August 15, 2019 / 10:18 AM / 3 months ago

ブログ:「普通」を目指す白人至上主義、支持拡大へ戦略転換

[リトルロック(アーカンソー州) 15日 ロイター] - 2年前、白人ナショナリスト運動が全米に衝撃を与えた。バージニア州シャーロッツビルで行われたネオナチに抗議する集会が流血の惨事となった。極右の男が運転する車が群衆に突っ込み、1人が死亡、多数の負傷者が出た。

 8月13日、米国の白人至上主義運動が、「普通」へのイメージチェンジを図ろうとしている。写真は白人至上主義団体シールドウォール・ネットワークのメンバー。カギ十字を燃やす儀式を行っている。3月9日、アーカンソー州アトキンズで撮影(2019年 ロイター/Jim Urquhart|)

白人至上主義グループの一部指導者は再編を進めた。怒りをあおる代わりに、新たな方針で支持を集めることにした。「普通」に見せる戦略だ。

彼らが掲げたより大きな目標は、白人ナショナリストの多くが「第2段階」と呼ぶものだった。忌み嫌われる極右思想を主流派にも受け入れられるものとし、白人ナショナリストを影響力ある立場にする。言葉遣いをソフトにしたほか、多くのグループは集会を対決色の強いものから社交的な場に転換した。

自称ネオナチグループ「シールドウォール・ネットワーク」のメンバー。ヒトラーの顔を描いた風船を持ちながら、「白人の力」を表現したポーズを決める。4月20日、アーカンソー州アトキンズで撮影(2019年 ロイター/Jim Urquhart)

アラバマ州モンゴメリー出身で、白人至上主義者を自認するオルタナ右翼のブロガー、ブラッド・グリフィン氏は、「戦略は今のところ組織内にフォーカスしている。身内を固めている」と語る。

グリフィン氏は2018年に自身が企画した川遊びイベントを楽しそうに振り返る。集まったのは、地元の白人至上主義集会に参加した友人たち。こうした地味な集まりが目標としているのは、公共の場における抗議行動といった人目を引く取り組み以上に、極右思想を広げていくことだという。

「表に出て『アンティファ』(極左の反ファシスト運動)の連中とやり合い、通りで汚物をぶつけられるのに比べたら、こちらの方が楽しい」と、グリフィン氏は言う。

グリフィン氏がインタビューに応じたのは、テキサス州エルパソで8月3日に銃乱射事件が発生する前だった。この事件は、白人ナショナリスト運動の「正常化」を志向する人々の計算を狂わせた。

当局によると、21歳のパトリック・クルシウス容疑者が銃で22人を殺害、20人以上を負傷させた。その直前にネットで動機を説明し、「ヒスパニックによる米国侵略」を非難する犯行声明を公開していた。

エルパソの事件は、一部の白人至上主義者が自分たちの運動を前進させる助けになっていると賞賛する人物、つまりトランプ米大統領に新たなプレッシャーをかけることにもなった。トランプ大統領は2015年に大統領選出馬を表明して以来、人種差別を扇動するような発言で絶えず批判を浴びている。メキシコ国境からの移民流入を「侵略」と表現することもやり玉に挙げられている。

ネオナチ政党「国家社会主義運動」がアーカンソー州で行った集会。2018年11月10日、州都リトルロックで撮影(2019年 ロイター/Jim Urquhart)

トランプ氏は12日、これまで以上に強い調子で白人至上主義に否定的な表明を行った。エルパソの事件を受け、「我が国は声を一つにして、人種差別主義、憎悪、白人至上主義を非難しなければならない」と述べた。「こうした邪悪なイデオロギーは打ち倒されなければならない」

シャーロッツビルの事件以来、白人至上主義者の中には「低姿勢の」アプローチが必要不可欠という考えが芽生えた。過激主義を追跡調査する非営利の公民権擁護組織サザン・ポバティ・ロー・センターで、極右団体を研究しているハイディ・バイリッチ氏によると、多くのグループが訴えられ、ソーシャルメディアを利用できなくなり、おおっぴらな対立を回避せざるをえなくなったという。

「事件以来、集会はそれほど多く行われていない」と、バイリッチ氏は言う。批判的な報道、訴訟、ソーシャルメディアへのアクセスを失ったことで、「運動の参加者は意気消沈し」、「もっとソフトなアプローチに向かうべきではないか」という感覚が生まれたという。

