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焦点:参院選へ舌戦、「黒田円安」争点化も 政権与党には疑問の声

[東京 15日 ロイター] - 通常国会は15日に会期末を迎え、想定される参院選日程(22日公示、7月10日投開票)をにらみ、各党の舌戦が本格化する。物価高対策に加えて「黒田円安」で争点化を狙う野党・立憲民主党に対し、政権与党からは金融政策の見直しには慎重な声が出ている。急ピッチな円安が9カ月ぶりの国政選挙にどう影響するかも焦点となる。

 通常国会は15日に会期末を迎え、想定される参院選日程(22日公示、7月10日投開票)をにらみ、各党の舌戦が本格化する。写真はイメージ。2017年6月撮影(2022年 ロイター/Thomas White)

<一人負けの窮状、訴え>

「欧米に比べて低い金利の状況が続き、円の一人負けの状態だ」。立民の泉健太代表は10日、国会内で記者団にこう述べた。

今週の米連邦公開市場委員会(FOMC)に先立ち、円は135円台前半と1998年10月以来、約24年ぶりの円安水準となった。物価高に急ピッチな利上げで対処する米国に対し、日本は粘り強く金融政策を続ける見通しで、今後の先安観も強い。

黒田東彦総裁が「家計の値上げ許容度も高まってきている」と発言したことも批判を招いた。共同通信の世論調査では、黒田氏が総裁として「適任だとは思わない」との回答は58.5%と、「適任だと思う」の29.2%を上回った。

黒田総裁は自身の発言を撤回したが、立民の泉代表は「岸田インフレ、黒田円安の危機感をもっと発信したい」としており、物価高につながる円安是正に向け、金融政策の正常化も視野に政策修正を求める構えだ。

物価高対策では、共産党が「岸田政権の対応は無為無策」(志位和夫委員長)と主張。日本維新の会や国民民主党も、賃上げや一律給付が不可欠などとしており、政府の対応は不十分との立場で足並みをそろえる。

<必要なら秋にも追加策>

もっとも政府・与党は4月にまとめた物価高対策で乗りきる構えを崩していない。

岸田文雄首相は8日の政府与党連絡会議で、「(物価高対策で)迅速かつきめ細かく対応するとともに、補正予算で確保した予備費5.5兆円を適切に活用することで、今後の情勢変化にも速やかに対応する」と述べた。

複数の政府関係者によると、今後必要に応じて追加策を準備し、参院選後の秋にも対策指示を出すシナリオを描く。

欧米で物価が8%台の伸びになっているのに対し、日本では前年同月比2%程度の上昇にとどまっており、「的確に対処すれば(国政選挙で)風向きが変わることもない」と、与党関係者の1人は言う。

<持続的な物価高に距離>

「物価が上がっているのは原油と中国のゼロコロナ政策。円安に伴う影響はその4分の1程度にとどまっている」と、首相周辺の1人は首をかしげる。金融政策は為替を念頭に置いたものではなく「野党とは考え方が違う。そもそも岸田インフレではなくプーチン・インフレだ」との声も漏れる。

ロシアによるウクライナ侵略で、米国では、日本の企業物価に相当する生産者物価指数が前年同月比11%程度、消費者物価は8%超と、ともに上昇している。

これに対し、日本では企業物価が9%程度で、消費者物価は2%程度と米国とは4倍以上の開きがある。供給不足に伴うインフレ圧力を企業が被り続ければ「賃上げ原資」も目減りしかねず、賃上げを伴う持続的な物価高には程遠い。

「日本の場合は長く根付いた慢性的なデフレから脱したとは言いきれず、為替だけに注目して金融政策を是正すべきという議論は馴染まない」との声も、政府内にはある。

<98年の参院選は大敗>

21年10月の衆院選では、与党自民党が単独過半数を上回る261議席を獲得し、国会を安定的に運営するための「絶対安定多数」を確保した。

当時の為替レートは1ドル=110円台前半だった。日銀によると、東京外国為替市場における21年中の平均レート(中心相場)は109円89銭。1ドル=135円台前半での推移は、当時から2割強の「減価」となる。

為替水準の比較では、1ドル=130円台から140円台に円安が進んだ1998年7月の参院選以来の国政選挙となる。98年の参院選では自民党が大敗し、橋本龍太郎首相(当時)は退陣した。

政府は、為替の過度な変動そのものは経済に悪影響との認識を共有しており、松野博一官房長官は15日午前の記者会見で、日銀に対し「政府との連携のもと必要な措置を適切に講じること期待する」と述べた。急ピッチな円安がさらに進むようだと一段の対応を迫られる可能性もある。

(山口貴也、杉山健太郎 編集:石田仁志)

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