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焦点:消費停滞に高齢者の節約志向、背景に長生きリスク
2017年6月16日 / 04:21 / 5ヶ月前

焦点:消費停滞に高齢者の節約志向、背景に長生きリスク

[東京 16日 ロイター] - 4年連続のベア実施で期待された個人消費の足取りが、予想外に重い。識者の間では、勤労者層とは別の集団の動向に関心が集まっている。

 6月16日、4年連続のベア実施で期待された個人消費の足取りが、予想外に重い。識者の間では、勤労者層とは別の集団の動向に関心が集まっている。写真は東京・巣鴨の高齢者、2014年8月撮影(2017年 ロイター/Issei Kato)

総人口に対する比率が年々高まっている高齢者の存在だ。「長生きリスク」を意識した年金生活者の「節約志向」に加え、高齢者の単身化や貧困化の影響も目立ってきており、日本の消費構造の先行きに不安を投げ掛けている。

<消費押し下げる高齢者の節約>

「お年寄りの原宿」と呼ばれている東京都豊島区巣鴨の「巣鴨地蔵通り商店街」。

とげぬき地蔵・高岩寺へのお参りをすませた82歳の女性は「巣鴨では、お友達とお参りするだけで、買い物はしない。独身で65歳まで働いていたが、現役時代の給与が低かったので年金もわずか。貯蓄はほとんどない」と話す。医療費や日々の生活で、年金などで得た所得は、ほとんど消えてしまうという。

一方、基礎年金と厚生年金、亡くなった夫の遺族年金を合わせ月額15─20万円の年金を受け取っているとみられる80歳の女性は「数カ月に一度、この商店街で550円のお茶を10袋購入して近所に配るのが楽しみ」と話す。高齢者にも「二極化」の波が押し寄せている。 

第一生命経済研究所・首席研究員、熊野英生氏は「高齢化・単身化・無職化という3つの構造問題により、消費が小粒化している」と指摘。日本の家計消費支出の押し上げは、そう簡単ではないと分析する。

2016年度の国内総生産(GDP)における実質家計消費支出は、前年度比プラス0.6%。15年度は同0.3%にとどまっている。

1つの仮説は、勤労者世帯に比べ消費額の低い年金生活者(高齢者)が、消費全体を押し下げている構図だ。

16年の家計調査によると、平均的な単身無職高齢世帯(60歳以上)では、毎月の実収入は社会保障給付が11万1000円と、「その他」で合計12万円。一方、支出は約14万4000円と「その他」が1.2万円。不足分の3万6000円は貯蓄を取り崩している。

同じ単身世帯消費支出でも、35歳以上60歳未満の月額消費支出18万3000円と比べ、控え目の消費となっている。

また、高齢単身無職世帯では、可処分所得が前年比実質5%増えたが、消費は同0.2%増にとどまっている。

<長生きリスクの重圧>

その背景には、どうやら「長生きリスク」も影響していそうだ。男女ともに平均寿命が80歳を超え、消費を抑制しているとみられている。

内閣府の2016年高齢社会白書によると、貯蓄の目的は「病気・介護の備え」が6割を占め、趣味や買い物に使うのは6%に過ぎない。長期化する「老後」への不安感がうかがえる。

その年金生活者(高齢者)の人口割合は、着実に増加している。15年10月時点の65歳以上の割合は26.6%と過去最高。10年後には30%を超えると予想されている。

さらに問題なのは、高齢者の単身化が進行していることだ。厚生労働省・2016年版国民生活基礎調査によると、04年時点で高齢者は3世代世帯で暮らす割合が最も多かったが、15年には単身世帯が26%、3世代世帯12%と比率が逆転している。

その結果、高齢者の世帯数が急増し、16年家計調査のデータを使った第一生命経済研究所によると、全世帯の半数超となる53.6%が60歳以上の高齢世帯となっている。

<忍び寄る単身化と貧困化>

また、高齢世帯の単身化が貧困につながるリスクも見逃せない。今年3月に厚生労働省が発表した生活保護受給世帯数は、前年同月比0.4%増の164万世帯。ここ数年はさほど増えていない。

だが、全体の半数を占める65歳以上の高齢世帯では同3.5%増加し過去最高を更新した。

東京都足立区の「くらしとしごとの相談センター」では、高齢者からの相談割合が前年比7%上昇。無年金者からの相談が目立つほか、高齢の親と中高年の無職の子どもが親の年金で暮らすケース、病気になった単身高齢者が家族からの支援や介護も受けられずに相談に訪れるケースもある。

15年国勢調査は、別の情報も提供している。50歳時の未婚率が男性23%、女性14%と過去最高を記録。

非正規雇用者は、今年1─3月期も雇用者全体の37%を占めている。国税庁の15年給与データによると1年未満の短期労働者の年間平均給料は103万円。長期労働者の355万円の3分の1程度にとどまる。

非正規待遇での所得の低さや年金未加入のケースが、給与水準や加入期間に連動する将来の厚生年金支給額にも大きく影響する。

足立区の橋本忠幸・同相談センター所長は「非正規化、単身化といった社会の変化が、(今は20歳代─50歳代の)将来の高齢者に課題として残る可能性がある」と指摘している。

*カテゴリーを追加しました。

中川泉 編集:田巻一彦

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