銃乱射事件が再び起き、トランプ大統領が白人至上主義を否定したことで、「正常化」路線は難しい立場、というよりも存亡の危機に立たされることとなった。彼らの戦略には常に無理があった。

不法滞在の移民を探してアリゾナの砂漠地帯をパトロールする国家社会主義運動のメンバー。2018年6月8日、アリゾナ州マリコパで撮影(2019年 ロイター/Jim Urquhart)

ロイターのカメラマンは、路線変更する白人至上主義グループに密着取材してきた。クー・クラックス・クラン(KKK)が運営する「教会」内の保育園、白人至上主義者向けに食事を配達するジョージア州のレストランバー、数十人のメンバーを抱える自称ネオナチ団体「シールドウォール・ネットワーク」がアーカンソー州で行ったバーベキューパーティー。

社会の主流派になりたいと口にする一方で、こうした団体のメンバーの多くは、暴力的な匂いが運動を活性化するとも発言している。

その一例が、白人ナショナリストの間で一般的な「グレート・リプレースメント」理論だ。白人の出生率が低下する中で、左派のエリートが移民政策を進め、世界的に多数派の白人を「非白人に置き換えることを画策している」という主張だ。エルパソの銃乱射事件と関係しているとみられる犯行声明は、なぜ殺害対象にヒスパニック系を選んだかを説明する中で、この理論に言及していた。

シールドウォールの指導者ビル・ローパー氏。メンバーとともに自宅でパーティーを開いた際の様子。3月9日、アーカンソー州アトキンズ郊外で撮影(2019年 ロイター/Jim Urquhart )

シールドウォールの指導者ビル・ローパー氏は5月、ロイターとのインタビューで、白人人口が優位を取り戻すにはどうすべきかとの質問に対し、出生率の向上を促すことも有効だろうが、「銃弾」の方が話は早いと答えている。

ローパー氏は、自分たちの組織が違法行為を支持することはないものの、ニュージーランドのクライストチャーチで3月に51人を殺害した犯人が掲げた目標を「否定することはできない」と述べている。このときも犯人はリプレースメント理論に言及していた。

エルパソの銃乱射事件後、電話で再びインタビューに答えたローパー氏は「殺人は支持しない」と語った。

だが、「事件の犠牲者は人口構成を置き換えていこうというユダヤのゲームにおける駒でしかない」とも述べ、こうした「文化的な衝突」は、ますます多くの国が人種の「バルカン化(分裂して対立するさま)」に突き進む中での「現代における不都合な真実」だと付け加えた。

国家社会主義運動のメンバーがジャケットに付けている白人ナショナリズムのシンボル。2018年11月、アーカンソー州アトキンズで撮影(2019年 ロイター/Jim Urquhart)

こうした過激な見解を、主流派の言い回しで表現しようとする戦略は目新しいものではない。顕著な例の1つは、KKKの元最高幹部デビッド・デューク氏によるものだ。彼はKKKのシンボルマークだった白装束と先の尖った帽子を捨て、ビジネススーツを着用し、より主流派に近い保守的なテーマを取り上げ、1991年にはルイジアナ州知事選の決選投票にまで進んだ。デューク氏は大差で敗れたが、州内の白人有権者の約半数から支持を集めた。

それでも、「正常化」路線が一般的になっているわけではない。ニューヨークで昨年10月、共和党クラブに抗議する人たちともめた「プラウド・ボーイズ」など一部の極右団体は、依然として対立路線で知られる。

パット・ランゾ氏が経営するレストランバーのメニューには、リンチで殺された黒人2人の遺体をハンモックにして寝転ぶKKKメンバーの絵が描かれている。2月2日、ジョージア州ドレイクタウンで撮影(2019年 ロイター/Jim Urquhart)

パット・ランゾ氏がジョージア州ドレイクタウンで経営するレストランバーは、白人至上主義者たちが「我々の店」と呼んでいる。店は単に言論の自由を奉じているだけだと、ランゾ氏は主張する。「我々はレイシスト(人種差別主義者)ではない」、「我々はすべての人を均等に憎んでいる」と話す。

店内の装飾は、人種差別主義者の匂いが濃い、米国の主流派にはとうてい受け入れられないものばかりだ。メニューには、リンチで殺された黒人2人の遺体をハンモックにして寝転ぶKKKメンバーの絵が描かれている。ランゾ氏は、KKKの伝統行事である十字架を焼くための場所をネオナチやKKKのメンバーに貸している。

