー首相率いる自由党には歓迎すべきものではないだろう。

ダボス会議の他の常連も、似たような状況にある。

メイ首相は、英下院がEU離脱協定案を否決したことを受けて実施された不信任投票をかろうじて乗り切った。モディ首相は今年の選挙で、党勢を回復した野党インド国民会議派と対峙する。そしてマクロン大統領は、10週末連続でパリを揺るがした「黄色いベスト」抗議運動による政情不安を抑えるため、税制や歳出、他の優先事項についての国家的対話を始めたばかりだ。

それでも会議出席者は、2005年に首相に就任したメルケル首相や、2012年から職にある安倍首相など、先進国の「長老」の話を聞く機会がある。

また、新タイプの破壊的指導者のうち、少なくとも1人が出席する。ブラジルのボルソナロ新大統領は22日、演説する予定だ。また、イタリアのコンテ首相も、就任後初めて出席し、非エスタブリッシュメントな政治連合を代表する。

相次ぐ欠席者によって、ダボスから発信されるニュースの本数は減るかもしれない。結果として、マクロン大統領がトランプ氏にグローバリズムについて説教するかどうかや、トランプ氏がダボス参加者の「エリート臭」を酷評するかといった関心事を巡るスリルは、別のものに取って代わられる。相対的な静寂だ。

1月21日、トランプ米大統領、カナダのトルドー首相、マクロン仏大統領、インドのモディ首相、そしてメイ英首相──。これら5人の首脳に共通するものは何か。ダボスで21日、警備にあたるスイスの警察官(2019年 ロイター/Arnd Wiegmann)

これにより、コンゴ民主共和国で性的暴力の被害者救済に取り組み、昨年ノーベル平和賞を受賞したデニ・ムクウェゲ医師の話に耳を傾ける時間が増えるなら、なおさら大歓迎だ。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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