March 16, 2019 / 8:04 AM / in 8 days

焦点:新興国株式に「不良債権」の暗雲、海外投資家も警戒の声

[ロンドン 11日 ロイター] - 新興国株に対する投資家のセンチメントが、今年に入り改善したことを受けて、株価が急伸している。しかし、多くの銀行で不良債権が増加していることへの懸念が、一部で投資家の熱狂に水を差している。

3月11日、新興国株に対する投資家のセンチメントが、今年に入り改善したことを受けて、株価が急伸している。写真はトルコのリラ紙幣。イスタンブールで2018年8月撮影(2019年 ロイター/Murad Sezer)

インドでは、総与信残高に占める不良債権の割合が、世界的にみて高水準となる10%近くに達している。中国やメキシコ、インドネシア、ロシア、トルコとアルゼンチンでも、今年は不良債権比率が上昇すると、アナリストは予想している。

格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)がトルコとアルゼンチンについて公表した悲観的な見通しは、昨年両国で起きた通貨危機の余波がすでに織り込み済みだとの市場想定を裏切るものだった。

大規模な水準に積み上がった不良債権は、金融セクターや経済成長の妨げになるだけでなく、新興国で台頭する中間所得層に対するエクスポージャーの獲得手段として、長年リテール銀行に対して投資してきた海外投資家にとっても、特別なリスクをはらむ。

世界銀行のデータによると、ブラジル、ロシア、インド、中国と南アフリカの新興5カ国(BRICs)における新興国銀行の貸し出しが、2017年には国内総生産(GDP)の平均128%に達し、2007年の同98%から大きく膨らんだ。

だがこのような動きは、クレジットサイクルの変化に脆弱なため、一部ですでに慎重姿勢に転じたファンドマネージャーもいる。

英ファンド運用会社アッシュモア・グループは、中国、マレーシア、韓国、台湾、トルコ、メキシコ、ロシアの新興7カ国における銀行に対してネガティブな見方をしている。ポジティブなのは、インドネシアとインド、ペルーのみだ、と同社で新興国市場を担当する株式ポートフォリオ・マネージャーのエドワード・エバンス氏は言う。

一部の新興国では中央銀行による金融緩和の兆候もあり、商業銀行の一部は、為替エクスポージャーを縮小し、バランスシート上のリスク削減に向けて動いている。

とはいえ、2019年年頭の全般的な金融情勢は、米国における数回の利上げや世界経済の減速懸念から、1年前に比べてタイトになっている。

どの銀行セクターについて暗い見通しを持っているかという問いに対し、資産運用会社イートンバンスで新興国企業ストラテジストを務めるアクバル・コーザー氏は、中国の経済減速が継続した場合のリスクを挙げた。

また、トルコとアルゼンチンの銀行見通しも「それほど強いものではない」と、同氏は付け加えた。

通貨リラの下落と景気後退入りは、借り手の返済能力を阻害するため、トルコの銀行は足場が不安定になっている。11日公表されたデータによると、2018年末の同国GDPは前年比で3%縮小した。

S&Pは先月のリポートで、トルコの不良債権比率が、これまでの予想の倍近い今年6%程度に拡大するとの見通しを示した。公式データでは、1月時点での同比率は4%となっている。

<対外債務リスク>

トルコや南アフリカ、インドネシアやメキシコでは、海外資金への依存度の高さがリスクになっている、と資産運用会社オッペンハイマーファンズのシニアリサーチアナリスト、タン・グエン氏は言う。

これらの国の対外債務は合計1兆3700億ドル(約152兆円)程度に膨らんでいる。加えて、これらの国を拠点とする企業では財政的圧迫が強まっており、債務返済が困難となって不良債権が膨れ上がる恐れがあると、グエン氏は警告する。

S&Pは今月、メキシコの22金融機関に対してレーティングの見直しを行い、うち数行について見通しを「安定的」から「ネガティブ」に引き下げた。この中には、米金融大手シティグループの現地子会社シティバナメックスや、同国の富豪カルロス・スリム氏が率いるバンコ・インブルサも含まれていた。

S&Pは一方で、貸出姿勢を慎重化すれば、メキシコの銀行は不良債権の急拡大を回避できるだろうと指摘した。

特にトルコについて、より差し迫ったリスクを危惧する投資家もいる。トルコ中銀は先週、政策金利をインフレ率を上回る24.00%に据え置いた。

「金利が高く、通貨が弱いということは、債務不履行に陥る企業や不良債権が増加する確率が高まっていることを意味する」と、TSロンバードで新興市場マクロ戦略のマネジング・ディレクターを務めるジョン・ハリソン氏は言う。

新興国の銀行の中でも優良な貸し手と評価されているトルコ第2の商業銀行ガランティ銀行(GARAN.IS)ですら、昨年の不良債権比率は予想を上回る5.2%だった。

インドでは、銀行が1900億ドル規模に上る不良債権の処理に追われてる。だが、モディ政権に近いとされるシャクティカンタ・ダス氏が昨年12月、インド準備銀行(中央銀行)総裁に就任してから、そうした圧力も弱まっている。

「これが意味するところは、銀行がこの問題を直視せずに済むようにしたことで、短期的な危機の可能性を回避したということだ。だがそれは、長期的な貸し出し成長が犠牲になる」と、ハリソン氏は分析する。

(翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)

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