July 22, 2019 / 1:39 AM / in a month

改憲勢力3分の2割り込む、自公71議席:識者はこうみる

[東京 22日 ロイター] - 第25回参院選は21日投票が行われ、即日開票の結果、与党の自民、公明両党が改選過半数の63議席を上回り、政権基盤を維持した。

 7月22日、第25回参院選は21日投票が行われ、即日開票の結果、与党の自民、公明両党が改選過半数の63議席を上回り、政権基盤を維持した。写真は安倍首相。東京の自由民主党本部で21日撮影(2019年 ロイター/Kim Kyung Hoon)

市場関係者のコメントは以下の通り。

●若年層が政権を消極的に支持

<立教大教授社会学部教授 砂川浩慶氏>

投票率が5割を切り、有権者の2割の支持で安倍一強が支えられている。参院選に関する報道も非常に少なかった。なぜ少なかったのか検証が必要ではないか。消費税や年金に関する関心は高かったが、それによって野党に票が集まったわけでなかった。

学生は年金問題に関する危機感がない。どうせ自分に年金はないだろうと思っているが、国に責任を問うよりも、自分でなんとかしなければいけないとあきらめている。香港のデモのように、若者が世の中を変えるということにリアリティーがない。  

これらの層は安倍政権に対して明確な積極的支持をしているわけでなく、消極的に支持している。今回の参院選は「負けていない選挙」だろう。

憲法改正に対する国民全体の判断は非常にネガティブ。学生なども憲法改正に対する知識が非常に不足しており、野党にも改憲に前向きな意見があることを知らない。改憲に対してもさまざまな意見があるが、安倍首相の改憲は問題がある、との感覚だけが広まっている。

れいわ新選組については、学生や20代、30代の層はネットを通じて知っているが、必ずしも投票行動に結びつかないのではないか。

●改憲勢力3分の2割れ、じっくり議論するきっかけに

<近畿大法科大学院教授 上田健介氏>

改憲勢力が3分の2を割ったことで、憲法改正についてじっくり議論するきっかけになればよい。憲法改正について賛否で2分する世論には違和感がある。公明党は9条の改憲に否定的だ。自民党内にも石破茂元幹事長のように安倍晋三首相とは別の改憲意見もある。一方、立憲民主党は解散権の制約などでは憲法改正に同意する可能性もある。

憲法改正を発議してから国民に説明を求めるのではなく、発議する前に国民と議論する中で改憲のコンセンサスを作るのが望ましい。条文の作成などは専門家・官僚なども踏まえた議論が望ましいのではないか。

●ほぼ現状維持、改憲は次期衆院選に向け議論か

<政策研究大学院大学教授 増山幹高氏>

主に消費税増税が問われた選挙であったため、憲法改正については控えめな争点となっていた。もともとこの選挙によって改憲のモメンタムを高めるというものでもなかった。

立憲民主党や共産党がもっと大きく議席を伸ばしていたら状況は変わったかもしれないが、ほぼ現状維持の結果となったため、安倍晋三首相としては、次の衆院選に向けて改憲議論を続けるだろう。

衆院解散の時期は、東京五輪の後ではないか。二階俊博幹事長が安倍首相4選の可能性に触れているが、安倍首相が4選を望んでいるのかどうかわからない。自民党として安倍首相でない首相を望む状況になるのであれば、菅義偉官房長官にバトンタッチするだろう。

自民2人が争い岸田派重鎮が落選した広島選挙区の戦いを見ると、ポスト安倍として岸田文雄政調会長の可能性は厳しいのではないか。

投票率も高くならず、世論の関心が高まらなかった。メディアもネタがないかられいわ新撰組が善戦していると取り上げた。事前報道では、れいわはもっと伸び、一番割りを食ううのは立憲民主党ではないかと思ったが、結果を見ると立憲は倍増。れいわ支持層が必ずしも投票しなかったのではないか。組合基盤のある立憲が、政策のわかりにくい国民民主党などより強かったということでないか。

●想定内、市場の視線は日米貿易交渉・消費増税に

<三井住友DSアセットマネジメントのシニアストラテジスト、市川雅浩氏>

今回の参院選結果は想定の範囲内だった。与党の自民、公明両党で改選過半数を上回ったものの、改憲勢力として必要な議席数を獲得できないという結果は、事前の世論調査や報道で見えていた。

また、今回の選挙結果により金融・財政政策の枠組みが変わるとも考えられない。今まで通りの基本方針が維持されるだろう。

このため、選挙結果は市場にとってマイナスの要因でもプラスの要因でもない。株高、円安が進むとも考えられない。

今後の株価の材料とされる政治的なイベントとしては、日米の貿易交渉、10月の消費増税の方が注目される。選挙の結果による株価への影響は、きょう1日で消化されると考えていい。

