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焦点:市場に日銀ETF買い増し期待、株価のゆがみ増大も
2016年1月22日 / 00:54 / 2年前

焦点:市場に日銀ETF買い増し期待、株価のゆがみ増大も

[東京 22日 ロイター] - 年初からの株安が止まらない中で、日本株市場が期待する政策は、日銀によるETF(指数連動型上場投資信託)の買い入れ増額だ。限界説が強まる国債買い入れと異なり、日銀の買い入れに応じて新規設定されるETFの増額は難しくない。しかし、中央銀行がリスク資産を大量に買うことによる株価の「ゆがみ」はさらに強まる。市場では期待が膨らむ半面、不安も大きい。

 1月22日、年初からの株安が止まらない中で、日本株市場が期待する政策は、日銀によるETF(指数連動型上場投資信託)の買い入れ増額だ。写真は都内の日銀本店前で昨年10月撮影(2016年 ロイター/Thomas Peter)

<昨年は日本株最大の買い主体に>

海外勢が買えば日本株は上がる、売れば下がる──。そうした市場の「常識」は昨年崩れた。

2015年、海外投資家は現物株と先物合計で3兆2818億円売り越した。2008年以来7年ぶりとなる大幅な規模だ。

しかし、年間で日経平均.N225は9.07%、TOPIX.TOPXは9.93%上昇した。米ダウ.DJIはマイナス2.2%、独DAX(配当なし).GDAXIPはプラス6.8%と、海外の主要株価指数と比べても極めて高いパフォーマンスだ。

現物株のみで見ると、海外投資家が売り越した年に日経平均が上昇したのは1989年以来、26年ぶりとなる。

誰が買ったのか。筆頭は日銀だ。日銀は15年に3兆0694億円のETFを購入。自社株買いが中心の事業法人は現物・先物合計で2兆9467億円の買い越し、(公的)年金の売買を経由する信託銀行は同1兆7977億円の買い越しだった。

ETF購入による直接的な株価押し上げ効果だけでなく、日銀の量的・質的金融緩和策(QQE)による株高効果は極めて大きいとみられている。

ニッセイ基礎研究所・チーフ株式ストラテジスト、井出真吾氏の試算では、14年10月末に決定されたQQE2による日経平均の押し上げ効果は約2500円。「ETF買いに伴う直接的な株価押し上げよりも、日銀が下値を買う安心感という投資家心理への働き掛けが大きい」(井出氏)という。

<連鎖的な株安止める効果に期待も>

年初からの株売りは海外勢が主体だ。東証および大取が公表している投資部門別売買動向(現物・先物合計)によると、16年に入り約2週間で1兆7211億円を売り越した。CTA(商品投資顧問業者)など投機筋の売りに加え、海外年金など長期投資家の現物株売りも出ているとされ、日経平均は1年3カ月ぶりの安値に沈んでいる。

底の見えない株安が進むなか、日銀のETF買い増額に市場の期待は高まる。来週28─29日の日銀金融政策決定会合で、日銀が追加緩和を決定するとの予想は現時点では少数派。それだけに日銀がサプライズで動けば、急速な株高につながる公算は大きい、と一部の参加者は予想する。

ミョウジョウ・アセット・マネジメント代表取締役の菊池真氏は「マネタリーベースの年間増加額を80兆円から100兆円、ETF買い入れ額を3兆円から5兆円に引き上げれば、短期的に日経平均を1000─1500円程度押し上げる」とみる。

株価の急落局面では、たとえバリュエーション的に割安となっても、恐怖感からリスクを取る動きが極端に低下し、さらなる株安を招く可能性が高まる。恐怖感に縛られない「公的資金」の買いが、連鎖的な株安を止めるのには欠かせないという見方も少なくない。

<企業業績拡大なければ、もろい株高に>

だが、株安を止める効果があったとしても、これまで2回のQQEのような継続的な株価押し上げ効果があるかどうかには、株式市場でさえ疑問視する声が多い。

1つは円安効果が見込みにくいためだ。QQEを背景にドル/円JPY=EBSの平均レートは、おおまかに13年100円、14年110円、15年120円と10円ずつ上昇。それにつれて企業業績は円安効果を享受し、過去最高を更新してきた。

今年はどうか。連続的な米利上げ観測が後退する中で、たとえ追加緩和があったとしても、足元の116円台から130円に上昇するのは容易ではない。企業業績に強気なアナリストでも、円安抜きに来期大幅な増益を予想する声はほぼ皆無だ。

日銀のETF買いという需給に直接的な影響を与える政策で株価が上昇したとしても、企業業績の拡大という「裏付け」がなければ、もろくゆがんだ株高となる。

昨年12月に発表されたQQE補完策を受け、市場では「設備・人材投資に積極的な企業を対象とするETFが出そろうとみられる3月以降に新ETFの購入枠を広げる」(外資系証券)との見方が出ている。

しかし、ETF買いの増額は「向こう2─3年だけの相場にとっては良いが、10年ないし、それ以降を見ると歓迎できる政策ではない」と松井証券・シニアマーケットアナリストの窪田朋一郎氏は話す。

中央銀行が株式を購入するという「異次元」の政策。日銀はすでに約7兆円のETFを保有している。債券と違い株式には償還がなく、いずれ売らなければならない。

追加緩和策としてETF買い入れ増額が決定された場合、市場は短期と長期、両方の効果を見極めることになりそうだ。

*見出しを修正しました。

杉山容俊 編集:伊賀大記

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