[ロンドン 29日 ロイター] - 欧州連合(EU)の銀行監督機関である欧州銀行監督機構(EBA)は29日発表した域内銀行セクターのリスクとぜい弱性に関する年次報告で、EU域内の銀行は「収益力を巡る厳しい見通し」を覆すために支店の閉鎖や事業統合、市場からの撤退などコスト削減の取り組みに動く可能性があるとの見方を示した。
EBAがこうした年次報告を公表するのは今回が6回目。金融機関の健全性を測る重要な指標である自己資本比率は6月時点の大手行の平均が14.4%で前年同月とほぼ同じだった。
不良債権比率は平均3%と前年の3.6%から低下したが、自己資本利益率(ROE)は7.2%から7%に悪化し、引き続き平均資本コストを下回った。
報告は、銀行の収益性改善に向けた明確な促進材料はまったく見当たらないと指摘。銀行が自力で資本を生み出し、融資拡大の原資を確保するとともに、配当を支払う上で、低い収益性が制約になっていると分析した。
EBAによると、EU域内の上場銀行のうち株価純資産倍率(PBR)が1倍を超えているのは全体の28%にすぎず、米国の81%を大幅に下回った。
そこで各銀行は、ライバルとの統合や持続的な黒字を計上できない事業からの引き揚げを通じて営業費用を圧縮し、収益力を高める工夫が必要だ、というのがEBAの見解だ。
また、既存の規則の一部は国境を越えた銀行業務や国境を越えた事業統合の障害になっているとして、EUは本当に単一銀行市場創設の約束を果たしつつあるのかと疑問を呈した。