●安倍政権、「負のレガシー」残してはならない

<ニッセイ基礎研究所のチーフエコノミスト、矢嶋 康次氏>

与党にとって今回の参院選は、改選過半数を超えたが改憲勢力3分の2には及ばなかったということで、勝ったとも負けたとも言えない結果となった。

ただ、ポスト安倍の1人と目されている岸田文雄政調会長の派閥候補が相次いで落選するなど、「安倍1強」の構図も強化された。安倍晋三首相は、解散権を持ったまま政権運営を行うことになり、一定の求心力を維持するだろう。

安倍政権が今後すぐに直面する国内外の課題は多い。

国内では、10月に消費増税が予定されているが、足元の国内消費のすう勢は弱い。増税後の景気が心配だ。

海外・外交では、日韓問題や日米通商交渉、さらに有志連合の問題がある。トランプ米政権が中東ホルムズ海峡で船舶の安全を守る「有志連合」の結成を呼び掛けており、自衛隊を派遣するかどうか、緊急性の高い大きな判断となろう。

安倍首相は、今年11月には歴代最長の首相となる。長期政権故に、支持団体が既得権益団体と化し、構造改革が進めにくくなっている。もう一度、原点に返って構造改革や成長戦略を行う必要がある。社会保障改革も残された課題だ。

これらは長期政権だからこそ、取り組むことができる課題でもある。これらの課題に道筋をつけるのは、今の野党やポスト安倍の政権では、難しいだろう。逆に言うと、残してしまえば、大きな「負のレガシー」になりかねない。

●日米通商交渉で米国が先制打も

<FXプライムbyGMOの常務取締役、上田眞理人氏>

参院選はサプライズがないという点で金融市場にとって穏便な結果となったため、為替相場には影響を及ぼしていない。

今後の焦点は、トランプ米大統領が参院選以降に本格化させるとしていた日米通商交渉の行方に移っていくだろう。

日米共に夏休みを控えて、市場も次第に夏休みモードになりつつあるが、対中通商協議が全く進捗せず、国内的に成果をアピールできないトランプ氏は、矛先を日本に向け、夏休み前に一度何らかの楔(くさび)を打ってくる可能性が高いとみている。

米国からの軍備品購入に関しては、日本は既に相当コミットしているので米国がこれ以上の圧力をかけることはないだろう。

しかし、農産品を巡っては、票田である農家の支持を失いたくない自民党政権が簡単に譲歩するとは思えず、難航が予想される。米中通商協議と同様に日米通商交渉も長期戦へともつれ込みそうだ。

注意すべきは、交渉が暗礁に乗り上げた際に、トランプ氏や通商政策や金融政策の当局者から、ドル高をけん制する発言が飛び出すことだ。

トランプ氏は、ユーロや人民元について、金融緩和で自国通貨安誘導しているとの批判を繰り返しており、日本にも同様の批判を浴びせることに躊躇(ちゅうちょ)はないだろう。

為替市場ではまた、イランを巡る欧米諸国の対立の激化が武力行使に結びつくリスクも意識されている。武力行使を伴う地域的紛争が発生すればリスク回避が広がりドルは売られやすくなるだろう。

●補正予算編成でも円金利は上昇しにくい

<大和証券の金融市場調査部のチーフ・ストラテジスト、谷栄一郎氏>

改選過半数を超えたが、改憲勢力には不足する今回の参院選の結果を受けて、安倍晋三首相は、改憲を含む政策実行のためにも経済への目配りを続けるだろう。

今後、市場は経済対策の時期や規模に関心を寄せることになる。「骨太方針2019」での方針通り、今後の経済状況を見ながら、補正予算の編成が行われる可能性がある。

ただ、経済対策が出たとしても、国債需給が悪化する可能性は低い。いわゆる前倒し債がすでに52.46兆円も積み上がっており、この前倒債の消化が優先されることになるためだ。

また前倒債を温存する形で、国債増発がある場合にも、日銀の国債買い入れが増える形で相殺される可能性が高い。最近、日銀からは、政府の経済対策による国債増発に合せる形で、日銀が国債買い入れを増やす可能性を指摘する発言が散見されている。

さらに、10月の消費増税後の内外経済次第では、日銀の追加緩和論が市場のテーマとなろう。つまり、今後も、本格的な円金利の上昇は考えにくい。もし国債増発懸念で、金利が上昇すれば、それは押し目買いのチャンスになりそうだ。

*内容を追加しました。

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