白人ナショナリストによるイメージ改善策は、極右イデオロギー信奉者が長年繰り返してきた暴力とは矛盾する。大学の刑法研究者たちが協力して作る米国過激主義犯罪データベースによると、2018年までの10年間で極右思想を動機とする殺人事件は62件、124人が犠牲になった。白人至上主義者による犯罪も含まれているが、反政府を掲げる過激派など、人種に関心のない犯行もある。

「ザ・ナイツ・パーティ」が開設した白人至上主義者の子供のための教育施設。3月10日、アーカンソー州ハリソンで撮影(2019年 ロイター/Jim Urquhart)

かつて「クー・クラックス・クランの騎士(ナイツ)」と呼ばれていた団体「ザ・ナイツ・パーティ」の全米ディレクター、トーマス・ロッブ氏は、白人至上主義の運動には対決や集会を超えた考えが必要だと話す。

エルパソの銃乱射事件が起きる前、インタビューに応じたロッブ氏は、「我々の目標は会員を集めることではなく、影響力を広げることだ」と語った。「我々のウェブサイトを見れば、常に黒人差別の言葉を使うわけではない、ちゃんとした人間がやっているのだと分かるだろう」

目指しているのは、極右の理念が幅広い受け手に心地よく響く「米国企業のように発信する」ことだという。

極右思想に関連した人物の写真を持つシールドウォールのメンバー(左上から時計周りに、オクラホマシティ連邦政府ビル爆破事件犯ティモシー・マクベイ、アドルフ・ヒトラー、アメリカ・ナチ党創設者ジョージ・リンカーン・ロックウェル、チャールストンの教会銃乱射事件犯ディラン・ルーフ、ヒトラーの腹心ルドルフ・ヘス)

左派寄りの政策研究所である「ブレナン・センター・フォー・ジャスティス」のマイク・ジャーマン研究員によると、白人ナショナリストたちは「無難な衣装」をまとったほうが、街頭で暴力を振るうよりも運動を前進させるのに効果的かどうか、ずっと議論してきたという。白人ナショナリズム団体への潜入捜査に携わった連邦捜査局(FBI)元捜査員のジャーマン氏は、「正常化」の動きが活発化しているのは人種対立をあおるトランプ大統領の論調が一因だと話す。

「以前なら、白人ナショナリストたちは強引に主流派に割り込もうとした」と、ジャーマン氏は言う。「彼らは今、招待されている」

根っからの信奉者が主流派として生きようという気持ちになっているかどうかは、まったく分からない。

ヒトラーの誕生日を祝うため、ボートを借りて湖に集まったシールドウォール。写真は新たに加入したメンバー。4月20日、アーカンソー州ラッセルビルで撮影(2019年 ロイター/Jim Urquhart)

4月、アーカンソー州ラッセルビル。湖畔に位置するこの学生街で、シールドウォール・ネットワークのメンバー3人が集まり、寝泊まりできるヨットを借り、ダーダネル湖を1周した。ロイターのカメラマンが1人、同行した。

雰囲気は明るかった。ウィスキーで乾杯し、1人が携帯電話を湖に落とすと大笑いした。別の1人は妊娠している妻について冷やかされた。だが夜遅く、彼らは新会員ニコラス・ホロウェイ氏のために入会の儀式を行い、木で作ったかぎ十字を燃やした。

2カ月後の6月、ボートに乗っていたホロウェイ氏は他のシールドウォールメンバー2人とともに逮捕された。警察の報告書によれば、虚偽のデート広告でおびき寄せた同性愛者の男性を殴打し、頭に銃を突きつけたという。

オルタナ右翼ブロガーのグリフィン氏は、ロイターの取材に応じた他の過激主義者よりも強い言葉でエルパソでの銃乱射事件を非難した。この事件を始め、自称白人ナショナリストによる銃乱射事件を「正気の沙汰ではない悲劇」と評した。

一方でグリフィン氏は、人種の再隔離を支持するとも述べた。これは、当局がエルパソの銃乱射犯と関連づけている犯行声明と共鳴している。

白人ナショナリズムの運動を主流派に認めさせようとする努力が、度重なる暴力に足を引っ張られていると、グリフィン氏は話す。今は「論争から距離を置いたほうがいい」と語る。

(翻訳:エァクレーレン)

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